木漏れ日に抱かれたレトロモダンな佇まい

練馬駅の北側に「弁天通り」の名で親しまれる商店街があります。小さな通り沿いには50ほどの店が建ち並んでおり、そのうちの一軒が「かすたねっと」。アーチ状の屋根が印象的な焼き菓子のお店です。

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縦に長い店内にはイートインができるスペースが備わっています。大きな窓一面には緑の眺めが広がり、慌ただしい日常をしばし忘れられるかのよう。

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建物の隣にはテラスがあり、屋外でもコーヒーブレイクが楽しめます。ときおり吹くそよ風が気持ちよく、コーヒーと焼き菓子でくつろぐひとときは格別です。

ご縁があってこの地に創業したという「かすたねっと」ですが、もともとは信用金庫の支店として地元の人たちに利用されていた建物なのだそう。どこにいてもやさしい光を感じられる独創性なデザインは、黒川紀章(1934-2007年)が手がけたもの。日本を代表する建築家であった意匠を心ゆくまで味わえるのも魅力のひとつです。


37年間、変わることなく毎日、丁寧にひたむきに

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「かすたねっと」の店頭にはクッキーがずらりと並んでいます。チョコ、レーズン、ピーナッツの3種類からスタートした焼き菓子は、37年目を迎えた現在は18種類にも及びます。

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「おいしいものを焼くことが私たちの幸せなの。だからひとつひとつを丁寧に手づくりすることを心がけています」
そう話してくれたのは、施設長の矢吹良子さん。「かすたねっと」の創業者でもあり、焼き菓子のレシピづくりを手がける、味の番人です。

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「かすたねっと」の工房を尋ねると、お菓子の甘い香りと大勢の菓子職人たちの温かい笑顔が出迎えてくれました。知的ハンディキャップのある約20名の菓子職人の皆さんは、手を休めることなくおいしさを追求するプロフェッショナル。多くの方が20年以上の長きにわたってお菓子づくりに励み、"おいしい"をかたちにすることに喜びを感じています。

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クッキーは手ごねした生地を手搾りで仕上げていきます。成形の工程も長年の経験による手の感覚を頼りに、「おいしくなぁれ」の気持ちを込めながら丁寧に。
オーブンで焼き上げる時間や取り出すタイミングも、レシピにならって忠実に行われています。時代が移り変わっても、流行に流されることなく味が守られていることで、いつ食べても変わらない「かすたねっと」の味が楽しめるのです。

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「かすたねっと」を初めて訪れるなら食べてみてほしいのがこの3品。創業当時からのロングセラーの「レーズン」、甘酸っぱいいちごジャムをサンドした「かすたねっと」、レモンの形をしたフレッシュな味わいの「レモン」(各350円)です。

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パウンドケーキは、1本丸ごとのタイプと食べやすく切り分けた個包装タイプがあります。人気の「りんごケーキ」(950円)は、さっぱりと煮たりんごがたっぷり詰まった贅沢な一品。桜の塩漬けをちりばめた「さくら」(950円)といった季節限定商品も見逃せません。

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ケーキづくりもやっぱり手作業です。生地を型に流し込んだ後、隙間なくきれいに焼き上がるように表面をなめらかに仕上げていきます。

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焼き上がったケーキは、包丁を用いて底についたプレートを丁寧に取り外していきます。表面だけでなくどこから見てもきれいなのは、こうした手間を惜しむことなく作ることを大切にしているからです。

人気のプリンは、気取らない味わいと食感が魅力

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近隣のスーパーマーケットにも納めているという「プリン」(200円)も人気商品。表面はぷりぷりで中はしっとりの食感、すっきりとした甘さのカラメルとコクのあるプリンの味のハーモニーが楽しい一品です。
プリンの味が濃いのは、原料の良さにあります。ベースとなる卵は埼玉県の卵専門店から仕入れたもの。物価高騰の煽りを受けやすい原料でも、妥協することなく品質の良いものを使うことを信条にしています。

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冷蔵庫から取り出したプリンは、つやつやと輝いていかにもおいしそう。1個ずつしっかりと検品をして蓋を閉めたら完成です。

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ハンディキャップのある人たちが働く場所を作りたい、その想いを実現させたのが「かすたねっと」です。皆さんがお菓子づくりで大切にしているのは「きちんと丁寧に」。そうした心がけが、唯一無二のおいしさへとつながり、訪れる人たちを笑顔にしています。

毎日のおやつに、また大切な人への手土産に。飽きることのないシンプルな味わいを楽しみにお店を訪れてみてください。

※価格はすべて税込。
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