路地裏にポツンと佇む人気ラーメン店

高田馬場駅の北を流れる神田川沿いを歩くこと5分。路地裏で2011年1月にオープンした「焼麺 劔」は、他店にはないオリジナリティあふれるラーメンが味わえると評判の店です。月曜から土曜まで11:30~21:30の通し営業なので、ちょっと遅めにランチを食べる人たちにも重宝されています。

tsurugi_02.jpg

tsurugi_03.jpg

店を切り盛りするのは、2017年から「劔」を任されている店長の浦澤雄基さん。21歳で上京し、いくつもの飲食店バイトを掛け持ちするうちにラーメン業界へと入ります。

tsurugi_04.jpg

浦澤さんが「劔」の存在を知ったのは2013年ごろのこと。「当時は『劔』もオープンしたばかりで、メディアによく出ていたんです。で、実際に食べてみたらこの味を一発で気に入りました」。その後、縁あって2016年から「劔」で働くことになり、初代店主のもとでラーメン作りを基礎から学んでいきました。

大量のジャガイモを溶かし込んだスープとカリカリ食感の麺

tsurugi_05.jpg

tsurugi_06.jpg

「劔のラーメンは唯一無二の味」と言われる理由は2つあります。ひとつは、表面をカリカリに仕上げる焼麺。茹でたての麺を熱した鉄板の上に広げ、両面がきつね色になるまでこんがりと焼き上げていきます。「当店の麺には全粒粉をたっぷりと練り込んでいます。一般的な中華麺では焼くと風味が飛んでしまうんですが、この麺は焼いたあとでも小麦の香りをガッツリ感じることができるんです」。

tsurugi_07.jpg

理由の2つめは、野菜を大量に煮込んだベジタブルポタージュ(ベジポタ)スープです。「圧力鍋に豚骨やジャガイモ、タマネギなどを入れて一気に煮込みます」。豚骨も野菜もすべて溶け込んだスープは濃厚な口当たりながら後味はあっさり。2011年、「劔」を創業するにあたり、初代店主が「ラーメン激戦区でも勝負できる一杯を作ろう」と苦心した末に生まれた焼麺×ベジポタスープ。メディア露出や口コミでそのおいしさが認知され、今では名だたるラーメン店と肩を並べるほどの人気となりました。

看板メニューを実食。香りと味の一体感が見事な出来栄え!

tsurugi_08.jpg

おすすめの一杯は、浦澤さんもまかないで食べることが多いという「目玉焼麺」(980円)。色鮮やかな目玉焼きとネギ、大きく横たわるチャーシューが目を引きます。チャーシューの向こうに顔を出している麺を引っ張り出して、まずは浦澤さんのアドバイス通りに麺をひと口。焼き目はカリッと香ばしく、噛んでいくうちに小麦の香りが広がります。中太麺を使っているので外はカリカリ、中は意外にももっちりとしていて食感も豊かです。

tsurugi_09.jpg

次に自慢のベジポタスープをひと口。野菜が溶け込んだスープはまるでヴィシソワーズのような上品な口当たりで、ジャガイモの甘味もしっかりと感じます。焼麺のちょっとビターな風味をスープがまるく包み込み、優しい余韻が残ります。ここですかさず浦澤さんから「半分くらい食べたら魚粉をかけて味変してみてください」。カツオ節とサバ節をすり鉢で混ぜてからラーメンにかけると、甘みのあるベジポタスープに魚介の香りが加わって、瞬く間に味わいが変わります。

tsurugi_10.jpg

焼麺といっしょに注文したのは「焼チャーシュー丼」(350円)。サイコロ状にカットした豚バラチャーシューを鉄板で軽く焼き、醤油ダレとマヨネーズで味を調えた人気のミニ丼です。「タレはニンニクと生姜を強めに効かせていて、ごはんがどんどん進む味付けです」と、浦澤さんも得意げな表情。

苦難を乗り越え、「劔」の第二幕が始まった

浦澤さんが入社した翌年の2017年には埼玉県に三郷店をオープン。着実にファンを増やしていった「劔」でしたが、新型コロナの流行により高田馬場本店は閉店を余儀なくされます。「街から学生さんの姿がなくなって、とたんに客数が落ちたのは大きかったですね」と当時を振り返ります。緊急事態宣言の合間をみて店を再開したのもつかの間、2021年には初代店主が逝去し、再び営業をストップさせました。

tsurugi_12.jpg

2023年夏には三郷店を閉店し、現在は高田馬場店を浦澤さんが引き継いで営業しています。「僕としてはマスターへの義理を欠きたくないっていう思いもあったんですよ。コロナが落ち着いてようやくお客さまが戻ってきてくれましたし、再び皆さまに『このラーメンおいしいね』と言ってもらえるよう、精進しているところです」。亡き師匠の意思を継ぎ、さらなる高みへ。若干32歳の若き店長は、今日も厨房でラーメンを作り続けています。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格などが変更になる場合がございます。