ジョンソンタウンでスタート。未経験からの挑戦

_Q5A0205.jpg木々に囲まれた小庭を通って木製のドアを開けると、白とウッド調で統一された空間が広がっています。大きな窓からは太陽光が差し込み、飯能の澄んだ空気が店内にも満ちているよう。店の奥も一面ガラス張りになっており、裏手にはハーブの植えられた小道が見えます。

_Q5A0211.jpg_Q5A0251.jpg「私にはデザインの才能がないので、奥さんの言う通りに店づくりをしました。店名の『1+2(いちたすに)』も、奥さんの好きな映画『A One and a Two』(邦題:『ヤンヤン 夏の思い出』)から取ったんですよ」
そう話すのは店主の高田さん。現在はイタリアンシェフですが、一風変わった経歴の持ち主です。

遡ること十数年前。音楽関係の仕事をしていた高田さんは、入間市のジョンソンタウン内にスタジオ兼事務所を構えましたが、そこで厳しい現実に直面します。
「音楽がなかなか売れなくなったんです。仲間もどんどん辞め、収入も減っていきました。でも生活のためには何か仕事をしなければいけない。いろいろ考えた結果、『料理は得意分野だし、ご飯でも作ろうか』と思ったんです」
そこでスタジオの半分をカフェに改装し、パスタを作り始めたのが今から10年ほど前のこと。シェフとしてはまったくの未経験からのスタートでした。

食べ歩いたイタリアンの味を自分で再現

_Q5A0307.jpgそもそも高田さんが料理をはじめたきっかけは、ジョンソンタウンへの引っ越しからほどなくして、奥さんが入院したことでした。
「それまでは自分で料理をしたことがありませんでした。料理の基礎の本を買ってきていろいろ作ってみたところ、それがまったく苦ではなくて、むしろ楽しかったんです」

昔からイタリアンが好きで、サラリーマン時代にはよく食べ歩きをしていた高田さん。かつて訪れた名店の味、よく通っていたあのお店の味は、どうやって作るんだろう。イメージを膨らませながら、これまでに食べたイタリアンの味を再現することに夢中になりました。

Q5A0199.jpgお店をオープンしてからは、今まで以上に食べ歩くようになった高田さん。イタリアにも何度も訪れて本物に触れ、そこで感じた空気や感動した味を自分のお店に持ち帰りました。
「池尻大橋の『オステリア・ヴォーノ』というお店の島田正シェフにはいろいろ教わっていて、一緒にイタリアにも行き、現地のマンマからレシピを伝授してもらったりもしました。プロのシェフのもとで修行をすることができなかったぶん、違うやり方で勉強するしかないんです」

飯能の自然を眺めながら、ふわふわのオムライスを

次第に常連客も増えていき、軌道に乗った2016年、お店を飯能に移転しました。飯能を選んだ理由のひとつは、ジョンソンタウンの常連さんにも「一度行ってみようかな」と思ってもらえそうな距離だったこと。もうひとつは、子ども時代の原風景に近いものを感じたことだといいます。
「僕は神戸出身なのですが、都市部ではなく六甲山の裏側、有馬温泉のあたりで生まれ育ちました。緑があふれる飯能は住んでみても居心地がよく、自分のフィーリングに合う場所だなと感じています」

_Q5A0214.jpg12」の名物メニューといえば、「エビとトマトクリームのオムライス」(ドリンク付き 1,100円)です。ふわふわのオムレツが乗ったライスに、エビの風味が香るトマトクリームソースをたっぷりかけた一品。まろやかな卵とコクのあるソースの相性は抜群です。

このクリームソースは、もともとパスタソースとして作っていたものだそう。あるときお客さまに「このソースをご飯にかけて食べたい」と言われ、考えた高田さん。白ご飯では味気がないので、トマトソースとバルサミコ酢とブロード(洋風のだし)を混ぜたライスに。さらに卵を乗せてオムライスにしてみたところ、これが大好評で、一躍人気メニューになりました。ジョンソンタウン時代からこのオムライスのファンで、10年近く通ってくれている常連さんもいるのだとか。

_Q5A0239.jpg季節ごとに変わるパスタランチは4種類。今回は「きのことボロネーゼクリームのタリアテッレ」(ドリンク付き 1,100円)をいただきました。ミートソースをベースに、クリームでまろやかさをプラス。たっぷり入った5種類のきのこが深いうまみを引き出しています。

_Q5A0245.jpgおすすめのデザートをオーダーすると、白いお皿に乗せられて出てきたのは「ゴルゴンゾーラチーズケーキ」(650円)。チーズの濃厚な香りとほのかな塩味が感じられ、添えられたラズベリーソースが見た目にも鮮やかです。

デザートを担当しているのはパティシエの武居さん。レシピの豊富さはもちろんのこと、朗らかな接客も好評なのだそうです。以前は火曜日・水曜日が定休日でしたが、現在は水曜日を「スイーツデー」として、武居さんの作るスイーツとドリンクのみのカフェ営業も行っています。

_Q5A0203.jpg高田さんのこだわりは、「自分がいいなと思ったものを提供すること」。大好きなイタリアの風景や空気感、そこで体験したことなどを、お店を通じて知ってほしいのだといいます。
「自分の好きなものを伝えて、『いいね』と言ってもらえるのがうれしいんです。でも、そのためにはまだまだ勉強が必要。1日も早くまたイタリアに行って、いろいろなことを吸収したいですね」
高田さんのイタリアンへの愛はとどまるところを知りません。「12」の挑戦はまだまだ続きそうです。

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