全国でも数少ない「米粉パン専門店」

「コイガクボ」という印象的な店名。西武線沿線の方であれば、きっと思い当たる節があるだろう。そう、国分寺線にある「恋ヶ窪」という駅名だ。入間にあるのになぜ恋ヶ窪?ずっと気になっていた。「実はこの店名、国分寺の恋ヶ窪とは関係ないんですよ」と笑って教えてくれたのはオーナーの内山健さん。 「実はこの店のルーツは岡山にあるんです。岡山にも『鯉が窪』という地名があって、そこから名付けられたんですよ」。国分寺の恋ヶ窪とは全く関係なく偶然の一致だったとは驚きだ。

縁あってこの店を引き継いだ内山さん。米粉パンを専門的に提供するという元々の基本コンセプトはそのままに、技術や仕入先などは新たに開発をしてきたという。現在、米粉パンを専門とするベーカリーは埼玉ではコイガクボのみ、首都圏でほかには東京に3軒ほどあるのみだそう。しっとりモチモチとした独特の食感を持つ米粉パンの魅力を多くの人に知ってもらいたいという内山さん。現在は小手指にも店舗を持ち、また東京家政大学狭山校舎内にも出店。ほかにも内山さんのオリジナルレシピを用いてプロデュースを手がけた店が目黒、池袋、渋谷にあるという。

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水分含有量の高さがもっちり感を生み出す

見た目には小麦のパンと大きくは変わらない米粉パン。だが、配合や手順が小麦のパンとは全く違うという。「小麦パンをずっと作ってきた職人さんでも、いざ米粉パンを作ろうとすると結構手こずる方が多いんです。仕上がりがなかなかきれいにいかないという声をよく聞きますね。小麦パンと米粉パンではまず、概念が違うんです」。 米粉の特徴は水の吸収率がとても高いこと。小麦パンの倍近くの水を使うといい、それがモチモチとした独特な食感につながっている。

「例えば最近の食パンブームになっている『生食パン』。あれは通常40%くらいで作っていた食パンの水分量を70%程度まで増やしているんです。日本でウケるのはやはりしっとりとした食感だということですよね。米粉パンの場合は110%前後の水分量になりますから、よりしっとりモチモチとした食感になるんです」。
試食させていただいた食パンは食べ応えのあるむっちりとした食感。サンドイッチにも合いそうだが、そのまま食べても満足感が高い味わいだ。

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「無味無臭」が米粉パンの一番の利点!?

「米粉パンのもうひとつの魅力は『無味無臭』なところ」と内山さん。無味無臭が魅力というのはちょっと不思議な気もするが、パンの上に乗せたり、練り込んだりする食材の味わいがしっかりと再現されることだという。食パンにほんの少しジャムをのせても十分にその風味が堪能できる。少しだけでしっかり風味が引き立つのならバターを塗るのも罪悪感もなくなりそうだ。強い個性を主張しないぶん、食材の邪魔をしない。何にでも合わせやすいというのも米粉パンの利点なのだ。

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米粉パン専門店の先駆け、トップランナーとしての矜持

米粉パンは通常、表面に膜を作りつなぎの役割をしてくれる小麦のグルテンを抽出し、米粉に配合したミックス粉で作られる。コイガクボではグルテンの配合を最小限に抑えた85%米粉のブレンド粉を使用。ただ、アレルギーで小麦が食べられない人のためにグルテンフリーのパンも作っている。全国から問い合わせが入るといい、通販で対応しているそうだ。

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小麦に比べ、米粉の価格はおよそ3倍から4倍。そのため、小麦パンの感覚で米粉パンを導入するのは容易ではない。内山さんは長年の経験から、できるだけパンの価格をあげずに提供するためのノウハウやテクニックを積み重ねてきた。依頼があればこれらを惜しげもなくレクチャーするという。ノウハウを提供することは「ライバルが増える」ことではなく、「裾野が広がる」こと。そのためには「いつでも、どこでも、喜んで」なのだ。

また、製粉会社にレシピを公開して情報交換することで、メーカーの研究開発にも協力。米粉の可能性を広げる役割も担っている。ほかにも週末には米粉を衣にした唐揚げや米粉麺でつくった焼きそばを提供するなど、パンのみにとどまらず、米粉自体のさまざまな魅力、可能性を発信。さながら「米粉のアンテナショップ」のようだ。

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イタリア仕込みの本格ジェラートも

店内にはイートインコーナーがあり、ホットコーヒー、紅茶は280円。店頭で購入したパンや米粉スイーツなどと一緒に味わうことができる。 さらには内山さん自らイタリアで修行して学んだという本格的なジェラートも10種前後並ぶ。天然素材を使用したジェラートはやさしい味わいながら、しっかりと素材の持ち味が生かされ「コイガクボ」のもうひとつの名物になっている。

実は取材日の翌日から、またイタリアにジェラート修行に旅立った内山さん。コイガクボの進化はまだまだ尽きることはなさそうだ。

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