LINEで送る東京の歴史的建造物を見に行こう
1993年に開園した「江戸東京たてもの園」は、都市開発や老朽化による取り壊しなどを理由に現地保存が難しくなった文化的価値のある都内の建築物を移築し、復元・保存・展示を行っています。
敷地面積約７ヘクタールと広大な敷地内には、江戸時代から昭和中期までの30棟の復元建築物が建ちならびます。園内は、茅葺屋根の民家と建築家の自邸が集まる「西ゾーン」、園の入口であるビジターセンターや展示室などがある「センターゾーン」、商家・銭湯・居酒屋など商店建築が建ちならぶ「東ゾーン」の３つのエリアに分かれています。
今回は、各エリアのおすすめ建築を５つご紹介します。
①西ゾーン｜前川國男邸
1942年に品川区上大崎に建てられた、建築家・前川國男の自邸です。古き良き日本家屋の雰囲気を今に伝えています。建築を学ぶ学生がスケッチや実測をしに訪れることも多いそう。
築面積は30平米ほどで決して広くはありませんが、天井が高く、居間を中心に書斎・寝室のみのシンプルな間取りのため、全く窮屈さを感じさせません。戦時中、建築面積や建築資材が限られていましたが、制限の中でも豊かな空間をつくろうとする建築家の気概が感じられる建物です。
②西ゾーン｜デ・ラランデ邸
新宿区信濃町に建てられていた住宅。もともとは平屋建ての洋館でしたが、1910年ごろドイツ人建築家のゲオルグ・デ・ラランデによって３階建てに増築されました。途中で折れ曲がるような形をしたギャンブレル屋根（腰折れ屋根）と、下見板張りの外壁が特徴的です。
西洋式住宅なので、邸内には土足で入ることができます。中にはカフェ「武蔵野茶房」があるので、広い園内を歩いて一息つきたくなったときにおすすめです。
③センターゾーン｜旧自証院霊屋
1652年に徳川家光の側室を供養するために建立された霊屋（たまや）です。霊屋とは、亡くなった方の霊を弔うための建築。この江戸東京たてもの園内で最も歴史のある古い建築物であり、華麗な装飾には漆などが使われているため、保存する際にも特に配慮が必要とのことです。
④東ゾーン｜武居三省堂（文具店）
さまざまなお店が建ちならぶ東ゾーンでは、下町の風情を楽しむことができます。昭和レトロな雰囲気があり、写真映えナンバーワンの人気ゾーンです。
中でも注目したいのが「武居三省堂」。明治初期に創業した文具店で、関東大震災後の復興期に登場した「看板建築」です。看板建築とは、木造の建物の前面を平らにし、そこににタイルや銅板などを貼って火事に備えたもの。
武居三省堂には、ジブリ作品『千と千尋の神隠し』の釜爺がボイラー室で薬草を取り出すシーンのモデルとなった棚があります。
⑤東ゾーン｜子宝湯
東ゾーンのつきあたりに大きくそびえ立つ子宝湯は、東京の銭湯建築を代表する建物。神社仏閣を思わせる大きな屋根と、玄関上の「七福神」の木彫など、豪華な造りが特徴です。こちらも関東大震災後に建てられており、復興の想いを込めてこのような豪華な造りになったといいます。
中に入ると、小物やポスターも当時のまま残っているかのようにリアルに再現されています。これらはすべて調査を経て、実際に当時使われていたものを再現しているそうです。
銭湯の湯船もフォトスポットのひとつ。実際に湯船に浸かっているような写真を撮ることができます。
時間帯や季節によっても楽しみ方がさまざま
緑豊かな園内は、春は桜、夏は新緑、秋から冬にかけて紅葉を楽しめます。訪れるたびに違った風景に出会うことができるでしょう。
「江戸東京たてもの園」では年２回の夜間開園を行っています。夏の夜間開園は夕涼みと題して夏祭りを再現。秋の夜間開園では暗闇の中に建物から明かりが漏れだす景色を見ることができ、当時の暮らしの様子をリアルに感じられます。
また、園内の展示室では特別展を開催中。現在は「江戸東京博物館コレクション-東京の歩んだ道」を2023年2月12日（日）まで開催しています。
「さまざまな工夫が施されている建築は、当時の時代背景や人々の暮らしを伝えてくれます。建築の歴史を知ることは、現代を生きる私たちの暮らしを振り返るいい機会になるのではないでしょうか」と話す学芸員の髙橋さん。建築の歴史に触れることで、さまざまな気づきが得られそうです。
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