江戸時代の雰囲気を残す店舗で日本酒の世界に浸る

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今回訪れた「武甲酒造」は、江戸時代中期・宝暦3年創業の造り酒屋です。お酒の販売が行われる店舗は築211年の建物で、国の有形文化財に登録されています。販売所の奥には趣のある酒造蔵などが立ち並びます。

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店舗に足を踏み入れると、格のある柱などがあり歴史を感じる雰囲気の建物。日本酒はもちろん、麹を使った食品などさまざまな商品が並びます。種類がたくさんあって迷ってしまいますが、どんなお酒が好みか、どんな飲み方をしたいのか、どんな方に贈りたいのかなどをお店の方に相談することもできます。

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今回は13代目蔵元の長谷川浩一さんにお話をうかがいました。
「『どれが一番おいしいですか?』と聞かれることがありますが、ここに並ぶものは味も香りもそれぞれ違います。それぞれの特長を知って、どんな楽しみ方がしたいのか、どんなシーンで飲むのか、それに合わせて選ぶことが日本酒をおいしく飲むポイントですね。同じ食材に合わせるにしても味付け次第で相性は変わりますし、料理ごとに日本酒も着替えて、好みを見つけていくのもお酒の醍醐味です」。

多彩な個性 日本酒のプロが醸す味わいのバリエーション

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日本酒はお米の品種、お米の磨き方、仕込みの配合など条件を変えて造り分けされ、本醸造酒・吟醸酒・純米酒などそれぞれに味と香りの個性が出てきます。今回は長谷川さんにおすすめをいくつかご紹介いただきました。
石灰岩質の武甲山伏流水で仕込まれた秩父の定番酒「武甲正宗」(本醸造)は、スッキリとしてやや辛口な味わい。冷やして、常温で、お燗でと、さまざまな楽しみ方ができるお酒です。

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「武甲正宗 大吟醸」は、全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞している銘酒で、これを目当てに来店する方も多いという人気のお酒。お米を磨き上げてつくる大吟醸は、豊かな香りが楽しめます。

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「武甲正宗 純米大吟醸」は、埼玉県のふるさと認証食品プレミアムの秩父第1号に選ばれたオール秩父産の日本酒です。秩父産の特別栽培米認定の酒造好適米を使い、華やかな香りと米の旨味を活かした芳醇なコクが特長です。

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日本酒で仕込んだリキュール「秩父うめ酒」と「秩父ゆず酒」は、女性に人気のお酒です。武甲正宗をベースに、さらっとした口当たりに濃厚な果実の味わいが凝縮され、ロックやお湯割りなど、いろいろな飲み方が楽しめます。

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冬の「しぼりたて(本醸造生酒)」や夏の「秩父冷酒」、秋の「ひやおろし」など、その季節にしか出せないお酒が楽しめるのも造り酒屋ならでは。取材にうかがった7月下旬は、氷温熟成させた「純米生冷酒」やアルコール度数高めの無濾過原酒「のんべぇ」などが店頭に並んでいました。ちなみに「のんべぇ」とは秩父弁で「今晩も楽しく飲みましょう」と誘う意味の言葉なのだそう。

もっと日本酒が知りたい! お酒造りに触れる酒蔵見学

「武甲酒造」では、10名以上の事前予約制で酒蔵見学も行っています。今回はお店の奥にある施設を特別に見せていただきました。

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建物の中には、酒造りに欠かせない仕込み井戸があります。武甲正宗の主要な原料となる仕込み水(醸造用水)は、平成の名水百選に選ばれた武甲山の伏流水。ミネラルをたっぷり含んでいるのが特徴です。入れ物を持参すれば仕込み水を汲んで持ち帰ることもできます。

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内井戸の隣には1,000kg以上のお米が炊ける大釜が鎮座していました。
「酒造りを行うのは秋に新米が穫れてから春までの寒い時期です。一日の中で一番気温の低い日の出前の時間に、炊きあがった熱々のお米を外の冷気で冷ますんですよ。冬の早朝が酒屋の時間です」と長谷川さんが教えてくれました。

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内井戸のある作業場の隣には仕込蔵や貯蔵庫が並びます。入口にしめ縄が飾られた仕込蔵はどこか神聖な雰囲気。お酒のもとになる酒母や出荷に向け貯蔵されるお酒が、出番のときを静かに待っていました。

「私たちのお酒はすべて手作り。温度・湿度を気にして、微生物を管理していくわけだから、手は抜けませんし、その優しさや細やかさもお酒の味わいになっていると思います。常に最高の仕上がりをめざしています」と長谷川さん。

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酒蔵見学の最後に行っている「きき酒体験」を、今回は特別に体験させていただきました。季節限定のお酒も含めて12種類が試飲できます。
「アルコール度数の低いものから唎酒をすると、味の違いがわかりやすいですよ」と長谷川さん。軽めのものから、度数の強いもの、華やかな香りのものなど、カップを傾けるたびに出会う香りと味に、日本酒の世界が広がります。

「軽めのタイプは淡白な料理と相性がいいですね。無濾過原酒のような濃いお酒は脂っこい料理や香辛料の効いた料理に合いますし、炭酸で割って日本酒のハイボールにするといった飲み方も若い方に人気があります。お酒はおいしい料理と楽しい会話の仲人のようなもの。お酒を選ぶ目を持って楽しんでください」と長谷川さんは話します。
秩父を訪れた際は「武甲酒造」で、あなたらしい日本酒の楽しみ方を見つけてはいかがでしょうか。

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