誰かがやる前に、自分がやりたい!

ベトナムのサンドイッチ「バインミー」は、ベトナム料理やパンにとりわけ詳しくなくても、いまや一般に知られた食べ物といって差し支えないだろう。しかしたった数年前までは、その存在を知る人は日本ではまだずいぶん少なかった。木坂幸子さんはそんな2010年当時にバインミー専門店をオープンさせてしまった勝負師だ。

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いまではバインミー屋が高田馬場だけでも3店舗。専門店ではなくバインミーがメニューにある店というくくりなら、もっとある。ただしパンから自家製なのは「バインミー☆サンドイッチ」だけ。それは、木坂さんがもともとパン職人だからだ。
「小さいころからパンが大好きでした。家では母がよくお菓子をつくってくれたから、つくるのが楽しいっていうのも知っていて。いつしかパン屋さんで働きたいと思うようになったんです」。

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勉強するよりも働いて糧を得たいと、高校を辞めてパン屋に就職したというから、パンへの情熱や仕事に対する考えはそうとう強かったのだろう。 そして、将来の目標のために海外へ。カナダに語学留学したあとは、アメリカに渡ってベーグル修業をする......つもりだった。しかし、カナダでたまたま食べたバインミーとの出会いが、木坂さんを予想外の道へ導いた。

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「『なんだ、これは!?おいしすぎる!!』と衝撃を受けてしまったんです。ベーグル屋をやるつもりでいたけれど、いざ帰国したときにはベーグル屋が増えていて、時期を逃した感がありました。一方、ニューヨークでバインミーが流行りだしているっていう話を耳にしたので、それならそのうち日本でも流行るだろうという目論見もあって」。
そしてついに専門店をオープン。バインミーが何なのかをわかりやすく伝えるために、ベトナムの国旗の「☆」を、そして具材を挟んだパンだと端的に説明するため「サンドイッチ」を店名に冠した。

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開店当時はお客さまが全然来てくれずかなり苦戦したというが、だんだんと口コミが広がり、メディアにも取り上げられるようになり、そしてバインミーの潮流がついにやってきてからは、ずっと順調だ。いまや老舗として確固たる地位を築いている。

ベトナムの新しい風

日本在住の日本人である木坂さんが独学で完成させた、いわば日本的な仕上がりのバインミー。ところがいま、そのバインミーに変化が起こりつつある。ベトナム人のナムさんがスタッフに加わったからだ。 たとえば、ベトナムで現地の人が経営している寿司屋に、日本からネイティブの日本人がやってきて就職したと仮定してみてほしい。それがどれだけ店の刺激となるかは想像に難くない。

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「調味料の使い方ひとつ取っても、やっぱり違うんですよ。ものすごく勉強になってます」と木坂さん。ナムさんは労働ビザを取得して正社員として働いているが、現地の味そのままを提供するバインミー専門店を日本でオープンさせる野望を持っているのだという。
「でも『ライバルにはなりたくないから一緒にやりたい』と言われていて。手始めに、定休日にナムさんのバインミー屋として営業してもらうことを考えています。いまもマンスリーバインミーはナムさんに任せていて、すでにファンもついてるんですよ」。

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「生春巻き(1本300円)」などバインミー以外のメニューも。「なぜ生春巻き?」と尋ねると「みんな大好きでしょ?私も大好きなんです。メニューに載っていたら必ず頼んじゃう」と木坂さん。

「バインミー☆サンドイッチ」に、現地の風。木坂さんはそれを、なかなかいいんじゃないかと感じている。遠いカナダでの出会いを経て、日本で厚みと広がりを増し、いま、本場のベトナムに接近しようとしている。「バインミー☆サンドイッチ」は原点に向かって進展中なのだ。

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