初見では謎だらけ。ジャマイカ感あふれる店

「ラハメン ヤマン」があるのは練馬東税務署の向かい。道沿いに大きなジャマイカ国旗が掲げられていたら、それが営業中のサインです。ラハメンって何? なんでジャマイカ? ......いろんな「?」を抱きながら店内へ入ります。

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大きな厨房を囲むL字カウンターに9席。そこだけ見ればいたって普通のラーメン店ですが、壁にはボブ・マーリーをはじめとしたレゲエ関係のポスターやフライヤーが貼られ、スピーカーから流れる音楽もレゲエ。一瞬にして視覚と聴覚がジャマイカの空気に支配されます。

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卓上のメニュー表もちょっと独特な書き方です。最初に「らはめん」「つけめん」と続き、「つまんだり、のせてみたり」はトッピング類、「コメのたぐい」はごはんもの。やはり「ラハメン」はラーメンの意味だったのねと脳内でひとつぶやきするも、この情報過多な店内にいると更なる謎がどんどん湧いてきます。

和ダシ香るノスタルジックな一杯。細部まで丁寧さが見えてくる

数あるメニューの中から選んだのは「らはめん」(803円)と「塩つけ」(913円)。加えて、ネーミングが気になった「にんにくごはん」(220円)もオーダーしました。

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カウンター越しに店主さんから受け取った「らはめん」は、メンマや青菜、海苔などが乗ったノスタルジックな佇まいです。レンゲでスープをひと口飲むと、動物系のスープからほんのりと和ダシが香ってきます。化学調味料にはない複雑な旨味の層が口中を覆い、カツオ節やシイタケの軽やかな風味が鼻を抜けます。麺とスープの合間に青菜を口にすると、「それは小松菜を品種改良した江戸菜といって、シャキッとした歯切れの良さがクセになるでしょう」と店主さん。

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「塩つけ」は、大葉を浮かべたつけ汁にモチモチの麺という組み合わせ。自家製麺には準強力粉や中力粉、それにタピオカ粉が練り込まれているそうで、箸でつまんだだけで弾力感が分かります。表面はツルツルですすり心地が良く、麺肌を近くで見るとなかなか美人な仕上がりです。

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「にんにくごはん」はタマネギやショウガ、ニンニクを炒めて練ったしっとり系ふりかけご飯です。干しエビが味の深みを演出していて、これはご飯がどんどん進む味付け。「単体だと結構しょっぱいでしょう。それをつけ麺に乗せて食べたり、ラーメンスープをかけて食べたりする常連さんもいますよ」。

「ヤマン」はポジティブな気分になれる魔法の合言葉

独特な風貌で厨房に立つ町田好幸さんは1973年に練馬区で生まれました。10代のころから音楽に興味を持ち、90年代の音楽シーンをにぎわせたヒップホップからの流れでレゲエにハマっていったそう。「ジャマイカでは主に英語が使われていますけど、一部でパトワ語という言語も使われてましてね。パトワ語でラーメンを言うならたぶん『ラハメン』になるんじゃないかなって」。ラハメン......まさかの造語でした。「そう、俺の造語っす。ハハハ」と白い歯を見せて笑う町田さん。

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「レゲエと同時期にハマったのがラーメンなんです。高校生のころからラーメン本を持って食べ歩くくらい好きで、友人にはよく『俺は将来ラハメン屋になる!』なんて言ってました」。高校時代は大山にあった町中華食堂でアルバイトをして、大学を卒業してからも同じ店に就職。3年ほど働いていましたが、「味の好みが変わるにつれて化学調味料に抵抗が出るようになって」との理由から、御徒町にあった無化調ラーメンの名店に転職。その後いくつかの店を経験してから200310月に「ヤマン」を創業しました。

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店名の由来はパトワ語の"Yah Man!"から。なので看板の表記はアルファベットで「Yahman」と書かれています。「英語で言えば"Yes, man!"です。ジャマイカの人たちはこの言葉を実によく使っていて、元は『はい』という意味だったけど、そこから転じて『いいね!』とか『クールじゃん!』みたいなポジティブな意味合いで使ってるんですよ」。

19年間続けてきた実直な味作り。ラーメン×レゲエの理由

「ヤマン」の味を支えているのは、化学調味料に頼らない素材の旨味、ダシです。ベースは朝7時過ぎから仕込む鶏ガラや豚足などの動物系スープ。そこに一晩かけて日高昆布とシイタケを水出ししたものにサバ節、厚削り、煮干しを加えてコトコト煮詰めた和ダシを加え、ふくよかな旨味をたたえたスープが完成します。

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2日がかりで完成するスープに自家製麺、それにレゲエ。その理由は「自分が好きなラーメンとレゲエにどっぷり漬かりながら仕事するって、めちゃくちゃハッピーだと思ったからです」。壁に貼られたラスタカラーのポップを指差し、「"Positive Vibration"はボブ・マーリーの曲なんですが、うちの店でラーメンを食べてポジティブな雰囲気に浸ってほしいって思いをコンセプトに創業しました。『なんだろう、この店?』と入ったらレゲエが流れていて、そしてラーメンは和風っていうサプライズ的な仕掛けで、お客さまにハッピーになってもらいたんですよね」。

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ラーメンとレゲエを愛する町田さんの店は間もなく創業20年目を迎えます。実直な手仕事から生み出される一杯をぜひ味わってみてください。

※価格はすべて税込
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