大火もまぬがれた歴史ある蔵での醤油作り

220511-82tera.jpg「松本醤油商店」で醤油を仕込んでいる蔵は、川越市の都市景観重要建築物にも指定されている歴史ある建物です。敷地内に入るとすぐに醤油の良い香りが漂ってきました。

220511-9tera.jpgこちらでは毎日醤油の製造が行われています。蔵の見学は、土日祝日の13:00、14:00、15:00で開催されており、予約不要・無料でどなたでも参加が可能です。10名以上の団体の場合は予約が必須となりますので、お電話にてお問合せください。

220511-56tera.jpg今回案内してくれた代表の松本勇一さん。松本醤油商店の前身となった横田家から明治時代に醤油造りと蔵を引き継ぎ、現在で5代目になるそうです。

早速醤油蔵の見学がスタートします。まずは松本さんから醤油クイズ!
「醤油はどんな原料からできているかご存知ですか?」

主な原料として、パッと思いつくのは「大豆」。こちらが旨味のもとになります。そして「水」も必要ですね。松本醤油では埼玉県産大豆を中心とした国産の大豆や川越の質の良い地下水を利用しているのだそう。

220511-2tera.jpg次に欠かせないのが「塩」。こちらでは、大粒の天日塩を使っています。

220511-4tera.jpg最後は「小麦」です。こちらが甘味や香りのもとになります。参加者の正答率が一番低いのが小麦なんだとか。確かに思いつきませんでした......! 小麦も埼玉県産のものを使用し、地元ならではの醤油を作り続けています。

220511-8tera.jpg続いて醤油作りの工程をお聞きします。

最初にこの赤い大きな圧力釜で大豆を蒸します。

220511-10tera.jpgそして小麦を煎って細かく粗挽きにする「割砕(かっさい)」の作業を行います。蒸した大豆と煎った小麦を混ぜ合わせると、重量は1トン以上!

混ぜた大豆と小麦はこちらの「麹室(こうじむろ)」に広げ、醤油を作るため培養した菌「種麹(たねこうじ)」を撒き、高温多湿の状態で寝かせます。

220511-21tera.jpg「麹は菌なので人が吸い込むと熱や咳が出てしまうことも。ここから桶に移す作業が大変なんです」と松本さん。※醤油蔵見学は安全に配慮して行っています。
今度は木桶のある蔵の中に進みます。こちらは190年ほど前から使用されている建物。江戸後期の天保時代から使われているため「天保蔵」とも呼ばれているのだそうです。明治時代の川越大火で街の3分の1が焼失した際にも大火をまぬがれ、今日まで残り続けています。

220511-27tera.jpg蔵の中は大人の身長よりも大きな木桶がずらりと並んでいます。

220511-48tera.jpg木桶には「仕込み水」と言われる塩水をあらかじめ入れておき、そこに麹を注ぎます。そうしてできるのが定番商品「濃口醤油」の「もろみ」。できたもろみは1年以上かけて熟成させます。蔵や桶に昔から住んでいる「蔵付き酵母」や麹菌の作用によっていろいろな醤油に仕上がります。

もろみは一見すると真っ黒に見えますが、よく見ると実は赤に近い色なんです。

220511-52tera.jpgここでは出来上がった醤油を仕込み水として使用し再度麹を仕込む「再仕込み醤油」も作られています。再仕込み醤油はより色が濃く、旨味が強くなるのが特徴です。

松本さん「醤油は300種類以上の香り成分があると言われていて、その中には果物や花と同じ成分も含まれ、調和された醤油の香りとなります」。
通常、桶の中は見られないのですが、今回は特別に木桶の上からも撮影させていただきました。菌の作用を促すため、職人さんがこの大きな桶の中身を丁寧にかき混ぜて熟成させていきます。

220511-37tera.jpg最後は搾りの工程です。熟成させたもろみを布の上に広げて包み、何層にも重ねた上に重石を乗せて搾ります。搾り出しには3日ほどかかるそう。

220511-20tera.jpgこうして「生醤油」の状態が完成。ここから熱を加える「火入れ」をすることで仕上がりに向かっていきます。

もろみを搾った後の醤油粕はミネラルや塩分が豊富。乳牛の餌に使用されるのだそうです。

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できたて醤油の直売所も必見!

工場と同じ敷地内には直売所の「鴫蔵(しぎくら)」が併設されていて、醤油や調味料、同じ敷地内で作られている日本酒「鏡山」や川越の特産品などを販売しています。醤油を使った漬物やドレッシング、炊き込みごはんの素もおすすめです。

220511-81tera.jpg松本醤油の代表的なブランド「はつかり醤油」は先ほどの木桶で2年間熟成させてできる、旨みと香りがしっかりとした深みのある醤油です。その名前は川越城の別名「初雁城(はつかりじょう)」から取られているのだそう。建物だけでなく、醤油そのものからもかつての城下町・川越を感じさせてくれます。

220511-70tera.jpgショップ内に飾られている柱をよく見ると、「天保」の文字が。実はこれ、壊れた木桶の一部なんです。当時は作った職人の名前を木桶に記す文化があったようで、桶が壊れて初めてその存在に気がついたのだそう。

220511-64tera.jpg「大量生産はできないのですが、香りや旨味をしっかり味わえる醤油作りにこだわり続けています」という松本さん。地元産の素材を使い、丁寧な醤油作りを続けることが地元で長年愛され続ける秘訣なのかもしれません。貴重な醤油作りを見学でき、深い歴史を感じられる「松本醤油商店」にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

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