美大出身の店主がめざしたパン屋とは?

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東大和市駅から徒歩7分ほど、住宅街のマンションの一階にある「サンサンベーカリー」。
店主の田淵健さんは玉川上水駅近くの立川市出身。武蔵野美術大学で工芸工業デザインを専攻し、研究室にも在籍していた経歴の持ち主だ。
「在学時は家具作家をめざしていました。『家具を作る工房の横にはショールームを設け、そこでコーヒーを出せたらいいな。コーヒーと一緒にパンも一緒に出せたらもっといいな』という想いがどんどん膨らんできたんです。そんな気持ちから、家具ではなくパン職人の道を志すようになりました」

幼少期からパンは大好きだったというものの、パンに関してはまったくの素人。パンの本を読んだり、食べ歩きをしたりした後、当時世田谷にあった「ラ・フーガス」でパン職人の道をスタートさせた。
その後もさまざまな店で修業を積んだ田淵さん。「ベーカリーをやりたい」という気持ちに揺るぎはないものの、ある店での修行時に疑問を感じたという。
「その店は『とにかく量産すればいい』という考え。だからクリームやあんこなどのフィリングもすべて仕入れたものを使っていました。出来上がっている生地にそれらを絞り、焼くだけ。僕にはそれがどうしても腑に落ちませんでした」

そこで見つけたのが、横浜にある「パナデリアシエスタ」だった。
「ここではパン生地はもちろんのこと、フィリングもすべて手作り。店主の目の届く範囲でやっていて、まさに僕の理想のお店でした」
「パナデリアシエスタ」に8年勤め、ついに念願の独立へ。大学時代に知り合ったという奥さまの弘美さんとともに「サンサンベーカリー」をオープンさせた。

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店主・田淵健さんと奥さまの弘美さん。店名の「サンサンベーカリー」は二人の息子さんのお名前からイメージしてつけたそう。 「わかりやすく、親しみのある店名にしたくて考えました」(弘美さん)

手間を惜しまず、できるだけ手作りにこだわる

田淵さんがパン作りで大切にしているのは、とにかく手作りであるということ。「サンサンベーカリー」ではカレーパンに入れるカレー、クリームパンのカスタードクリーム、そしてあんぱんのあんこまですべてお店で作っている。
「やっぱり手間を惜しまず作ると、ちゃんとおいしいんです。お客さまにも安心して食べていただきたいですからね」

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「ひよこ豆の自家製キーマカレーパン」(220円)は10種類のスパイスを使ったスパイシーなカレーがクセになる逸品。パン粉を付けて焼き上げたザクザク感もいいアクセントに。

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自家製カスタードクリームをたっぷり入れた「クリームパン」(180円)。お店のクリームや具は基本的に多めで、「他店の1.5倍ぐらいかと思います(笑)」と田淵さん。食べ応えも十分。

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和栗の甘露煮とフランス産マロンペーストをデニッシュ生地で贅沢に包んだ「くりのデニッシュ」(330円)。 生地の上にはアーモンドクリームを乗せ、さらにソーメンをトッピングしていがぐりをイメージ。

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フランスパン生地にゴーダチーズをたっぷり練り込んだ「チーズブール」(360円)は ワインのお供にも好適。スライスしてトーストするのがおすすめ。

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「甘いものが好きなのでジャムも作っています」(田淵さん)。パンに合わせるのはもちろんのこと、ちょっとした手土産にもぴったり。

もうひとつ田淵さんが大切にしているのは食パンだ。
「毎日食べるものだからこそ、食パンを一番のメインに考えています。おすすめは3~4枚切りにしてトーストすること。耳の部分はカリッと、中はもっちりとした食感になります」

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夫婦ふたりでこれからも続けていきたい

夫婦二人で切り盛りするからには工夫も必要だ。そのため、店ではおおまかな焼き上がりのタイムスケジュールを記したものをお客さんに渡している。10時のオープン時にはあんぱんやクリームパン、玄米系のパン、サンドイッチなど。10:30に食パン類が焼き上がり、10:45にはレーズンブレッド、11:15はミルククリーム、11:45には惣菜系や食事パン。そして12時に日替わりパンが焼き上がるスケジュールになっている。

惣菜パンは約15種、デニッシュなど甘いパンは20種、食事系のパンは10種。計45種を毎日ひとりで焼き上げる田淵さん。
「自分でできる限り作ったものはやっぱりおいしいんです。これからも夫婦二人、無理なくやっていける範囲でお店を続けていきたいですね。ゆくゆくは息子たちも一緒に、が夢ですね」
テイクアウトだけの小さなお店には、田淵夫妻のパンへの愛情と温もりが満ちていた。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2017年11月21日)になります。