爽やかな郊外で味わう武蔵野の味

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飯能は都心から日帰りでハイキングが楽しめる街。飲食店が立ち並ぶ駅前通りにある「せいたろう」は、そんな飯能に店を構えて40年、豊富なメニューでファンの多いそば処です。

「『せいたろう』は、私の父がうどんとそばの店として創業しました。武蔵野うどんに代表されるように、埼玉はうどんがよく食べられる県で、飯能にもうどん屋さんは多くあったので、私の代になってからはあえてそばに力を入れてきました」と二代目の間川弘章さんは話します。

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お店の入口横には石臼が置かれています。
「買い取ったそばの実を石臼でゆっくり挽くことで、風味を保った新鮮な粉になります。粉がよければ、あとは『水回し』と呼ばれるこねをしっかりやれば、うまいそばになるんです」と話す間川さん。粉の挽き具合とこねの熟練の技で、弾力のある食感とつるっとした喉越しの繊細な二八そばになるのだといいます。



自家製粉のそばの個性を食べ比べる


「せいたろう」で食べられるそばは、「普通そば」「韃靼(だったん)そば」「むさし野そば」の3種類。これらをすべて味わえるのが「食べ比べ むさし野そば」です。今回は、天ぷら付きの「天ぷら付き食べ比べ むさし野そば」(2,000円)を注文しました。

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3種類のせいろと天ぷらの盛り合わせを早速いただきます。「まずはつゆをつけずにそのまま食べると、そばの香りと味の違いがよくわかりますよ」と間川さん。
まずは左の「むさし野そば」を一口。生産量の少ない飯能産のそばは、噛むほど濃密な香りが口の中から鼻孔に抜け、力強い味わいです。
「街の歴史を調べていたとき、飯能で蕎麦を栽培していることを知りました。昔から自家用につくっている農家さんをなんとか見つけ、相談して契約栽培していただき、『むさし野そば』としてお客さまに提供しています」と間川さん。

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真ん中のほんのり黄色い「韃靼そば」は、中国雲南省や四川省、ネパール、ブータンの高地で作られているもの。中国では明の時代から漢方薬として扱われていた薬膳で、血液がサラサラになるというルチンを多く含みます。ほんのり甘い日本のそば(甘そば)に対して「苦そば」と呼ばれますが、ほんのり苦みを感じる程度で、噛むほどに風味が出てきます。
右の「普通そば」は、店主が味と香りを吟味して産地・品種をよりすぐっており、取材時は北海道黒松内町産北早生種の新そばでした。やさしく爽やかな風味で軽やかに手繰れます。
かつおからダシをとった濃いめのつけ汁を麺に半分ほどつけ、どんどん食べ進めていけば、そばの味の幅を堪能できます。

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ちょっとそばを小休止して、旬の食材を使った天ぷらを味見します。今回はエビ、ハゼ、ナス、さつまいも、いんげんの5種類。そばの風味を損ねないよう油っぽすぎない仕上がりなので、素材の味わいが楽しめます。

ふんわりもっちり、具だくさんの「すいーとん」

飯能はそばやうどんだけでなく、すいとんも古くから食べられている地域です。「飯能すいーとん」は、すいとんをアレンジした飯能の名物B級グルメ。2014年には埼玉B級ご当地グルメ王決定戦で優勝したこともあり、以前ぐるっとプラスでも「飯能すいーとん作り」を体験させていただきました。

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「せいたろう」にもこの飯能すいーとんがいただける「すいーとんセット」(1,300円)があり、韃靼そば、普通そば、うどんの3種類から選べます。今回は普通そばをいただきました。

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スープに入っているのは、小さな握り拳くらいのドーム型の「すいーとん」。小麦粉と米粉、そば粉を練った生地はふんわりもっちりとした食感で、中にはそばの実、海老、鴨、鶏肉、鶉の卵、お餅、チーズ、さつまいもなど、その時々の旬の食材がたっぷり入っています。

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ひとすくいごとに食感や味が変化するのが楽しいポイント。柚子がアクセントになった温かいスープで体がホカホカになりました。

なんでも面白がって楽しみ、突き詰めていく

「こどもの頃から食べることが好きで、食べたいものは自分であれこれ試行錯誤して作っていたんです。なんでも試してみて、おいしいと思ったものがお店のメニューになっています。そばは天ぷらや鴨、豚など、脂っぽいものと合わせてもスッキリ食べられるのが魅力。いろいろな組み合わせを楽しみながらメニューを考えています」と間川さんは話します。

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メニューには、コクのあるイベリコ豚の「肉汁そば」(1,300円)や、ピリ辛に煮込んだ「牛すじつけそば」(1,450円)、素揚げした干し海老がたっぷりの「小海老おろし」(1,100円)などの変わり種も並びます。どれも間川さんの工夫に溢れていて、次回は何を食べようかと気になってしまうほど。

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「何でも試してみる、面白がってやってみる性分なんです」と間川さん。飯能が舞台のアニメ『ヤマノススメ』ファンとの交流も多く、店内にはキャラクターのパネルやグッズがたくさん飾ってあり、とても和やかな雰囲気でした。料理だけにとどまらず、飯能の新しい魅力も感じられそうです。
飯能に遊びに行った際は、店主の好奇心と探究心が凝縮したそば処「せいたろう」でそばを味わってみてはいかがでしょうか。

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