父がつくるうどんを食べて育ってきた

大通りから入ってすぐの一軒家。その1階で店を構える。近くには店主・齋藤吉之さんの自宅となる母屋があり、駐車場も含めて、ここは先祖代々の土地なのだそうだ。齋藤さんは41歳の時、前職だったサラリーマンをきっぱりと辞め、この場所でうどん屋を始めることにした。

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「親父がね、うどんが好きだったんですよ。父が自分でうどんを打って、しょっちゅう自宅で食べていました。父の背中におぶられながら、うどんを踏んでいたのをよく覚えています。その当時は薪のかまどで茹でていましたね」。

味の決め手となる「かえし」は、独学で試行錯誤しながら自分の味をつくった。
「どこかに修業に行ってしまうと、そこの味になってしまいますから。うどん屋を始めるまでの一年間あちこち食べ歩いて、最終的に自分の好きな味にたどり着きましたね」。

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みんながおいしく食べられるうどんに

武蔵野うどんといえば、昔は地粉を使っていたため、小麦ふすま(表皮)を含んだ黒っぽいうどんで、どうしても固くなってしまいがちだった。けれど、齋藤さんは食べやすく、おいしいうどんを目指した。

「固いのがいいっていう人もいるんでしょうけど、うちは武蔵野うどんの特色をだそうとは思っていなくて。お客さまには若い人もいますけど、年配の方も大勢いらっしゃるのでみなさんがおいしく食べられる固さに仕上げています」。

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とはいえ、讃岐うどんのように真っ白い粉を使うと、のどごしはよくなっても麦の風味がなくなってしまう。そのため、北海道産小麦を使いながら、ふたつのうどんの良さをいいとこ取りし、手打ちで毎日つくっている。

「機械でやってもいいんでしょうけど、おもしろくないじゃないですか。練るのは力仕事で疲れますけど、毎日踏んで踏んでのして打って、昔のように手づくりでやっています」。

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味を守っていくためにできること

武蔵野うどんには珍しく「釜揚げうどん」(天ぷら3品付き920円)があるが、やはり一番人気のメニューは「肉汁うどん」(750円)だそうだ。「田舎糧うどん」(650円)には、隣に住む農家さんが育てた小松菜やほうれん草などの季節ものの野菜を添え、つゆには油揚げを入れる。「きのこつけ汁うどん」(750円)も人気で、きのこの旨みがつゆにコクを出す。

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どれもボリューム満点ながら価格はリーズナブル。そこに齋藤さんの努力がある。「味は落とせないから、やり方を変えたりしながら、カットできるところはカットして。原価が上がってはいるけれど、値段は据え置きでやっています」。

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店内にはFC東京の選手のサインがずらり。サポーターが練習見学の際に寄ったり、選手たちも毎週のように食べに来てくれるのだという。

小平では、冠婚葬祭はもちろん、年越しそばではなく年越しうどんを食べるのだという。それほど身近な食べものとして小平ではうどんが根づいている。齋藤さんにとって思い出の味であり、まさにソウルフード。だからこそ、うどんをつくるのはとても自然なことだった。これからも変わることなく、思い出の味を守っていってほしい。

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