大正浪漫夢通りの風景に溶け込むレトロな喫茶店

わずか15年と短命だった大正時代は、西洋文化が日本に色濃く根付いた時代でもありました。御影石の石畳を敷き詰めた大正浪漫夢通りは、モダンな建築物が立ち並ぶ、まるで映画のセットに迷い込んだようなスポット。「シマノコーヒー大正館」は、そんな大正浪漫夢通りの風景に溶け込むレトロな喫茶店です。

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ドアにぶら下がったカウベルの音とともに店の中へ。木のテーブルにベロア生地を張ったイスが置かれ、店内はセピア色の空気に包まれたような落ち着いた雰囲気です。平日の午前中ということもありお客さまの数もまばらで、キッチンではマスターの島野晃さんが手を動かしています。

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島野さんは1957年に川越で生まれ、高校を卒業したあと都内の食品卸会社に就職。その後転職したコーヒーショップ・チェーンで焙煎のノウハウなどを学び、1996年に地元川越で店を開きました。

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昔から栄えていたこのエリアは、島野さんが店を開く前年まで「銀座商店街」という青果店や鮮魚店、精肉店などが集まったアーケード街でした。

「銀座商店街は私も小さいころからよく来ていた場所でしたが、後継者不足の問題からシャッター街になっていきました。ちょうど物件を探していた時に大正浪漫夢通りが完成したので、私もここで大正時代をテーマにした喫茶店をやろうと決めたんです」

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40歳を前にして自分の店を持った島野さんは、自家焙煎コーヒーやトースト、ホットサンドといった定番の喫茶メニューを提供。普段使いにちょうどいい喫茶店として、次第に地元の人たちが足を運んでくれるようになったそう。そして開店から10数年が経ったころ、川越が観光地として注目されるようになり、島野さんの店にも変化がありました。

レトロでかわいいスイーツメニューがずらり

「時の鐘や蔵造りの街並みが話題になってテレビや雑誌に取り上げられるようになり、川越が一気に観光地化していきました。すると、うちにも若いお客さまが来るようになりましてね」と島野さん。特に増えていた若い女性客の心をつかもうと、スタッフのアイデアを積極的に取り入れながら新たなスイーツメニューの開発に取り掛かりました。

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そうして2016年に生まれたのが、牛乳と砂糖、卵で作るシンプルな「プリン」(680円)です。山のように盛られた生クリームとフルーツの彩りが「かわいい!」と評判を呼び、今や同店の顔ともいえる存在に。プリンと「クリームソーダ」(700円)を並べてSNSにアップする女性客が多いそう。

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2019年にはカラフルなゼリーをたっぷり入れた「ゼリーポンチ」(700円)も登場。炭酸の泡の中を色とりどりのゼリーが浮かぶ涼しげでキュートなビジュアルは、SNS上でじわじわと注目され始めています。

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「レンタル店で浴衣に着替えて古い街並みを散策して、うちでひと休みするのが川越観光の目的だと言っていただけることもあります。ちょっと古めかしい物が若者世代には響くんでしょうね」と目元を緩める島野さん。週末には着物姿の女性客で行列ができることも多くなりました。

昔ながらのピザトーストはなつかしい味わい

スイーツをひと通りいただいたあと、島野さんおすすめの「ピザトースト」(ドリンク付き1,030円)を作ってもらいました。厚切りのイギリスブレッドにサラミやピーマン、チーズを乗せたノスタルジックな佇まいです。

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「パンはオープン時からずっと都内から仕入れていましてね。ちょっと甘みがあるパンで、常連さんのなかにもファンが多いんですよ」と島野さん。

トマトソースとチーズの酸味のあとにやってくるパンのほのかな甘み。ひと切れ食べ終わるころには、こどものころに母親と一緒に食べた喫茶店の味を思い出し、じんわりあたたかい気持ちになりました。

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趣のある街並みを散策できる小江戸川越。大正モダンの風情漂うエリアにある喫茶店のカラフルスイーツで、ちょっと一休みしてみませんか? きっとあなたも束の間のタイムスリップ気分を味わえるはずです。

※価格はすべて税込
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