LINEで送るお客さまの満足を考え、安心・安全のケーキを届ける
２階建てのお店は１階手前が販売スペースで、１階奥と２階がケーキ作りの工房になっています。取材当日は、平日の開店直後であるにも関わらず、ひっきりなしにお客さまが来ていました。トップシーズンともなると、店内スタッフが30名を超えるほど大忙しなのだそう。
今回お話を聞いたのは、代表の高橋秀世さんとマネージャーの中村茉央さんです。
高橋さんがお店を始めたのは1989年のこと。当時は入間市にある小さなテナントで営業していましたが、1998年に現在の所沢市に移転しました。「自然が多く、駅や公共施設が集中しているといったロケーションの良さが気に入っています」と高橋さん。
高橋さんがお店づくりで大切にしていることは、"人にやさしく"。添加物や保存料などは使用せず、安心・安全な食材を選ぶだけでなく、お店の雰囲気や接客、価格なども含めて、総合的にお客さまに満足してもらいたいと考えています。レジ上の小さな黒板に、その日ケーキに使用しているフルーツの産地を掲示したり、２階の厨房でケーキを製造している様子を１階のモニターで中継したりと、店内の随所に工夫が見られます。
こだわり素材のケーキを１年中楽しむ
店内には約20～30種のケーキがずらりと並んでいます。「季節ごとに登場する新商品も多いので、１年中楽しんでもらえると思います」とマネージャーの中村さん。夏は桃やマンゴーをたっぷり使ったケーキ、バレンタインシーズンはチョコレートを使ったケーキなど、季節感を感じられる商品が店内を彩ります。
今回は定番のケーキを３種類ご紹介いただきました。
定番人気の「フレーズ」（453円）は、厳選した生クリームとイチゴを使ったショートケーキ。スポンジ部分にはイチゴ味のシロップがかかっており、イチゴの風味をしっかりと感じられます。
「和栗のモンブラン」（453円）は、「フレーズ」と並んでファンの多い人気商品。さくさく食感のシュクセ（メレンゲを焼いたもの）を土台に、まるごと一個の和栗と生クリームを乗せ、その上に栗のペーストがたっぷりかかっています。栗のやさしい甘さと濃厚な風味を感じられる一品です。
「ナポレオン」（399円）は、横ではなく縦にパイ生地を立てて重ねた、ちょっとめずらしいミルフィーユ。バタークリームとカスタードクリームを合わせた濃厚なクリームが特徴です。パイ生地にはほんのりとした塩気があり、クリームの甘さを引き立ててくれます。上に乗ったイチゴの酸味がちょうどいいアクセントに。
ケーキのほかに注目すべきは、多いときには１日500個売れることもあるという「石窯秀（いしがまシュー）」（162円）。カスタードクリームと生クリームを合わせた濃厚なクリームと、さくさくのクッキー生地を乗せたシューが特徴です。
「クリームを入れたままにしておくと生地がしっとりしてしまうので、食感を最大限に楽しんでいただくために、注文を受けてからひとつひとつクリームを入れています」と中村さん。「エミール」の真摯なこだわりがここにも垣間見えます。
ギフトにぴったりの焼き菓子。地元素材を使った商品も
店内には生菓子だけでなく、約60種の焼き菓子も並びます。洋菓子は個包装になっていて、ちょっとしたおやつにぴったり。複数の種類がセットになったギフトボックスも販売しているので、贈り物にも人気なのだそう。
「所沢ブランド特産品」に認定された「トコろんのおやつ」（194円）も看板商品のひとつ。所沢産のほうれん草と里芋を使用したマドレーヌ風の焼き菓子です。
「所沢に移転して10年ほど経ったとき、商工会議所から『所沢の特産品を使ったお菓子を企画できないか』というお話をいただきました。そこで生まれたのが『トコろんのおやつ』です。生地にほうれん草のパウダーを、中の白あんには里芋のペーストを使用しています」と高橋さん。抹茶のような風味はさわやかな味わいで、野菜嫌いなお子さまでも食べられます。
支えてもらった所沢で、お菓子づくりを追求していきたい
高橋さんが最初に出したお店は人通りの少ない立地でしたが、「おいしいものを作ってさえいれば、お客さまは来てくれる」と考えていたのだそう。しかし、味だけで勝負してもなかなか客足は伸びません。もっと多くの人にケーキを届けるにはどうすればいいか考えた結果、複数の駅に囲まれた現在の場所に移転してきました。
移転を機に、「ただおいしいだけではなく、お客さまのことを考えて作ろう」と考えるようになった高橋さん。ケーキの見た目や価格などを工夫していくうちに、徐々にお客さまが増えていったのだそう。
「できるだけわかりやすく、お買い求めやすい店づくりをしたい。そして、思いやりのあるお菓子づくりを続けていきたいですね」と高橋さんは話します。
「エミール」の現在はというと、客足が少なかったころが想像つかないほどの人気ぶり。「２号店は出さないのですか？」と聞いてみると、次のように答えてくださいました。
「まだまだですね。今まで支えてきてもらった地域とケーキ作りの原点を大切にしながら、この場所でお菓子づくりを追求していきたいです」。
お客さまと地域のことを思う気持ちが、"人にやさしい"お菓子づくりを所沢で続ける理由になっているようです。
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