都立家政の駅前通りにラーメン通が絶賛する名店あり

都立家政駅の北口から程近くにある「食堂 七彩」は、居酒屋やコンビニなどが立ち並ぶ駅前通りの一角にあり、中地下に店を構える小さなラーメン店。2007年の創業から多くのラーメンファンに支持されている店です。

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奥行きのある店内は、どの席からもキッチンの様子が眺められるL字カウンターのみのコンパクトな造り。突き当りには製麺用ブースが設けられています。

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この店で製麺や調理を担当しているのは、1年ほど前から店長を務める三次馨(みつぎけい)さん。「食堂 七彩」に入るまでさまざまな飲食店で学び、一時は自分の店を経営していたこともありました。ラーメンをいただく前に、三次さんのキャリアを聞いてみましょう。

25歳から飲食業界へ。紆余曲折を経て「七彩」の門を叩く

三次さんは1981年に千葉県富里市で生まれました。高校を卒業後は工場で働き、25歳頃から飲食業界に入りました。

「将来を考えた時に『手に職を付けた方が堅実な人生を歩めるかも』と思うようになって。それで飲食の世界に飛び込みました。都内で働き口を探して、最初にお世話になったのはチェーンのもつ焼き屋さんです」。

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その後、都内で多店舗展開する「麺屋武蔵」グループに転職し、吉祥寺や秋葉原の店舗でラーメン修業を行ったのち、31歳で吉祥寺に「麺亭 一黒」というラーメン店を開業します。「勢いだけで独立開業してしまったので、1年くらいで店を畳みました」と、苦笑いしながら語る三次さん。さらにラーメン道を極めたいと、複数の有名店で10年ほど修業を続けます。

「七彩」に入社した理由について、三次さんは「製麺技術を学ぶため」と教えてくれました。長年ラーメンに携わってきたので麺の知識はありましたが、それまで在籍した店で製麺を学ぶ機会はありませんでした。そこで何度か食べに来たことがあり、且つ麺のおいしさに定評のある「七彩」に入社し、製麺の知識や技術を習得しようと考えました。

「ところがです。私が入った頃は、一時的につくば市にある『松屋製麺所』に製麺を発注していた時期でした」。「松屋製麺所」の店主はかつて「七彩」で修業をしていた人物。自家製麺していた時と同じ小麦粉を使い「七彩」専用麺を製造していました。

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そこから自家製麺復活に向けての三次さんは動き出すわけですが、その前に自慢のラーメンをいただきます。話の続きはまた食後に。

鶏の旨味を凝縮した「喜多方」と、ワイルドな「stamina」を食べ比べ

「七彩」で提供するラーメンは、醤油味や煮干し系、味噌味、タンメン、まぜそばなど実にさまざま。スープ素材はもちろん、調味料やトッピングにいたるまですべてオーナーが厳選した食材を使い、化学調味料や添加物を一切使わないのが特徴です。

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まずは看板メニューの「喜多方らーめん」(1,020円)から。驚くほど透明感のあるスープは鶏のなかでも旨味が強いといわれる種鶏(しゅけい)を使い、毎日朝から仕込んでいます。「種鶏のガラを圧力釜で煮込み、そこにミンチにした肉を投入して旨味をじっかりと抽出します」。醤油ダレには埼玉「弓削多醤油」から仕入れる2種類の醤油をブレンド。芳醇な醤油の香りがスープの輪郭を際立たせ、手もみを加えた自家製麺ともマッチしています。

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2杯目に用意してもらったのは、薄切りの豚バラ肉をスープで煮込み、刻み生姜とニンニク、卵黄を添えた「stamina黒」(1,300円)です。「以前提供していたスタミナラーメンを復活させてほしいという声に応えるために考案しました。一度食べてハマる方、結構いらっしゃいますよ」。

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チャーシューの漬け汁をプラスした醤油ダレを使っていて、生姜やニンニクを混ぜればかなりジャンクな味わいに。途中で卵黄を絡めればマイルドな口当たりも楽しめます。

麺はラーメンの命。もっと高みを目指して研究を続けていく

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製麺を学ぶために入社した矢先に告げられた「今は製麺していない」という驚きの事実。しかし、ここでくじけるような三次さんではありません。「どうにかして製麺を覚えるしかないって腹をくくりましたね。で、オーナーに頼み込んで『松屋製麺所』で教わることにしました」。休日を使ってつくば市にある「松屋製麺所」に出向き、店主の川村さんから製麺のノウハウを一から学んだ三次さん。店に戻ってからは連日のように麺の試作を続けました。

「何度やっても納得いく麺ができなくて......失敗しまくりでしたよ。作ってはアルバイトの子たちに食べさせて客観的な意見をもらって、また翌日も作って」。ひたむきに製麺と向き合い試行錯誤を重ねた結果、約1カ月後に納得のいく麺が完成。店で提供を始めました。

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ラーメンのおいしさの決め手となるのは麺と断言する三次さん。製麺時の気温と湿度に応じて加水率と水温を変え、製麺してから2日間熟成させた時の麺の状態をすべてノートに書き留めています。「『ちょっと神経質すぎない?』ってくらいやっています(笑)。製麺はそれだけ奥が深いってことです。今日より明日、もっとおいしい麺を提供したいですからね」と、明るい表情で語ってくれました。

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