あるべき場所に、あるべき姿で
川越(河越茶)と歴史の関わりが深い、狭山茶を味わえる「1901 TEA SALON」。間口が広く風格のある蔵造りの建物は、レトロモダンな商店街・大正浪漫夢通りの中でも目を引く存在です。
店の名が示す通り、この建物は1901年(明治34年)に建てられ、築120年以上。かつては寝具店を営んでいた店蔵でした。
この建物は川越市の指定文化財にもなっているため、川越市や川越蔵の会など多くの専門家が復原に携わったといいます。現在は当時の面影を色濃く残したまま美しい姿に生まれ変わりました。
川越の街にあるべき建物が本来の姿を取り戻したことで、明治期の店舗空間と地域のお茶文化を通して小江戸川越の非日常が体感できるお店づくりを目指しています。
お茶屋スタイルで日本茶とスイーツのセットを堪能
店内でいただけるのは、日本茶とスイーツのセット。世界的な工業デザイナーの鉄急須で、煎茶、ほうじ茶、和紅茶を基本に週替わりで違うお茶を選ぶことができます。
一番人気のスイーツセットは「川越抹茶ババロアセット」(1200円)。ババロアには埼玉県西部を中心とした旧河越領内の茶園で栽培された抹茶を使用しています。てんさい糖を使用し、甘みは控えめでまろやか。抹茶の味わいがより際立ちます。
他にも、みずみずしく、もっちりとした食感の「わらび餅セット」(1100円)や、四季折々の和菓子が楽しめる「季節の和菓子2点セット」(1400円)などがメニューに並びます。丁寧に煎れた狭山茶の香りや旨み、甘みを堪能しながら、上質なスイーツを楽しむ。まさに川越ならではの贅沢な時間です。
随所に感じる日本建築の美しさ
実は、日本茶カフェとして利用しているのは建物の一部のみ。喫茶スペースの奥には大正8年に増築された母屋があり、2階は地域文化をテーマとした交流の場を計画しています。上を見上げるとしっかりと屋根を支える太い梁が。復原の際に天井を外したところ、この梁が現れたそう。モダンな中にも重厚な空気が漂っていて、見入ってしまいます。
ギャラリーを彩るのは、明治初期から昭和にかけて海外向けに日本茶を輸出した際、茶箱に貼られていたラベル「蘭字(らんじ)」。当時の浮世絵師が描いたものだそうです。レトロでモダンなデザインの中にも日本の趣を感じますね。蘭字は1階フロアにも飾られていました。
また、喫茶スペースに視線を戻すとカウンター脇に階段があるのに気づきます。面白いのは階段の段差を利用した箪笥(たんす)になっている大型の箱階段。現在も有効活用されています。
さらに今回、現在は使用していないという2階にも案内していただきました。広々とした和室があり、今後ワークショップなどができるよう準備をしているそうです。
窓には特徴的な飾り格子が設えられていました。これは復原時に作られたもの。残っていた写真から分析し、幅や長さをミリ単位で計算して再現したそうです。
また、飾り障子には、繊細な意匠に細やかな日本らしさが表現されています。驚くことに、この細工の一部分は令和になって修復されたのだとか。明治の職人と令和の職人が120年の時を超えて作り出した1枚の障子だと考えると、なんだかロマンを感じますね。
小島さんをはじめ、多くの人たちの手できめ細やかに再現された1901年の店蔵には、当時の川越で暮らしていた人々の息づかいが宿っています。そして、そこで味わう地元・川越、狭山のお茶は特別な一杯。今度の週末はぜひ、「1901 TEA SALON」に足を運んでみてくださいね。
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