ハワイ一色に染まった、まったりムードの店内

奥冨康之さん・美由紀さん夫妻が営むカレー専門店「狭山カレー工房 りとるほっと。」は2021年4月で丸18年。狭山市内を中心として近隣市町村のイベントにも積極的に出店し、メディアに取り上げられることも多い人気店だ。

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南国ムードに包まれた店内にはハワイミュージックが流れ、壁にはレイやアロハシャツ。穏やかで温かいムードを醸している。のんびりと過ごしやすい雰囲気だ。

不思議な縁が紡いだ「進むべき道」

奥冨さんがカレーの店を志すようになったきっかけは、 埼玉県ふじみ野市にあるカレー専門店「Jam3281」のカレーに魅了されたこと。そのカレーに出逢ったことで自分の進むべき道筋が明確にイメージできたといい、それまで勤めていた鮮魚を扱う会社を退社したのだとか。

退社直後には「Jam3281」ではなく、たまたま求人誌で見つけたカレー専門店で働き始めた。ところが実はこの店こそが「Jam3281」のオーナーシェフ・瀬谷さんに大きな影響を与え、ルーツとなった店だったというから縁というのは不思議で面白い。
そんな縁もあり、のちに瀬谷さんの元で修業することになったそうだ。

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カレーイベントでグランプリを受賞

奥冨さんが瀬谷さんの元を巣立ち、独立したのは2003年。狭山市商工会のイベントへの出店、知り合いの店の空き時間を利用して営業する今でいう「間借りカレー」などを経て、「りとるほっと。」を立ち上げた。

カレーはとても許容範囲の広い料理だ。「創業当初はどんなカレーにしようか、なかなか方向性が見出せなくて。拠りどころなく漠然と "カレーという大海原" に漕ぎ出してしまったような感じでした」と創業当初を振り返る奥冨さん。試行錯誤しながら "ご飯に合う日本式カレー"という方向性を見出してからは、着実にファンを増やしていった。

大きな転機になったのは川越恒例のカレーイベント。2016年に開催された「第2回彩の国カレーなる闘い」で見事グランプリ「カレー王」に輝いたのだ。大会に向けて特別なメニューを開発する店や高級食材を使ったカレーで挑む店も多いなか、「狭山ほうじ茶カレー」は、元々店で提供していたメニュー。「周りと比べ、うちのカレーはなんと地味だったことか」と奥冨さんは笑う。とはいえ、定番カレーを携えて専門店の威信にかけて真っ向勝負を挑み、多くの来場者の支持を得た喜びはひとしおだったに違いない。

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狭山茶の魅力を広め、消費に貢献したい

奥冨さんは生まれも育ちも狭山市内。ほうじ茶を使ったのは、もちろん狭山を代表する名産「狭山茶」を広く知ってもらいたいという思いからだ。「地産地消という言葉があるけれど、目標は"地消"ではなく"多消"。地元だけでなく、広く消費されていくことが大切だと思うんです」と奥冨さん。

それにしてもカレーと日本茶(しかもほうじ茶!)という意外にも思える組み合わせ。だが、奥冨さん曰く「カレーの基本はスパイス。お茶も元々薬膳にも使われるハーブのようなもの。組み合わせることに最初から違和感は全くなかったんです」。さらに、通常であれば時間をかけて火にかけることで生まれるカレーのコクや香ばしさ。ほうじ茶をパウダーにして加えることで短時間にその味わいを引き出してくれる効果もあるという。

一口目、ほうじ茶は強くは主張しない。むしろ、カレーそのものに見事に調和している。ただ後味に感じる爽やかさに、ほうじ茶がスパイスとしての存在感をさりげなく放っている。"カレーにほうじ茶を入れる"のではなく、"ほうじ茶で作るカレー"と表現する意味がよくわかった。

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だが、奥冨さんの試みはこれに留まらない。狭山市商工会が企画する「狭山茶グルメ計画」の一環で、狭山茶カレーも登場した。

見た目も鮮やかな狭山茶カレーは、クセのない秋摘みの秋冬番茶のペーストを使用。「抹茶ラテをイメージした」という言葉通り、クリーミーだがスパイス感とお茶の風味もしっかり感じられる。1食で湯飲み約1杯分の緑茶に相当するそうだ。

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自由な発想で生み出された名物カレーも

りとるほっと。の個性を際立たせるメニューはほかにもある。その代表的なメニューがブルーハワイカレーだ。南国をイメージした青いカレーがあるとわかっていても、いざ目の前にするとちょっとした衝撃が走る。

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だが、いざ勇気を出して一口味わってみれば、ツナをベースにしたまろやかでとても食べやすいカレー。鮮やかなブルーはスピルリナという海藻から抽出した天然着色料だそうだ。

さらに「よかったら、これも試食してみて」と出していただいたのはピンク色のカレー。これはビーツを使っているそうで、酸味のあるヨーグルトのような味わいだった。

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狭山茶カレーもブルーハワイ、ビーツのカレーも、見た目のインパクトに意識が行きがちだが、食べてみるとどれも"きちんと作られた"カレーだ。当たり前のことではあるけれど。

カフェにあるメニューの一つであればインパクト勝負の「出オチ」も許されるかもしれない。しかし、カレー専門店である以上、「おいしいカレー」でなくては許されない。色鮮やかなカレーは職人魂のあくなき探究心の現れなのだ。

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ブルーハワイカレーを初めて作った時、いきなり鍋いっぱいの青いルーを見て驚きのあまり言葉を失ったんですよ、と笑いながら教えてくれた妻・美由紀さん。しかし、康之さん曰く

「メニューとして提供することを前提に考えたら、仕込み量を想定して作らないと良し悪しが図れないから」。

そんな職人気質に驚かされながらも楽しそうに笑顔で康之さんをみつめる美由紀さん。そして「妻には頭が上がらない、しっかり手綱を握ってもらって感謝」と話す康之さん。

カレーという名の大海原を仲良く泳ぐ二人は、今後どんなカレーを生み出すのだろうか。これからもぜひ注目していきたい。

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