国道に面したリゾート感満点のラーメン店

新狭山駅から北西方面に歩いていくと、ロッテの狭山工場が見えてきました。今回の目的地は、その先の国道16号を渡った角に大きな「鶏白湯らーめん」と看板を掲げている「上気元いただき」。白い暖簾をくぐって店内へと入ります。

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厨房前のL字カウンター席と窓際にも数席。白壁と木を組み合わせたおしゃれな店内は、DIYアドバイザーの資格を持つ店主の岸岡勇さんによるものです。「イメージしたのはリゾート風の内装です。ラーメン屋さんっぽくなくて面白いでしょ?」と茶目っ気たっぷりな表情になる岸岡さん。

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提供しているメニューは鶏を濃厚に煮込んだスープで作る鶏白湯ラーメン。基本の醤油と塩、そしてマー油入りと煮干しダシを合わせた4種のラーメンが券売機に並びます。どれを選ぶか迷っていると、「僕の推しメニューはこれとこれ」と、「濃厚すぎる鶏白湯(塩)」(980円)と「マー鶏ックス」(970円)をレコメンドしてくれました。

彩りと遊び心を忘れない店主がつくる鶏白湯ラーメン

「濃厚すぎる鶏白湯(塩)」は、白い器の中に水菜や糸唐辛子、豚の低温調理チャーシューなど彩り鮮やかな具材が並んでいます。大量の上州地鶏を煮込んだ鶏白湯スープはややトロミのある濃厚な口当たりです。しなやか食感の麺はつるつるとした麺肌ではなく、細かくザラサラとした印象。「スープがよく絡むように、敢えて"引っかかり"のある麺に仕上げています」。途中まで食べたところで別皿のレモンを絞ると濃厚なスープの表情は一変。爽やかな後味が楽しめます。

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海苔の上に置かれたバゲットは、これまた岸岡さんのひらめきで生まれたトッピング。「ある朝、目が覚めた瞬間にひらめいたんです。それで、キッチンにあった強力粉でパンを焼いてスープに合わせたら思った以上においしくて。ラーメンの具材としてもユニークだし、即採用しました」。

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2杯目は焦がしニンニクオイルのマー油を味のアクセントに加えた「マー鶏ックス」。マー油独特の香ばしさとコクがマイルドな鶏白湯スープを引き締め、先ほどよりもちょっとワイルドな味わいです。

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卓上の「MG激辛」という壺の中身は、自家製の唐辛子スパイスでした。「僕の親父がずっと飲食店をやってて、これは親父のレシピで作ってます。読み方は『マジ激辛』です(笑)」。鶏白湯スープにはコショウよりもこちらの唐辛子スパイスの香りと辛味がぴったり。辛いので少しずつ入れるのがおすすめです。

変化を恐れず、即行動すべし。軽やかに姿と味を変えてきた

店主の岸岡さんは高校を卒業するとオーストラリアに渡り、1年ほどツアーガイドとして働きます。19歳で帰国したあとは釣り具メーカーで資材管理などをしていました。そんな岸岡さんがこの世界に飛び込んだのは、26歳のとき。ラーメン店を営んでいた父親の姿に影響を受けて地元のラーメン店「南京亭」に入ります。「飲食業の経験なんてなかったし、包丁すらまともに使えなかったんですよ。『南京亭』では調理のイロハからすべて学びました」。

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約3年の修業を経て、29歳で岸岡さんは独立。現在の場所に豚骨ラーメンの店「香麺」を開きます。13年ほど店を切り盛りしましたが、自分の作りたいラーメンの方向性が変化してきたことから一時休業します。

ラーメン学校でラーメン作りのノウハウを基本から学びなおし、約2年の準備期間を経て、豚骨ラーメンとは真逆のあっさり系丸鶏ラーメンで再オープン。この時に「上気元いただき」と店名を変えます。「ラーメン学校では経営学にも触れる機会があって、先人たちの経営哲学や心得などを知っていくなかで出合ったのが『上気元(じょうきげん)』という言葉です。自分の機嫌は自分で取る。経営者たる者、つねに上機嫌ならぬ上気元でいるようにという、実業家の斉藤一人さんが作った造語です」。

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店名を変え、気持ちも新たにスタートさせますが、約1年でまたもラーメンの味を変更。2014年から現在の鶏白湯ラーメンを提供し始めました。「人と同じ事をやりたくないという性格もありますが、あっさり系ラーメンでは他店との差別化にも苦労しましてね。このままでは勝負できないと気づいたので、鶏白湯に変えました。『進化する』みたいな格好良い意味じゃなく、ダメと思ったら即行動するんです」。自分らしさ全開で突き進もうと決め、この頃から焼き印の付いた味玉や10円握手券といったユニークな試みも始めました。

「握手券10円なんてクレイジーでしょ? 興味本位で買ってしまって、僕が握手しようとすると『なんで?』ってリアクションする方もいますよ(笑)」。店の公式SNSで握手する姿をアップしていくうち話題となり、握手券の販売スタートからこれまでに2000人以上が購入しました。

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店の内外にはここに書ききれないくらいユーモアに富んだ"仕掛け"が用意されています。「今は個人の魅力を売る時代だと考えています。店の内装をリゾート風にしたのも、よくあるラーメン屋さんっぽさからの脱却です。ユニークでエンタメ性のある空間にしてきたのは、ラーメンを食べに来てくれた方々に上気元(上機嫌)になってもらいたいからです」。

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店名を「いただき」に変えたのは、ラーメン業界でオンリーワンの存在になろうという決意からだと語る岸岡さん。自分にしかない個性を表現しながらワクワクできる店を目指している最中で、ラーメン店はその表現技法のひとつに過ぎないと断言します。「僕の行動の原点って、いつもひらめきからですからね」と前置きしながら「もしかしたら、1年後はラーメンじゃない店をやってるかも」と、また茶目っ気のある笑顔を見せました。

※価格はすべて税込
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