メニューはラーメンと餃子のみ。頑なにおいしさを追求してきた

武蔵砂川駅の南を流れる玉川上水を超え、五日市街道に出たら東へ。流泉寺の向かいで赤と黄色のひさしが目を引くのが「三番亭」です。

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「三番亭」は店主である母と、息子2人、孫1人の家族4人で切り盛りしている人気のラーメン店です。この場所で町中華を経営していた方が店を畳む際、「三番亭」の屋号と厨房設備などをそのまま引き継いで2004年にオープンしました。
「私の親戚が八王子市内でラーメン店をやっていたんです。ここを開くと決まり、仕込みや食材の仕入れ先、レシピなどを数カ月かけて教わりました」と話すのは、店主の洋子さん。

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トッピングのバリエーションがいくつかありますが、提供しているメニューはオープンから現在まで、ずっとラーメンと餃子のみ。始めた頃は町中華時代からの常連客に「チャーハンないの?」「定食は?」と言われたそうですが、洋子さんはラーメンの味に集中したいとの理由から「やりません」を貫きました。

開業5年目の転機。次第に行列のできる繁盛店へ

11時の開店時間までに洋子さんがテーブルセッティングを終え、営業中は長男の優司さんと次男の耕司さん、そして孫の将悟さんが厨房とホールを担当。今では行列ができるほどの人気店ですが、オープンから数年間はご苦労もあったそう。
「屋号をそのままで中身を変えたから、最初の頃はお客さまが定着しなくて大変だったのよ。店はお座敷もあって広いんだけど、私と主人の2人でも十分回せるくらいしかお客さまが来なかったんです」と洋子さんは当時を振り返ります。

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転機が訪れたのは5年目を迎えた2009年。沿線のラーメン店を特集した雑誌に掲載されると、「立川市に本格的な八王子ラーメンを出す店がある」と認知され始め、徐々に店は忙しくなるように。ちょうどその頃、優司さんと耕司さんが店に入ります。

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八王子ラーメンは1959年に誕生したご当地ラーメンで、現在も八王子市内を中心に多くの店で提供されています。味の定義は「1.醤油ベースのタレ」「2.スープの表面をラードで覆う」「3.刻みタマネギを使用している」の3点。「三番亭」では洋子さんの親戚のラーメン店のレシピに忠実に、豚ガラをすっきり煮込んだスープにコクのある醤油ダレを合わせ、シャキシャキの刻みタマネギをトッピングします。

醤油を立たせたスープは絶品。母から子、孫へと守り続けていく

看板メニューは「ラーメン」(650円)です。毎朝早くから仕込むというスープは、醤油のコクを豚の軽やかな旨味で下支えしていて、すっきりとした飲み口が特徴。表面を覆うラードがスープの甘みを引き立てています。極細のストレート麺はすすり心地も良く、時間が経つにつれて麺肌にスープが染み込んでさらにおいしさを増します。動物系スープに清涼感を持たせる刻みタマネギは、プラス70円の「玉ネギ増し」で増量することも可能。

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もっちり食感の皮で手包みした「餃子」は5個入り450円。合挽き肉、キャベツ、白菜、ニラなどを練ったオーソドックスな味わいですが、餡がたっぷりと入っていて食べごたえも十分。ラーメンに餃子3個と半ライスが付いた「Aセット」は990円、ネギラーメンの「Bセット」は1,100円とかなりお得で、ランチタイムはセットを注文する方がほとんどだそう。

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オープン当初は「毎日、暇でしょうがなかった」と洋子さんは話します。メディア露出を契機に客足が増え、今では週末になると県外からもリピーターが訪れるほどの繁盛店になりました。そんな「三番亭」には20年通い詰めるファンもいるとか。「学生だった方が結婚して、今ではお子さんを連れてきてくれるのよ。ほらこれ見て」と洋子さんが指さすのは、常連客の子どもが描いてくれたというポスターです。

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「メニューは増やさず、一日でも長く店を続けることかな」。長男の優司さんに今後の目標を聞くと、そう謙虚に答えてくれました。母の洋子さんも頷きながら「そうね。店を増やすつもりもないしね」とポツリ。「私が親戚の店で教わって大切に守ってきた味だから、家族以外の誰かに任せるなんてできないものね。これからも家族でやれる範囲の商売を続けていきます」。

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祖父母が始め、父と叔父が繋いできた味について、将悟さんは「この味を守っていくのが僕の使命」と笑顔で語ります。高校生の頃から店の手伝いをしていた将悟さんは、大手メーカーに7年勤めてから一念発起して店に入りました。現在は盛り付けとホールを見ながら、父である優司さんのもとでスープの仕込み方や麺茹でなどを勉強しています。

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父と母が始め、息子と孫たちが受け継ぐ「三番亭」の味は、これからも多くのファンを魅了し続けていくことでしょう。


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