- 井荻駅
- グラン モンターニュ
先生がつくる昔ながらのパン「グラン モンターニュ」
「グラン モンターニュ」は西武新宿線「井荻駅」から環八沿いを南下してすぐ。オープンして8年、ずっと以前からここにあるように、風景に馴染んでいる。
春には窓いっぱいに桜色が
大山昇男さんは毎朝5時の電車でこの店へ出勤してくる。10坪ほどの小さな店だが、このサイズこそが大山さんが店を構えた理由だ。

「ポスターも、店内にかかっている画も、細かいところはすべて知り合いが手伝ってくれます」
「いろんなところを探して歩いたんですが、小さい物件がなかなかなくて。ここはサイズがちょうどよくて、店の前に電信柱など視界をさえぎるものが何もなかったものですから、駅からどのくらいの距離かも知らないまま、すぐに決めてしまいました」。

いちばん人気は手前の「クリームパン(151円)」と「焼きカレーパン/辛口、甘口(162円)」。後ろの山型の「ふすまパン(110円)」は、ふすまくささを感じない滋味深い味わいなうえに繊維質もとれる自信作
店を構えたあとにわかったのは、目の前にある木が桜だったこと。店先に置いた3脚の椅子は「飲み物の自販機も近くにありますので、お客さまが桜を見ながらパンを食べられればいいかなと思って」という粋な計らいだ。「そんなに大きい木ではないんですが、店内から見ると桜が窓いっぱいになるんです」と大山さん。
教えていたパンと、つくって売るパン
店の佇まいが懐かしく感じるのはパンのラインナップによるところが大きい。大山さんの前職は製菓専門学校の講師で、洋菓子や今時な洒落たパンのつくり方も学校では教えていたが、自身の店でつくるパンはアンパンやクリームパンなど、いわゆる昔ながらのパンだ。というのも「今65歳ですが、私が小さい頃から慣れ親しんできたようなパンをつくりたかった」から。

店先のポスターと同じ作者によるパンの紹介ポスターが店内に
パン屋を開店したのは、生徒たちに教えていたことを実際に商売としてやってみせるのが目的だったという。つまり、現場での実践だ。

取材時は夕方だったため、追加で焼いた分もあらかた売れてしまっていた
学校で教えていたのはパンのつくり方だけではなかった。商品構成表や作業工程表、それらに基づいた原価計算に、資金繰りの立て方まで。「実際のところ、自分は今そういうことは全然やってません(笑)。店に遊びにくる教え子がまた、“先生は原価計算の鬼だった”なんて、かみさんに告げ口するんですよ(笑)」。

ケーキやタルトがまるで洋菓子屋さんのような出で立ち
たくさんの仲間に支えられて
滑舌がよく声も通るのは、さすが元先生。店名を考えてくれたのは長年の友人、ポスターを描いてくれたのも、ウィンドウに飾られている折り紙も、長年の知人の作品。取材時に働いていたパートさんは20年来の奥さんの歌の仲間だそうだ。

小さな子どもが目ざとく見つけて興味をもつと、

差し上げましょうか、と大山さんが折り紙と一緒につくり方を書いた紙も手渡していた
「あと10年は続けたいので」、今年から休みを1日増やして、週休2日に。「でも、お客さまはこれまでどおりご来店くださいます。ありがたいことです」。大山さんのたくさんの教え子、友人、知人に支えられて、ぜひとも長く、続けてほしい。

グラン=大きい、モンターニュ=山。店名は大山さんのお名前から
※価格はすべて税込
取材日:2017年1月13日
取材・文:野村美丘(photopicnic)
店舗情報
店名 | グラン モンターニュ |
住所 | 杉並区上井草1-23-24 サカエハイツ1F |
電話番号 | 03-6914-1619 |
営業時間 | 9:00~19:00 |
定休日 | 火曜日、日曜日 |
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