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練馬の伝統工芸「江戸筆」づくりを体験したい!

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東京都の伝統工芸品にも指定されている「江戸筆」。一本の筆を作り上げるまでにはいくつもの工程をマスターする必要があり、それぞれの作業には繊細な技術が必要とされるため、一人前の職人になるまで18年もかかるのだそう。練馬区にある「筆工房 亀井」は創業から130年近く、五代に渡って江戸筆を作り続けている数少ない工房の一つです。工房では通常、筆づくり体験は行っていないのですが、今回は特別に手ほどきが受けられることに。不器用な僕でもできるのか……ドキドキしながらスタートです!  

意外と知らない筆の起源。そして「江戸筆」の特長とは?

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まずは「筆工房 亀井」の代表である四代目・亀井正文さんに、筆の起源について伺いました。 亀井さん「紀元前の中国で発祥した筆は7世紀頃になると、墨や硯(すずり)などの道具と一緒に日本に持ち込まれるようになりました。また、筆づくりの技術を日本に広めたのは当時、中国に渡っていた空海(弘法大師)だと言われています」 当時、文字を書くことは公家や侍など、位の高い人たちに限られていたのですが、江戸中期に入ると、寺子屋を中心に読み書きそろばんが普及し、看板の文字や帳簿を書くために広く筆が使われるようになりました。ちなみに、今も昔も筆は、毛の部分を2/3ほどを揉みほぐして使う「固め筆」と、毛の根本まで使う「さばき筆」の2種類に分けることができ、江戸筆は後者にあたります。中国から伝わった「固め筆」は、使うたびに墨を洗い流さないと墨が固まり、毛の根本が崩れて文字が書きづらくなってしまうのだそう。しかし、常に筆を持ち歩いて仕事をする商人にとっては、毎回筆を洗うなんて不可能。そこで、根本まで崩れても毛先がまとまる江戸筆が誕生したのです。 亀井さん「うちで作っている江戸筆は、ほとんどがオーダーメイドです。お客さんの求める“書”、技術や好みなどによって、筆の太さや毛の配合が変わります。細かく分けると、千種類近い筆を作っています」

 

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ときには書道家の要望で、わざとかすれる筆をつくることもあるようです。 亀井さん「この“盛”という字は、線の中心がかすれているでしょう? これは“究極のかすれ”と呼ばれているんです。線の全体がかすれちゃうよりも、かっこいいですよね」 お客さんからの細かな要望にも応える亀井さんですが、実は、筆の80%しか作れないと言います。残りの20%は、書き手が使いながら育てていくのだそう。良い筆は何年も使い続けることで、書き手のスタイルに馴染んでいくようです。

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工房では「山羊毛(さんようもう)」と呼ばれる羊や馬の毛をはじめ、イタチ、ミンク、たぬきなど、さまざまな動物の毛が保管されています。筆の種類によっても異なりますが、6,7種類の毛を配合して作ることが多いのだそう。また、学校の習字などで使う安価な筆はナイロン製の毛が一般的ですが、文字のトメハネや線を引いたときの墨の伸び具合などは獣毛の方が遥かに優れていると亀井さんは言います。  

超過酷!? 手先の繊細さが要求される江戸筆づくり

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一握りの毛束を用意し、いよいよ江戸筆づくり体験がスタート! これが筆の形になるなんて、まだ想像もつきません。通常、江戸筆の制作は、毛の選別から完成までの一切を一人の職人さんが行うのだそう。今回は、毛の「選別」や、毛から油を抜くための「煮沸」、毛筋を伸ばすための「火のし」などの下処理を終えたあとの工程から体験させてもらえることに。最終的に筆はさまざまな動物の毛を混ぜ合わせて作られるのですが、まずは羊の毛を使って作業を進めます。

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まず最初に教わったのは、毛束の持ち方から。毛が折れ曲がらないよう親指と人差し指で挟むだけなのですが、ずれないように2本の指でしっかりと押さえなければいけません。

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次の工程は「毛揃え」という作業。筆の先端部分にあたる毛「命毛(いのちげ)」に使う毛束の中から曲がっていたり途中で切れている毛を選別し、取り除いていきます。このとき、毛束を持つ手に湿り気があると、せっかく延ばした毛が曲がってしまうのだそう。慣れない作業に緊張したせいか、僕が握っている毛束は手汗でくっついてしまったのですが、驚くことに亀井さんは手に汗をかかないのだそう! 熟練した職人は汗もコントロールできるようです。そして、筆をつくる基本姿勢はあぐら。 「お相撲さんの股割りと一緒で、3年くらい

たたないと股関節が開かないんだよ」と亀井さん。

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毛束を両手で挟み、膝の上に置いた板にトントンと当てることで、毛先を揃えます。膝が斜めに上がっていると、板に均一に当てるのも一苦労……。

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ある程度不揃いな毛が揃ったら、寄せ金というトレイのような道具に毛束を移して、さらに続けます。手板と寄せ金をカンカンと当てながら、スナップを効かせて手首を上下に動かします。こうすることでさらに毛先が揃い、曲がったり、途中で切れたりしている“悪い毛”も上に出てきます。炒飯を炒めるように軽やかに毛を浮かす亀井さんに対し、なかなか両手のリズムが合わない僕……(当然ですが)。

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毛先が揃ったところで、次の工程に。「さらい」という作業では、小刀で悪い毛を一本一本抜き取ります。「『抜いてください』って悪い毛が光るんですけど、わかります?」と亀井さん。いやいや、僕には全然わかりません……! ここまでの作業を終えると、最初に掴んでいた毛の7割程度しか残らないのだそう。亀井さんの仕事時間は9時から18時半までを基本としているのですが、作業工程によっては日付が変わるころまで続けることもあるのだそう。細かい作業が多いので、目を休め、集中力を取り戻すために、なるべく2時間の休憩をとっているとのこと。  

さまざまな毛を均一に混ぜ、“穂首”をつくる!

