LINEで送る美術の仕事をしていた店主ならでは。店構えからセンスが光る
水色の壁面とレトロな風合いの扉が印象的な「古書まどそら堂」。店主の小林良壽さんが自らペンキで色を塗ったり、棚にイラストを描いたり、店内の棚を取り付けたりしてお店づくりをしたそうです。
入口の前にはかわいいイラストが描かれたワゴンに入った文庫本が。このイラストも小林さんが描いたのだそう。
「古書店なので、もちろん本を集めることも大事なのですが、本を並べる棚やレイアウトにも、ついこだわってしまって......」と話す小林さん。古本屋を始める前は、イラストやキャラクターデザイン、壁画、造形物の制作など、長く美術関係の仕事をしていたといいます。現在も「まどそら堂」の他にギャラリーも運営しているそうです。
アートやデザインに長く携わってきた小林さんのセンスが光る店内を、さっそくのぞいてみましょう。
お客さまのニーズに合わせて本を選ぶ
店内に入ってまず目に入ってくるのは、たくさんの絵本です。「はらぺこあおむし」や「スイミー」など馴染みのある絵本に加えて、一般の書店ではなかなか出合えないような海外の絵本も。本棚だけでなく壁一面にも並んでいます。
「古本屋さんって、本が好きな人のための専門店のようなイメージがあるでしょう。でも、せっかくファミリー層が多い国分寺に店を構えたので、市民の皆さんが入りやすいよう、こども向けの本も置いています」と話すのは、小林さんの妻のあかねさんです。「近くには大学も多くて、若い方もよくいらっしゃいますね。デートコースのひとつにもなっているんですよ」とにこにこしながら教えてくれました。
少し奥の棚には比較的新しい小説や文芸作品があり、さらに奥へ進むと、古い漫画や雑誌、SF小説など、コアなファン向けの本も並びます。左手の巨大な棚には大きな画集やマニア向けの古書があり、レジの横にはクリエイターが作ったZINE（個人製作の冊子）も置かれていました。お店を始める前から古本集めが趣味だったという小林さんならではの、取り扱う本のジャンルの幅広さには驚きです。
「初めて古本屋に来たという方も多いので、だからこそ、普段本を読まない方にも親しみをもってほしいと思っています。本は読むためだけのものではなく、飾ってもいいし愛でてもいい。このお店に訪れたことをきっかけに、本をいろいろな視点から捉えてもらえたら嬉しいですね」と、小林さんは話します。
店主と話せば、とっておきの１冊を見つけられるかも？
「お店に来るお客さまは、探している本があるというよりも、漠然と『何か良いものはないかな』と思って来る方のほうが多いんです」と語る小林さん。本棚を前に悩んでいる様子であれば、声を掛けたり、ときには本をおすすめしたりすることもあるのだそう。
「お客さまの今の気分や好きなジャンルを聞いていくうちに、お客さまの悩みがわかることがあります。たとえば落ち込んでいるときには、簡単に読めそうな本を紹介すればいいのか、それとも逆に重たい内容の本を紹介すればいいのか、こちらもいろいろ考えますね」。
「とはいえ、人からおすすめされても、自分で『これだ』とピンと来ないとなかなか読む気は起きませんよね」と小林さんは笑います。小林さんの思慮深くおおらかな人柄が、本と出合うための間口を広げてくれそうです。
地域とつながりながら、本と人をつなぐ
学生の頃から結婚するまで国分寺に住んでいたという小林さんは、お店を開くならぜひとも国分寺がいいと考えていたそうです。「私が住んでいたころの国分寺はサブカルの聖地でした。当時の雰囲気は今やほとんどなくなってしまいましたが、あのころの国分寺の名残を受け継ぐようなお店をつくりたいと考えました」。
現在は地域に根付いた古書店として、駅直結のセレオ国分寺で行う「国分寺ブックタウンフェスティバル」に参加したり、武蔵国分寺公園で開催される「Sunday Park Cafe」で"古本釣り堀"というユニークなイベントを開催したりしているそうです。
「これからも本を媒介として地域とのつながりを深めていきたいですね」とあかねさん。小林さんも、「今後もまちの人を巻き込んで本に関するイベントができたらいいですね」と話します。
国分寺に住む人々に寄り添いながら、誰でも気軽に立ち寄れる古書店をめざす「古書まどそら堂」。国分寺に訪れたら、ぜひ立ち寄ってみてください。自分にとってピンと来る一冊に出合えるかもしれません。
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