マンガ・アニメの聖地にオープンしたミュージアム

トキワ荘とは、1952年に椎名町(現南長崎)に建てられた2階建ての木造アパートです。このアパートの2階には、手塚治虫先生や藤子不二雄Ⓐ先生、藤子・F・不二雄先生など、昭和を代表するマンガ家たちが大勢暮らしていました。
当時のトキワ荘は1982年に解体。それから約40年の時を経て、当時のトキワ荘を忠実に再現した「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」が、2020年7月にオープンしました。トキワ荘は「マンガ・アニメの聖地」とも言われており、マンガやアニメを愛する人たちが全国各地から訪れます。

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ミュージアムの1階は、トキワ荘ゆかりのマンガ家たちの書籍が展示されている「マンガラウンジ」と企画展示室。2階はマンガ家たちが暮らしていたトキワ荘の部屋を再現しており、さまざまな角度からマンガというカルチャーに触れることができます。今回はミュージアム運営グループの小林さんに施設内を案内いただきました。

マンガ家たちが暮らしていた部屋をのぞき見

まずは2階から見て回ります。階段をのぼると「ギシッ、ギシッ」と音が鳴りました。これは当時の階段がきしむ音を再現したもので、締め切りに追われるマンガ家たちは、この音が聞こえると「編集者が来たぞ!」と慌てたのだとか。

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炊事場とトイレは共同で、お風呂なしのアパートだったトキワ荘。住人たちは近くの銭湯に通っていましたが、ときどき炊事場の流しで水浴びをする住人もいたそう。調理器具や食器などの汚れ具合も忠実に再現されています。

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また炊事場には、トキワ荘の住人たちがよく出前をとって食べていた「中華料理 松葉」のラーメン丼ぶりが展示されています。当時も使用されていた丼ぶりで、現在はこのミュージアムに展示されているものを含め、3点しか残っていない大変貴重なものだそうです。
なお、「中華料理 松葉」はミュージアムから徒歩3分の場所で現在も営業しているので、ミュージアムを見て回ったあとに寄り道してみるのもオススメです。

聞き取り調査による忠実再現と数々のエピソード

2階には四畳半一間の部屋が9部屋並んでおり、そのうちの3部屋が「再現部屋」となっています。当時住んでいたマンガ家本人からの聞き取りや写真などの資料をもとに、マンガ家たちが住んでいた部屋が再現されています。なお、マンガ家たちの作品の中にもトキワ荘がたびたび登場しますが、本ミュージアムを開館するにあたっては、そうしたマンガの一場面も貴重な参考資料になったそうです。

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20号室に住んでいたよこたとくお先生の部屋は、ご本人から直接聞いたお話をもとに再現しています。室内にはクローゼットやテレビ、火鉢、そして作業用の机が2つ。家具はどれも昭和の時代を感じさせます。テーブルの上に並んだマンガ原稿も臨場感を演出しています。

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19号室は、少女マンガの草分け的な存在とも言われている水野英子先生の部屋です。住んでいた期間は約7カ月だったため物が少ない印象ですが、床にずらりと並んだマンガ原稿が特徴的。水野先生は実際に床に原稿を並べながら作業をしていたそうです。

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18号室は、石森章太郎先生のアシスタントを務めていた山内ジョージ先生の部屋です。部屋の入り口に積まれた映画フィルムは山内先生のものではなく、石森先生の私物なのだそう。
また、畳の上には食べかけのお餅やスープが残ったラーメン丼ぶりが置かれ、当時の生活感が漂います。

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再現部屋以外の部屋では、トキワ荘周辺エリアの変遷やマンガの歴史についての展示を行っています。街の歴史を知ることで、街歩きがもっと楽しくなりそうです。
見どころのひとつは、窓に描かれた風景画。実際にこの部屋から見える景色をイメージしたものだそうです。

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マンガ・アニメ文化の発信も行っている本ミュージアム。石森章太郎先生が住んでいたという17号室では、プロのマンガ家が使う道具やマンガの描き方を紹介しています。

トキワ荘ゆかりのマンガ家たちの作品が集結!

1階のマンガラウンジでは、トキワ荘ゆかりのマンガ家たちの書籍を展示しています。実際に手に取って読むことはできませんが、壁一面に貴重なマンガがズラリと並ぶ展示は圧巻です。

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マンガラウンジには当時のトキワ荘の天井板も展示されています。
「トキワ荘が解体される前に、手塚先生自身が暮らしていた部屋の天井板を剥がし、その場でサインとイラストを描かれたものです。写真は撮影できないのですが、ぜひ見ていただきたいですね」と、小林さんイチオシの展示です。

当時のトキワ荘をそのまま移築したのではと思わせるほど再現度の高いミュージアムは、私たちを昭和の時代へとタイムスリップさせてくれます。
「トキワ荘で切磋琢磨しながら作品を生み出していった、多くのマンガ家たちの想いや暮らしを感じてほしいです」と小林さん。当時の人々の想いやエネルギーを感じることができる「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」をぜひ訪れてみてください。

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