駅前通りに面したカフェのような佇まいのラーメン店

花小金井駅北口のロータリーを背にして、植栽や木々が植えられた花小金井駅前通りを歩くこと4分。「たかのちゅめ」はワインレッドのテントやグリーンが配されたカフェのような佇まいですが、入口横のメニューボードはしっかりとラーメン店であることを主張しています。

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店内は手前がテーブル席で、奥の厨房に沿ってL字型のカウンター席。白壁にグリーンが印象的な内装を「イメージしたのは森の中のカフェです」と説明してくれたのは、店主の塩田剛基(たかのり)さん。「ラーメン屋さんっぽい雰囲気にしたくなかったので、店舗デザインの会社と相談しながらこのデザインにしました」。卓上のドライフラワーや水のピッチャーなど、細部まで塩田さんのこだわりが見て取れます。

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具材ひとつまで手を抜かない。味、香り、食感で楽しむ一杯を

塩田さんから「味も方向性も異なる当店らしい2品」と提案されたラーメンを実食します。1品目は看板メニューであり、塩田さんの情熱をふんだんに詰め込んだ「特しょうゆらぁめん」(1,400円)です。

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動物系スープに魚介ダシを組み合わせた褐色のスープに横たわるのは、麺肌のしっとりとした全粒粉入りストレート麺。塩味はさほどなく、旨味のふくよかなスープを醤油の香りが丸く包んでいます。「スープの温度変化によって味の表情が変わる、複雑な旨味を持たせたスープです」。

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チャーシューは全部で4種類。鶏ムネ肉のレアチャーシュー、低温調理した翌日に吊るし焼きした豚肩ロースと鴨肉、そして低温調理後にローストで香ばしさを引き出した豚バラです。素材ごとに調理法も変えるというこだわりの理由を塩田さんにたずねると、「同じ肉が何枚も乗っているより、こっちの方が食べていて飽きないしワクワクするでしょう?」とにっこり。

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2杯目は、彩り鮮やかな「野菜畑のトマトまぜそば」(1,300円)。塩ダレと香味油を絡めた太縮れ麺に自家製のトマトソースを乗せ、季節の野菜が10種類ほど添えられています。コンセプトは"味と食感で楽しめる一杯"。蒸したカボチャ、オリーブオイルで炒めたパプリカとマッシュルーム、さつまいものチップスなど、具材によって調理法もさまざま。塩田さんの並々ならぬ熱量が感じられます。

野菜畑のトマトまぜそばには150円のチーズトッピングがおすすめだそう。パルメザンチーズをおろしながら、「チーズが入ると、めちゃくちゃイタリアンな味になりますよ~」と塩田さん。

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店で使う魚介素材は利尻昆布や宗田節、サバ節、アジ干し、ムール貝など。丹波黒どりのガラと牛骨、豚の背ガラなどを煮込んだ動物系スープに魚介スープを掛け合わせ、旨味の深いスープに仕上げています。「素材の旨味をダイレクトに感じてもらうスープです。醤油ダレはスープの旨味を引き立て、香りを補強してくれる存在ですね」。開業時、いくつも試飲したなかから決めたのは、故郷・福井県の醤油蔵「山元菊丸商店」の無添加醤油。「塩味と香りのバランスが良く、僕のスープとも相性が良かったのでこれに決めました」。

ラーメンで独立を決意し、激戦区東京で感性を磨いた日々

味もさることながらアイデア満載のラーメンを生み出す塩田さんは、都内の有名店で7年ほど腕を磨きました。福井県で生まれ育ち、愛知県内の大学へと進学。しかし大学の空気に馴染めず、わずか1年ちょっとで退学してしまいます。「夢や目的もないままでしたが、昔から料理するのと食べることが好きだったので知り合いの居酒屋さんで働くことにしました」。

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働きだして間もない頃、飲食業の面白みに気付きます。「友人が飲みに来てくれた日は、なんか嬉しくて。そのうちに『将来は自分の店を持って、いろんな人をもてなしたい』と思うようになったんです」。20代半ばを過ぎて独立を本気で考えるようになり、小さい頃から好きで食べていたラーメンでその夢を実現しようと決意しました。

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ラーメンで独立。居酒屋の先輩にそう話すと、返ってきた言葉は「本気で独立したいなら、東京できちんと修業してこい」でした。この一言で塩田さんの熱量はぐんと上がりました。「お休みをもらって2泊3日の東京滞在。目的は3日間で気になるラーメン屋さんを食べ歩いて、弟子入りを直談判です。カバンに履歴書を入れて食べ歩いていました(笑)」。
そうして29歳から33歳まで都内の某有名店でラーメン作りを基礎から学び、洋食店勤務を経て東長崎の「カネキッチンヌードル」へ就職。4年かけてラーメン作りの技術を学び、2022年12月に「たかのちゅめ」をオープンさせました。

おいしい×ワクワクがお客さまの心を掴むと信じて

店舗のコンセプトをカフェにしたのにはワケがあると塩田さんは言います。「ラーメン屋さんっていうと、食事をしたらサッと帰るのが当たり前でしょう? 僕の店はその"ラーメン店の常識"にとらわれないスタイルでいこうと考えています。ピークタイム以外なら、食事の後にゆっくり過ごしたくなる店にしたいんです」。

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「森の中のカフェ」らしさを演出するグリーンはすべてDIYによるもの。「これも居酒屋時代の先輩の教えです。どこか1カ所でも自分の手を加えることで店に愛着が湧き、この空間を大切にしようという気持ちになれるって」。コンセプトを形にした店を開いて1年2カ月。スープの仕込み方や味のバランスを少しずつ進化させながら"おいしいラーメン"を追い求め、徐々にリピーターも増えてきていると言います。

「都内には数えきれないくらいのラーメン店がありますからね、味だけではなくプラスアルファの仕掛けがないとファンは増えないと思っています」。調理法の異なる4種のチャーシューや華やかなトッピングはすべて、塩田さんが考える"ワクワクするラーメン"に欠かせない要素。地域に愛されるラーメン店を目指し、明日も味磨きと次なるアイデア探しを続けると熱く語ってくれました。

※価格はすべて税込
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