「藤乃木」から「ふじの木」へ。豊かな歴史に抱かれた洋菓子の名店
都立家政駅の南口から徒歩1分。「パティスリー ふじの木」は、かせいチャンモニュメントのある建物を左折した細い路地にひっそりと佇んでいます。お店の手前に立つ藤の木と看板が目印です。
「パティスリー ふじの木」は1924年、店長の田中祥一さんの祖父が高円寺に「藤乃木」としてパン屋を創業したのが始まりです。野方へと移転して和菓子の販売も行うようになり、都立家政駅の前身となる「府立家政駅」にも売店をオープン。このときから洋菓子も扱い始めます。
祖父の代から父へ、そして祥一さんは三代目を受け継ぐとともに「藤乃木」を「ふじの木」と名を変え、フランス菓子に特化したお店に。かつて洋菓子工場として使用していた場所に移転して、2019年に現在のお店がオープンしました。
一番人気は「かせいチャン」モチーフのシュークリーム
「パティスリー ふじの木」の一番人気は、都立家政商店街のマスコットキャラクター「かせいチャン」をモチーフにしたシュークリーム、その名も「かせいチャンdeシュー」(300円)です。
かせいチャンは、「あしたのジョー」の名作で知られる漫画界の巨匠・ちばてつや先生が都立家政商店街のマスコットとして描いたキャラクターで、大きな頭とにょきにょきと生えた手足が特徴的。愛らしい表情で地元の人たちに愛されています。
「かせいチャンdeシュー」は、そのかせいチャンの頭の部分を模したシュークリーム。フランス製の石窯でじっくり焼き上げたクッキー生地をのせたシュー皮はサクサクの歯ごたえが魅力です。中のカスタードクリームは、高級な卵として知られるエグロワイヤルにマダガスカル産のバニラビーンズ、北海道産の生クリームをブレンドして仕上げられていてとってもなめらか。飽きのこないおいしさを追求し、甘さは控えめにしてすっきりとした味わいに。クッキーの甘みとクリームのコクの絶妙なハーモニーが人気の秘密です。
「かせいチャンdeシュー」は、中野区の食文化の頂点を競うイベント「中野の逸品グランプリ」で2014年にグランプリを受賞。2015年にはNAKANOブランドにも認定されました。
かせいチャンdeシュー」の生みの親である田中祥一さんは、生まれ育った都立家政をこよなく愛しています。「洋菓子を作るのももちろん好きなのですが、都立家政が好きだから洋菓子店を営んでいるというのが正解なんですよね。静かで落ち着いたこの町を愛しています」と、田中さんは熱く語ります。
店内で販売している焼き菓子は、中野区の歴史や自然をイメージして作られたものです。なかでもユニークなのは写真左上の「粗忽な亭主とおそっさま」(240円)。中野区の鍋屋横丁が舞台の落語の世界をモチーフにした、抹茶の香りが豊かなバターケーキです。
中央下の「桃の宴」(260円)は、桃の形をしたマドレーヌ。徳川八代将軍吉宗公が幕府の鷹狩りの場であった現在の中野駅の南に桃の木を植樹して、江戸の桃の名所として賑わっていたという歴史が題材になっています。右上の「公方様の犬屋敷」(260円)は、徳川綱吉公が将軍の時代に"お犬さま"を養育するための大きなお囲い(犬小屋)を設けたという中野の歴史をお菓子で表現しています。
焼き菓子は単品でも購入できますが、お土産にはオリジナルボックス付きの詰め合わせ「中野みやげ噺(ばなし)」がおすすめ。「中野みやげ噺」は2011年に「中野の逸品グランプリ」を受賞。2014年には中野区を代表するスイーツとして「中野区認定観光資源」にも選ばれています。6個入り、8個入り、12個入り、21個入りから選べます。
宝石のように美しい生菓子も人気!
焼き菓子だけでなく、ケーキなどの生菓子ももちろん人気です。田中さん自慢の逸品は、ヘーゼルナッツのおいしさを十二分に楽しめる「オペラノワゼット」(550円)。スポンジやクリームにヘーゼルナッツを惜しみなく用いており、オペラケーキのような美しさを兼ね備えたスイーツです。
季節のフルーツをたっぷりと使った期間限定スイーツもあります。「トロピック」(550円)は、夏を間近に控えたこの時期にぴったり。マンゴームースの上にはパイナップルやキウイフルーツが乗っていて、パッションフルーツとマンゴーをブレンドしたゼリーが中に隠れています。旬のフルーツならではのみずみずしさと酸味が楽しめます。
地元愛を感じられるケーキ屋「パティスリー ふじの木」。都立家政に訪れた際は、ぜひ立ち寄ってみてください。
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