地元・東久留米が誇る幻の小麦を使ったお菓子も
東久留米と言えば清らかな湧水があちこちに湧き出ていることで知られる。市内の「落合川と南沢湧水群」は東京で唯一となる「平成の名水百選」に選ばれたそうで、川の流れに親しむ公園や緑がたくさんある自然豊かな街だ。住宅地の中にところどころ畑が残り、のどかな雰囲気の東久留米に「お菓子工房 ポッシュ」がオープンしたのは、2014年3月のこと。以来、地元のご年配から小さなお子さんまで、みんなに喜ばれるお菓子を作り続けている。
甘い香りが漂う店内に入ると、ショーケースの愛らしいケーキに目を奪われる。 常時15種類ほどのケーキが並ぶというこちら、取材時はバレンタイン前ということもありチョコレート系のお菓子が目立ち、季節柄イチゴを使った赤やピンクのケーキも鮮やかだ。店主の石﨑広行さんに「一番人気はどれですか?」と尋ねると、「柳久保シュー」という答えが返って来た。 "柳久保"という名前が付けられたこのシュークリーム、ほかのお菓子に比べると見た目はちょっと地味だが、実は東久留米の名産品であり幻の小麦とも言われる"柳久保小麦"を使用したお店のイチ押しなのだ。柳久保小麦は、江戸時代から東久留米で生産されていた味と香りが良い品種だが、収穫量が少ないため戦時中の食糧難のころから栽培されなくなっていたそう。地元の生産農家さんが研究所に保管されていた種を譲り受けて復活させ、現在は東久留米の名物としてPRしている。ほかの小麦よりも水分量が多く、製粉するとしっとりとして、ずっしり重いのが特徴だ。石﨑さん曰く、シューの皮がパリッと硬めに焼き上がるという。シューの中にはもっちりとしたクリームがぎっしり詰まっていて、パリパリの皮ともちもちのクリームのコントラストが秀逸だ。
春色のチーズケーキやシフォンケーキで季節を感じる
シュークリーム以外にもおすすめのケーキをお願いしたところ、春らしいピンク色のチーズケーキと、クリームたっぷりのシフォンケーキを紹介してくれた。 「いちごのドゥーブル」(390円)は、ベイクドチーズをベースに、イチゴとマスカルポーネのレアチーズを重ねた二層仕立てのチーズケーキ。ふんわりとした口どけとやさしい甘さが特徴で、5月くらいまでの期間限定の味となっている。 注文を受けてから生クリームを詰めてくれる「シフォンケーキ」(1,000円)も人気。今の時期はチョコレートのシフォンにイチゴをトッピングしているが、時期によってフルーツやベースのシフォン生地も変わるので、季節ごとに別の味を楽しむことができる。中には生クリームだけでなく、自家製のイチゴジャムを忍ばせていて、切り分けた時の驚きも満載。ふんわりとしたシフォンケーキに、とろりとしたクリームとジャムがベストマッチだ。
ご年配からお子さんまでみんなが安心して食べられる味を
店主の石﨑さんは、「成城アルプス」などの名店で修業を重ねた後、6年前にこの地で自らの店をオープンさせた。開店前に3年ほどかけて100以上の物件を訪ね歩いて決めたというこの場所は、昔からの住宅街のため年配のお客さまが多い印象で、シュークリームやショートケーキなど定番の味が好まれる。最近では小さいお子さんを連れたお母さんたちも立ち寄ってくれるようになり、「誰もが安心して食べられる味を」という想いが強くなったそう。例えば、米粉を使った「おこめロール」(1,000円)は、店のお向かいの保育園で「小麦アレルギーの子でも食べられる」と喜ばれたという。
「シュークリームもプリンも、しっかり硬めの昔ながらのタイプが好きなんです」と語る石﨑さん。成城アルプス時代に培った確かな技術で、クラシックなおいしさのケーキを親しみやすい価格で提供している。時には新しいタイプのケーキにチャレンジしたいと思うこともあるそうだが、安全な素材を使って、お年寄りからお子さんまで安心して楽しめるケーキがそろっていることが「お菓子工房 ポッシュ」の魅力。一口食べればクリームやスポンジの美味しさがじんわり広がり、心がほっこりするケーキと焼き菓子たちには、石﨑さんの人柄が表れているようだ。
※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。