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続いては「型造り」という作業に。選りすぐった毛だけになった毛束に異なる種類の毛を組み合わせます。筆の書き心地が決まる大事な作業とのことで、「型造り」だけは亀井さんにやっていただくことに。ちなみに、1束(上の写真)で一般的なサイズの筆が16本できるのだそう。

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型造り」でひとつにまとめた束から筆6本分の毛を取り出し、平たく広げて準備OK。合わせた毛を均一になるまで混ぜる「練りまぜ」という作業にトライします! 毛がバラバラにならないように水で濡らし、毛先をクシでよくとかしたら、毛束をガラス板の上に広げます。

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ここからいよいよ毛を混ぜる作業に。ハンサシを使って毛を押し広げては端から折りたたむという作業を5~6回ほど繰り返します。広げるときに薄く均一にすることで毛がよく混ざるのだそう。作業は片手しか使わないので一見簡単そうに見えますが、これがなかなか難しい!! 微妙な力加減で小刻みに押したり引いたりするのがコツなのだそうです。

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混ぜた毛をひとつにまとめ、悪い毛を取り除く「さらい」を再び行います。ハンサシを使い、少しづつ丁寧に抜いていきます。

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毛束から筆一本分の毛を取り出し、 “コマ”と呼ばれる輪に差し込む「芯立て」と呼ばれる作業を終えたら筆の芯が完成。ここでようやく見慣れた筆のかたちに! しかし、完成まではまだまだ。ここでまた、穂首に残っている悪い毛をハンサシでひたすら取り除くのです……!

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続いて「上毛掛け」という作業では、あらかじめ亀井さんに用意してもらっていた上毛(うわげ)という化粧毛をハンサシで薄く延ばし、クルクルと巻いていくのですが、うまくできずにここでも苦戦。

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次の工程の「尾締め」に移る際、亀井さんが不思議な器具を首に装着しました。実はこれ、針金ハンガーと釣り具で作ったオリジナルの道具なのだそう。あるとき突然、夢に見てひらめいたのだとか!

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この作業では、先ほど作った穂首の根元に麻糸を巻き付けてギュッと締め上げるのですが、かつての職人さんは糸の片側を口にくわえながら行っていたのだとか(上の写真は、亀井さんが再現してくれたところ)。その方法ではあごに相当な力が加わり、歯をだめにしてしまう人も多かったと言います。亀井さんは左手で何回も穂首を回し、ギリギリと締め上げていましたが、僕の力では1回も回りません!

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この後、コテを使って毛の根元を焼きつけ、さらにきつく締めます。まっ赤に熱せられた焼きゴテは軽く当てるだけで瞬く間に毛が焼けるのでものすごく怖い! 毛を握っている左手にもビリビリと熱を感じます。 「こういう工程一つでも失敗すれば、今までやってきたことが水の泡なんだよ」という亀井さんの言葉にもヒヤリ……。

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ついにラストの工程、竹でできた軸を取り付けたら、穂首をまっすぐに整える「仕上げ」に突入! 穂先にフノリをつけたら、麻糸一周巻きつけ、軸をくるくると回転させながら筆を抜いていきます。簡単そうに見えたのですが、やってみると少しの力で筆先ぐにゃりと曲がってしまいます。この絶妙な力加減、一朝一夕では身につかないなと痛感。

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悪戦苦闘している様子を見かねて、亀井さんがまっすぐに仕上げてくれました。その間、わずか5秒! 思わず見とれてしまうほど鮮やかな職人技です。色々な工程を体験したものの、結局、1つもまともにできなかった僕に対して「見どころがあるよ!」とフォローの言葉をかけてくれる亀井さん。その真意を尋ねると、器用な人なスイスイとこなすけれど、壁にぶつかったときに挫折してしまいがちなのだそう。それに比べて不器用な人は、ひとつひとつの壁を乗り越えるなかで忍耐力や工夫が身につくので上達する人が多いのだとか。……それってフォローになってるの!?  

日本文化として世界に注目される「江戸筆」

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完成した筆は毛先から根本までが柔らかく、しなやかに曲がります。トメやハネ、ハライでは意識しなくても筆先がきれいにまとまってくれるのには驚きました。筆なんて滅多に握らない僕ですが、スルスルと滑るような書き味が楽しくてクセになりそうです。

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今回体験させていただいたのは全体のほんの一部だけでしたが、江戸筆づくりがいかに大変か、身を持って実感しました。現在「筆工房 亀井」は、ご自宅の一室で亀井さんと五代目の息子さん、奥様と3人で営んでいます。「筆屋の良さって、家の中に仕事が常にあるところ。幼い頃から私の仕事を見てきた息子は、弟子入りして18年経って8~9割の仕事ができるようになりました。一人前になるまでに時間はかかるし、独立するのも大変ですけど、70〜80歳までできる。決して悪い仕事じゃないと思うんです」。 最近は中国やヨーロッパの方からのオーダーも多いそうで、「2020年のオリンピックに向けて日本の伝統を伝えていきたい」と語る亀井さん。日頃からもっと筆と親しんで、日本の文化を大切にしていきたいですね。 ※通常「筆工房 亀井」では、一般の方の体験は行っていません

 

伝統工芸「江戸筆」の体験のようすはこちら  

 

スポット名 筆工房 亀井
TEL 03-3996-5046
住所 東京都練馬区石神井町5-14-2
URL http://www.edofude.co.jp/
東京都練馬区石神井町5-14-2

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