住宅街でひっそりと創業。思わず戸惑う喫茶店のような店

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「ラーメン屋さん?」。店の前に到着してまずほとんどの人がそう思うでしょう。赤レンガをあしらった香ばしい色味の店構えも、テーブル6席とカウンター5席が置かれた店内も、どこから見てもレトロ喫茶店の雰囲気です。店主の栗田佳宜さんと妻の朋美さんが出迎えてくれました。

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栗田さんが店を開いたのは2022年6月。空き物件を探している時に「一瞬で気に入っちゃって」即契約したというこの店舗、以前はやはり喫茶店だったそう。「駅から遠くてちょっと奥まった場所ですから、集客力という意味ではハードルが高いです。こういうところでも皆さんが足を運んでくれるような店になるんだと、そう思って借りました」。

味のギミックをふんだんに盛り込んだラーメンと日替わりカレー

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レギュラーメニューは「醤油ラーメン」「塩ラーメン」(各900円)にまぜそばなど。毎日朝から仕込むというスパイスカレーも人気商品です。今回は看板メニューの「醤油ラーメン」と「気まぐれカレー」(850円)をオーダー。

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5分ほどで運ばれてきた醤油ラーメンは、魚介の香りをまとった褐色のスープにすらりと細麺が横たわる端正な佇まい。麺をすすると、香り豊かな醤油スープが舌の上に広がっていきます。チャーシューは程よく味の乗った鶏胸肉と豚肩ロース。青ネギの下には焼きネギも隠れています。「醤油を立たせたスープに甘い焼きネギが合うんですよ」と栗田さん。焼き目のビターな印象が、ちょっと大人な味わいを演出しています。

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「気まぐれカレー」は、その日の朝に仕込む栗田さんこだわりの日替わりカレーです。この日はチキンキーマ。スパイスの複雑な香りが見事に調和した味わいに、思わず心が躍ります。「一緒に食べるとお互いの味を引き立て合うような、ラーメンとカレーの親和性をテーマに作っています。『ミニカレー』(350円)を注文されるお客様も結構いらっしゃいますよ」。脇には朋美さんお手製の副菜が添えられています。カレーの合間にトマトピクルスを口にするとスパイスの刺激をさっと包み込み、フルーティな味わいに変化します。

レギュラーメニューのほか、限定ラーメンとカレーで面白味を表現

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足立区出身の栗田さんは物販業界から20代後半で飲食業界へ転身。定食や弁当、ハンバーガーなど多ジャンルを経験したあと独立し、ハンバーガー店を経営しました。「僕はグルメでもラーメンオタクでもないですよ」と言う栗田さんがこの業界に入った理由は、40歳を過ぎてたまたま行ったラーメンイベント。どの店舗にも長蛇の列ができている様子を目の当たりにし、「ラーメンってこんなに人を引き付ける力を持っているのか」と感心したのがきっかけです。
興味を持ったらとことんのめり込む性格という栗田さんは、42歳で豊島区にある担担麺の名店「創作麺工房 鳴龍」に弟子入りし、ラーメンづくりを基礎から学びます。

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栗田さんが「うちの隠れた人気メニュー」と教えてくれた「パクチーゴマラーメン」(950円)は、自家製芝麻醤(ゴマペースト)を配合した一杯。クリーミーな口当たりのスープが麺と絡んで、すする度にパクチーの爽やかな香りが鼻を抜けます。

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カレーをメニューに加えたのは「作るのが面白いからですよ」。数年前にスパイスに興味を持ち、その流れでカレーづくりを本格的に開始。店でカレーを提供すると決めた際、自身が若い頃に通っていた神保町の某店へのリスペクトの気持ちを込め、ミニコーヒーを添えるスタイルにしました。
「うちの味は、カレー好き店主が作る割とおいしいカレー。『毎日アドリブで味を決めていくカレーって面白いじゃん』と言ってもらえたら本望です」。そんな栗田さんのカレーは創業から1年弱でファンを増やし続け、カレーだけを食べに来る常連客もいるそう。

スープづくりは工夫。その先で見つかる「おいしい」を求めて

ラーメンスープのベースは丸鶏。そこに各種野菜の香りと旨味、煮干しやカツオ節、シイタケなどを時間差で加えて完成させます。「高級食材でスープを取ったらおいしいに決まっていますけど、僕は手に入りやすい普通の食材でどこまでおいしくできるかにこだわっています」。コストをかけるのではなく、知恵と工夫を凝らして味を高めていくのが「Omiruk」のモットー。創業してからスープ素材を何度も改良してきました。

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「太刀魚を入れるようになってから味のバランスがだいぶ良くなりましたね。僕の目指していた味に大きく近づいたような」。日々、味を進化させ続けるのには理由があります。「良いアイデアが浮かんだら、とりえずやってみる。工夫をしていった先に"おいしい"を発見するのって楽しいじゃないですか」。そうした持ち前の情熱に加え、「鳴龍」で培った経験と技術。それが「Omiruk」の味の支えとなっています。

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最後に、ずっと気になっていた店名について聞きました。「若い頃に漠然と『クリモ』って名前の店をやりたいと思ってたんです。で、店を開く時に屋号をいろいろ考えたけど『クリモ』が頭から離れなくて(笑)。逆さまにして『Omiruk』。意味不明な言葉だから初見だと引っかかるでしょ? それでいいんです」とニヤリ。実直な味と時折見せるユーモアで、これからも多くの人の心を掴んでいくことでしょう。

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