店頭で手軽に買えるうどん玉と天ぷらが好評
店先には天ぷらが並ぶショーケースと、うどん玉を入れた冷蔵ケースが置かれ、商店街を行きかう奥さま方や地元のお年寄りが立ち寄っては、1玉また1玉と購入していく。
こちらのお店は、都内では珍しい、生うどんや茹でうどんを玉売りしてくれるうどん屋さんなのだ。
「栄屋うどん店」は、創業から60年以上を数える製麺店。現在は、奥さまと息子さんのおふたりで、機械打ちの細うどんやそば、手打ちの田舎風うどんを打ち、店頭販売している。「生うどん」は100g・120円、手打ちの「田舎うどん」も100g・120円とお手軽な価格。茹で上げたうどんもあり、隣に並んだ天ぷらも一緒に購入すれば、それだけで簡単にランチや夕飯にもなるとあって人気が高い。
素朴なうどんに素朴な汁で......懐かしいおふくろの味
店頭のショーケースの奥に扉があり、中へ入るとイートインスペースとなる。こちらのお店、うどんを玉売りしているだけではなく、店内で茹で立てをいただくこともできるのだ。店内はテーブルふたつで8席ほどだが、お昼時ともなるとご近所の常連さん、お年寄りなどでにぎわう。休日には若い家族連れも多くなるそう。
メニューには「かけうどん」や「釜揚げうどん」、武蔵野うどんらしい「肉汁うどん」などが並び、冬は「味噌煮込みうどん」、夏は「夏野菜のおろしうどん」といった季節ごとの限定メニューも用意している。この季節は、キャベツの甘みを感じる「春キャベツ入り肉汁うどん(560円)」が人気だ。
こちらで食べられる田舎うどんは、小麦の香りが強い平打ちの中太麺。茹でる前の生うどんを見ても分かるが、粉の色を反映して褐色なのが特徴だ。奥さまがこちらへ嫁いできたばかりのころは、この褐色のうどんにとても驚いたとか。そして、素朴で力強い味わいのうどんに合わせるのは、「ごく普通の家庭の味ですよ」と奥さまが謙遜する、これまた素朴な味わいのつけ汁。季節の素材を工夫して作り上げる、言わばおふくろの味だ。 小麦の香り高いうどんを噛みしめた後は、残ったつけ汁にうどん湯を入れて味わえば、心までほんわかと温まる。
60年前の創業時のうどんの味を3代目が引き継ぐ
「栄屋うどん店」は、息子さんのお祖父さんにあたる初代が、故郷である所沢で食べていたうどんの味を再現して売り出したのが始まりなのだそう。お祖父さんの地元では、冠婚葬祭などでよくうどんが振舞われ、そのうどんを試行錯誤して再現したのが、この店自慢の褐色の田舎うどんだ。その製法を先代のご主人が引き継ぎ、10年ほど前からは奥さまがつけ汁や出汁を工夫して、店内で茹で立てを提供するように。現在は3代目の息子さんがさらに引き継いで、創業から60年に渡って守り続けている。
以前は店頭販売のほかに学校などへもうどんを納入していたが、現在はおふたりだけで切り盛りしているため、1日に仕込める数が限られている。時の流れと共に、粉を仕入れる業者が変わったり、うどんを打つ環境も変化していくが、できる限り初代が作り上げた素朴な味わいのうどんを提供し続けていきたいそう。
ひばりヶ丘駅北口商店街へ来たら、昔ながらの武蔵野のうどんをいつでも気軽に食べさせてくれるこんなお店があることを、ぜひ覚えておきたい。
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