街の誕生と同時に生まれたパン屋「サンセリテ」

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およそ45年前。山が切り開かれ、狭山台団地の街ができた。サンセリテはそのときにオープンしている。
「父が脱サラで始めた店です。パン職人でもなければ経営も素人だったので、なかなか大変な思いをしたようですが」と、2代目社長の髙田知明さん。

それまで何もなかったところに急にたくさんの人が暮らすようになったのだから、当時はどんな商売でもそこそこ成功したという。しかし現在では郊外型の大きなスーパーやアウトレットができたことも影響してか、当時の商店街の店はほとんど残っていない。そのなかでサンセリテが活況を呈しているのは、どういうわけなのか。

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特別なことはせず、ただ真っ当にパンを作る

サンセリテの代名詞は「天熟食パン」(302円)だ。毎日500斤も売れるその人気ぶりは、テレビ番組などでも紹介されるほど。しかし食パンといえば、どこのパン屋でも買うことができる超のつく定番商品だ。それなのに遠方からもお客さまを引き寄せるとは、この食パンには何か秘密があるのだろうか。

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2時間ごとに焼き上がる「天熟食パン」は次々売れていくため、専用ラックの中身はつねに入れ替わる。

「まず、イーストを使わずに天然酵母でつくっているということでしょうね。うちのパンは2~3日かけてつくるパンがほとんど。熟成がゆっくり進むので、小麦の香りや味わいが引き出されます」と髙田さん。特別なことはせず、ただ真っ当につくっているだけ、ということか。
店長の北山さんによると、「何か旨味の元みたいなものがあるわけではなく、純粋に塩や砂糖といった基本の材料だけでつくっています。ただ、業界内でレシピ交換をしたりもするなか、『天熟食パン』と『天然酵母のカレーパン』(194円)だけは門外不出の配合なんです」とのこと。

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"自分のため"から"お客さまのため"へ

「この食パンができたのは15年くらい前。それまでの自分は、 同じパンを作り続けるのが嫌で、毎日配合を変えていろいろなパンを作っていました。店に並ぶパンが毎日違っていたんです」と髙田さん。自分のこだわりのために、自分がつくりたいように。朝から晩まで厨房に閉じこもって、自分の世界に入り込みながらパンを作っていたという。

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しかしこどももでき、家族や従業員の生活を支えなければならないと気持ちが転換した。新聞やテレビを見たり、講習会などの集まりに出かけていってはいろいろな人の話を聞いたりと、積極的に社会とつながりを持ち、知見を広げていくように。そして「お客さまのために、おいしいパンをつくる」モードに切り替えたのだった。

サンセリテとは、フランス語で「真心」の意味。自分自身のこだわりから、お客さまのことを第一に考えた、真心の店に。それに比例して、売上は飛躍的に伸びていった。

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そして2016年5月には、世田谷にも出店した(「サンセリテ 北の小麦」)。サンセリテは飛び道具を使わず、真っ当なやり方で、虜になるお客さんを確実に増やしていく。天然酵母がゆっくり熟して、おいしいパンになっていくように。

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※価格はすべて税込
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