有名建築家が手掛けた優美な空間

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目抜き通りの商店街からすぐの位置にある「つるや」は、瀟洒な洋風住宅の佇まいが印象的な喫茶店です。目印は、建物に掲げられた小さな「つるや」の看板。雰囲気のある文字使いに「ここにはなにかありそう」という期待に胸が膨らみます。

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玄関を入り、右手にある小さな階段を降りて店内へ。半地下の空間には隠れ家のような心地良さを覚えます。

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半地下ですが店内には大きな窓からやわらかな光がたっぷりと注がれ、都心にいながらヨーロッパのカフェを訪れたような特別感が漂っています。高い天井の造りに目をやるとゆるやかな曲線が描かれており、階段部分と店内を仕切る壁もまるでアートのよう。

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椅子の造りひとつをとっても、見惚れてしまうほどの優美さ。カウンターの縁取りにも丸みがあって、どこを見ても建築家の意匠が感じられます。
「曲線が好きな人でしたからね、大叔父は」と話すのは、「つるや」の渡部みゆきさん。初代のお祖母さま、二代目のお母さまの意思を引き継ぐ、三代目マスターです。

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昭和44年(1969年)に開業した「つるや」は、みゆきさんの大叔父にあたる建築家の池原義郎さんが設計を手がけました。池原さんは、西武ライオンズ球場や西武園ゆうえんち、所沢聖地霊園など数々の代表作を残した名士。窓の外には箱庭を思わせるような中庭があり、店名にちなんだ2羽の鶴のオブジェには遊び心が垣間見えます。

初代から受け継がれる、旨みの濃いデミグラスソース

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「つるや」の魅力は佇まいの美しさだけでなく、料理のおいしさにもあります。食事メニューの中でも特に人気があるのは、デミグラスソースのハンバーグだそう。オムライスにも同じくデミグラスソースがたっぷりとかかっています。

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厨房を覗かせてもらうと、みゆきさんのお母さまが休むことなくフライパンを振り、ソースを丁寧に温めています。二代目マスターでもあったお母さまは、銀座の飲食店に従事していたこともあって、料理の腕前はプロ。時折聞こえてくる卵を溶く音が小気味良く、食欲をそそります。

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こちらが「つるや」名物の手作りハンバーグ(1,250円)です。肉屋で上質な肉を仕入れて手ごねするハンバーグは、肉の分量や配合にいたるまで、開業以来変わることなく受け継がれています。
ソースをからめて味わうと、肉の旨みと濃厚なソースのハーモニーが口の中で踊ります。この味わいが忘れられず、足しげく通うお客さまが多いというのもうなずけます。

オムライスの中身は風味豊かなカニピラフ!

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もうひとつの人気メニューのオムライス(1,300円)は、惜しみなくかけられたデミグラスソースと卵の色合いがどこか懐かしいひと皿です。

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オムライスの定番といえばケチャップ味のチキンライスですが、「つるや」ではカニピラフを使っています。しかもこのカニピラフ、素となるダシを取るためにカニを二日間じっくりと煮込むというこだわりよう。この作り方はフランス料理に通ずるところがあります。
「フランス料理のシェフをしていた同級生のお父さまがいらして、『つるや』を開業するときにカニピラフの作り方とレシピを教えてくれたのが始まりなんですよ」とみゆきさんは当時を懐かしみながら、ゆっくりと誕生秘話を教えてくれました。

丁寧に淹れてくれるブレンドコーヒーと余韻を楽しむ

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食事メニューにはコーヒーまたは紅茶が付いてきます。開店前からお客さまが並ぶこともあり、オープン中は目まぐるしい忙しさですが、コーヒーを淹れるときはどんなときでも慌てず、丁寧に淹れるよう心掛けているのだそう。

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カウンター越しに見える棚には、かわいいカップ&ソーサーが並んでいます。お客さまに少しでも贅沢なひとときを楽しんでほしいという「つるや」流のさりげないおもてなしです。

「喫茶店は、ほっとしたいなと感じたときに行きたくなる場所だと思うんです。そんな気持ちに応えられるように、これからもこの場所で変わることなくあり続けたいですね」とみゆきさんは笑顔でそう話します。
慌ただしい日常をちょっと休みたくなったときは「つるや」の扉を開いて、自分時間とおいしい食事で心豊かなひとときを過ごしてみてください。

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