練馬区の学校給食を支えてきた老舗ベーカリー

大正5年に巣鴨で「萩原パン」として誕生した「マザーグース」。当時まだハイカラだったパンを初代は大八車で売り歩いたそうだ。江古田に移転してお店をオープンしたのは昭和20年ごろのこと。店舗は京都駅ビルの設計で知られる原広司氏が手がけ、新しい店名「マザーグース」はアートディレクターの北川フラム氏のアイディアだった。まもなく日本は高度成長期を迎え児童の数も倍増。一時期は練馬区内の小中学校30校以上の給食のために、1日4万食のパンを製造することもあった。現在も練馬区の保育園のパンを製造している。
「こどものころに食べた懐かしい味がする」 「ここのパンで育った」 そう言ってくれるお客さまも多いと語るのは、お祖父様、お父様からお店を受け継いだ3代目、萩原瞳さんだ。

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お店の奥にある工房には、先代がドイツで買い付け、アフリカの希望岬を超えて船便で運んだWINKLERのオーブンが鎮座している。 「当時はまだ日本になかったフランスパン用のスチームオーブンです。と、萩原さん。スチームオーブンの隣の窯も50年以上活躍中だが、この道30年以上のパン職人たちが伝統の味を守り続けている。

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レシピは約80~100種!ロングセラーも新しい味も

「マザーグース」はとにかくパンの種類が多いことが特徴だ。レシピは約80~100種あり、その中から60種類以上のパンが毎日棚に並んでいる。デニッシュブレッド(一斤720円、ハーフ360円)、抹茶あずき(一斤600円、ハーフ300円)など、食パンだけでも10種類も!希望する枚数にスライスしてもらえるのもうれしい。たとえば、少し厚めのサンドイッチにしたいので市販のような12枚切りではなく10枚切りに......というオーダーにも快く応じてもらえる。 「お客さまが自由にパンを味わっていただくのが一番です。もちろん、おすすめの食べ方などもお伝えすることもあります」(萩原さん) 食パンの他にも庶民的な菓子パンや惣菜パンもあれば、おしゃれなハード系のパンもあり、店内は宝箱のようなにぎやかさだ。

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ロングセラーのコッペパンは、こしあん、バター、チョコレート、いちごジャム、マーマーレードジャム、ピーナッツ、カスタードクリームから2種類を選んで、自分好みのコッペパンサンドをオーダーする「つけコッペパン」で楽しむこともできる(250円)。一方、ボリューム満点の惣菜系コッペパン、ポテト、ツナ、卵、サラダ(270円)、カツ、メンチ(250円)も大好評だ。「マザーグース」のコッペパンは、まさに「昭和」の味わい。「牛乳と一緒に食べたくなるコッペパン」といった感じだ。今どきのコッペパンのようにただふんわりしているだけではなく、しっかりと食べごたえもある生地で、お腹も満足できそうだ。

広いイートインスペースでパンバイキング

パン売り場のドアの向こうには広々としたイートインスペースがあり、営業時間内はパンバイキング(600円)を実施している。コーヒー・紅茶・煎茶も飲み放題だ。大皿に菓子パン、惣菜パン、食パンなどが並べられていて、好きなだけいただくことができる。この日選んだのはピザ、クロワッサン、ラスク。オーブントースターを自由に使えるようになっていたので、ピザを温めてできたての味を満喫できた。ラスクはさまざまなパンで作られていて「どれにしよう?」と、迷ってしまう。ドリンクはコーヒーに続いて紅茶をおかわり。このお値段でここまで楽しめるのは、かなりコストパフォーマンスが良いのではないだろうか。十分な席数があり、ゆっくりできるのもうれしい。デザートには夏季限定のかき氷(200円)をオーダーした。眼の前で氷を削ってくれるので気分も高まる。

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このイートインスペースには「フェアリーテイルズ」という名前があり、イベントスペースとして1日10,000円で借りられる。これまでプロの演奏家によるクラシックコンサート、津軽三味線のリサイタル、落語、お芝居、近所の小学校で制作したアート作品の展示などに活用されてきた。10~50席を配置することができるので、セミナーなどに利用されることもある。グランドピアノが置かれていて8:00~21:00まで1時間2,200円でお部屋代込みでレンタルできるので、発表会前のリハーサル、個人練習などに使われている。じつはこのピアノ、萩原さんがこどものころに使っていたもの。小さなころから音楽に親しんできた萩原さんなので「フェアリーテイルズ」の音響にもこだわっている。
萩原さんは「フェアリーテイルズ」で最近ニュースでも話題のこども食堂を開き、スープとパンの簡単な食事をふるまったこともある。いつも地域とともに歩んできた「マザーグース」ならではのボランティア活動と言えるだろう。
「武蔵野音大、日大芸術学部、武蔵大学という三大学がある江古田で、これからも芸術とパン文化を深めていきたいです」。
と、萩原さんは語る。芸術を愛する空間で、真心のある懐かしい味に会いたくなったら、ぜひ足を運んでみたい。

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