ご近所に愛されるケーキ屋さん

通りから数歩ほどアプローチを歩いて木の扉を開ける。テラコッタの床、アンティーク風の木の家具や鏡が置かれたシックな空間。おとなが3人も入ればいっぱいになる広さだが、まるで雑貨屋さんのようなおしゃれなインテリアに囲まれ、しばし日常を忘れてしまう。大きな鏡を置いた木のチェストが焼き菓子の陳列台だ。

e2bad0f1990388a71b80b567df274005.jpg

オーナーの日比野麻里さんが自宅の一角でお店を始めたのは2012年のこと。会社員を辞め、製菓学校で学んだ後、都内のパティスリー2店舗で修業し、友人が営むカフェにお菓子を卸す仕事を7年間経験したという。
「製菓学校に入った当時は、自分の店を持つなんて思いもしませんでしたが、家を建てるときに思いきって1階に工房と売場を作りました」と話す。通りの向こうの水道局の緑を眺めながらケーキを作るのが本当に楽しいのだそう。

094f8b622d10fa2f62c2e8f961ef0c7c.jpg

小さな冷蔵ショーケースには、この季節限定のいちごのレアチーズタルト、定番の栗のモンブランタルト、ニューヨークスタイルのチーズケーキなどが並ぶ。
「家族づれのお客さまが多いので、できるだけ国産の素材を選び、白い砂糖は使わないようにしています。乳製品が食べられない人のために豆腐を使ったガトーショコラなども作っています」と日比野さんは話す。

お店に並ぶのは、約10種類のケーキと焼き菓子8種類だ。クリームチーズにヨーグルトを加えた甘ずっぱいムースを、全粒粉入りタルトとしっとり香ばしいアーモンドクリームの土台に重ねた「レアチーズタルト」は人気の定番商品。いちご、ブルーベリー、オレンジ、マスカットなど、季節ごとに代わるトッピングのフルーツも楽しみだ。シンプルながらもコクたっぷりのニューヨークスタイルのチーズケーキも、定番商品として1年中作っている。

a5a0282a525e8d2512728fbf04e6bb7a.jpg

「いちごのレアチーズタルト」(500円)は3月末ごろまで販売。ヨーグルトの入ったさっぱりしたチーズムースと、香ばしいアーモンドクリーム入りタルトがよく合う。

香ばしく焼き上げられた生地がおいしいタルト&クッキー

1f8e7209f9e849a201956a6c5792a18c.jpg

もうひとつの定番は「栗のモンブランタルト」(450円)。同じく全粒粉タルト生地にアーモンドクリームを入れて焼いた土台に生クリーム、チョコレートのスポンジ、栗のペーストが層になっている。「エキュルイユ」のタルトのおいしさの秘密のひとつは、この全粒粉のタルト生地にありそうだ。よく焼き込んだ生地はサクサクというよりザクザクで、ときどき出会う小麦の粒のガリッとした食感も香ばしい。栗の渋皮煮は上のトッピングだけでなく、生クリームの中にも隠れている。

6bfe735a8730a5759b805c6845242b67.jpg

「かぼちゃとさつまいものタルト」も、ほっくり甘い秋冬の味覚と、ザクザクの全粒粉入りのタルト生地がマッチ。

e1b05f435b8efdd3b32ebde63af079f2.jpg

「とにかく大好き」と日比野さんが話すのが焼き菓子だ。ナッツやドライフルーツの入ったクッキーや、歯ごたえのある食感が特徴のビスコッティ、ほろほろ口の中でほどけるスノーボール。最新作の「フロランタン」(200円)はキャラメリゼしたアーモンドスライスがぎっしりのったクッキーだ。バター風味を感じるクッキーとアーモンドスライスにからまるキャラメルが相性抜群。

32856954b28b89e149d7b410c6f67a63.jpg

ギフトにもぴったりの焼き菓子。パウンドケーキは定番の「プルーンのしっとりバターケーキ」(650円)と、季節商品の2種類。現在は「金柑のパウンドケーキ」(680円)だが、抹茶、バナナ、リンゴとシナモンなど、季節ごとにバリエーションが登場する。

リクエストに応えてくれるデコレーションケーキもおすすめ

お店にうかがった日は日曜日。お店に入ると、ちょうどデコレーションケーキが仕上がったところだった。
「いちごが乗ったショートケーキのご注文がいちばん多いのですが、アリエルやおさるのジョージなど、キャラクターを描いたケーキも作ったこともあります」と日比野さん。お客さまの笑顔のためにリクエストにはできるかぎり対応していると言う。 「誕生日には、あのフルーツのいっぱいのタルトをホールで食べてみたい!」と夢がふくらむ。

6dfa0365b588000efec2662bd716f258.jpeg

いちごとブルーベリーがもりだくさんのデコレーションケーキ。直径15㎝サイズで3200円。ショートケーキ以外にも、タルトやガトーショコラなど、好みのケーキで注文可能。

6e93ca0e6dd90b00c5af2e82df418dcc.jpg

ところで店名の「エキュルイユ」とはどんな意味なのだろう。「私はクルミが大好きなのですが、そのままではありきたりなので、クルミが好きなリスをフランス語にして、店の名前にしました」と日比野さん。

c6ce68e63f42ffb812fe6503c2d01b13.jpg

母親とパティシエールの役割を両立するために、営業日は週に2日間としてきたが、娘にも手がかからなくなってきたので、そろそろ営業日を増やすことも考えているとか。心待ちしにしている常連さんも多いことだろう。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2020年3月8日)になります。