熱気球イベントを主催している団体「AirB」って?
イベントを運営しているのは東村山に事務所を持つNPO法人「熱気球運営機構 AirB(エアビー)」。代表の町田耕造さんは早くから気球に携わり、イベントや大会を企画してきたスペシャリストです。
1978年に日本初の熱気球専門会社を設立し、1989年には佐賀県にて熱気球世界選手権の日本初開催を誘致。現在は日本最大の気球イベント『佐賀バルーンフェスタ』として、全国から多くの出場者、観客を集める競技会になりました。
2002年から、熱気球体験を通してもっと笑顔を増やしたいという基本理念のもとに「AirB」を立ち上げ活動を開始。
全国での熱気球搭乗体験やこども達を対象とした熱気球教室から、『熱気球ホンダグランプリ』など本格的な大会も運営。多くの人がボランティアとして参加して、気球の楽しさを広めているそうです。
今回、お話を伺ったのは代表のご子息で、自身も気球のライセンスを持つ町田翔吾さん。航空公園のイベントや熱気球の魅力などについて教えていただきました。
「早起きしてふわり熱気球体験」とは?
航空記念公園では3〜12月、毎月1回「早起きしてふわり熱気球体験」を開催しています。
編集部「イベントを航空記念公園で行うようになったきっかけは?」
町田さん「もともと、首都圏で定期的な搭乗体験を実施しているところがなく、定期イベントの開催を検討していました。航空公園の広さは魅力でしたし、"日本の航空発祥の地"であること、自宅が所沢に近く、なじみがあったこともあり、航空公園が候補にあがりました。その後、航空記念公園さんからの後援を得られたので、定期的に開催することになったんです」
ちなみに体験の開始は朝の7時から。編集部が集合した6時の時点で、すでにたくさんの人が並んでいました。
編集部「たくさんの人が集まっていますね」
町田さん「今日も早い方は4時45分に来られたそうです。いつも早くから待っていてくださる方がこんなにいるというのは嬉しいですね」
ただ、熱気球はとてもデリケート。風で木々がそよぐ程度(風速3m/時)でも気球を飛ばすことはできないそうです。
編集部「気球が飛ぶ条件って厳しいんですね」
町田さん「地上であまり風を感じなくても、上空では体感より大きく動いているんです。イベントは安全第一なので、せっかく集まっていただいても、当日の判断で中止になってしまうこともあります。ただ、その場合にも気球を膨らませるデモンストレーションをお見せしたり、バスケットに乗って写真を撮ったりと、少しでも熱気球を楽しんでいただけるようにしています」
編集部「多い時はどのくらいの人が乗れるのでしょう?」
町田さん「一番多いのは夏休みですね。多い時には気球を2機用意しますが、これまで1日に最大350名が体験されました。それでも公園の利用時間に限りがあるので、最後はお断りしてしまったのですが......」
バスケットには乗員の体重合計が300〜350kgまで、パイロット1名を含め4〜5名が一緒に乗れる計算です。ちなみに気球自体は全部で約300kgあるそう。合計600kg以上もある物体がふわりと優雅に空を飛ぶってすごい!
町田さん「気球の魅力は小さなお子さんから体の大きなお相撲さんまで(笑)、老若男女を問わず誰にでも楽しんでいただけること。そして、もう一つは家族一緒に楽しめて、コミュニケーションツールの一つになることなんですよ」
確かに朝早くから公園に出かけること自体が家族にとっての大イベント。順番待ちでワクワクした気持ちを共有することも楽しそうですね。
編集部「搭乗体験から、実際に気球が趣味になった人もいるのでは?」
町田さん「実は、搭乗体験に来ていた方で、現在一緒に活動してくださっている女性がいるんですよ。その方は、全国のイベントにもボランティアとして参加してくれています」
イベントを通して、気球の魅力は確実に広がっているようです。
気球の準備の様子を密着!
それでは、気球を準備する様子を見ていきます。
こちらは、籐(トウ)のカゴでできた「バスケット」と呼ばれるゴンドラ部分。ここに人が乗ります。
家庭にある籐の家具にも似た質感です。地面に降りる時の衝撃を吸収してくれるしなやかさが必要なので、籐が最適なのだとか。
燃料はボンベに充填したプロパンガス。1本で約20〜30分の飛行が可能だそうです。
こちらは燃料を燃やして、浮力を作るためのバーナー。家庭用ガスレンジの1000倍以上の火力があるのだそう!
バルーン部分は「球皮」といいます。触ってみると意外と薄い! 軽くて熱に強いナイロン製です。ちなみに軽いといっても球皮だけで重量は100kgになるそうですよ。
4〜5名のスタッフが協力して、球皮を広げていきます。これだけ大きいと広げるだけでもひと苦労ですね。
球皮は高さ約25m。学校のプールがすっぽりと入ってしまうほどの大きさなんですね!
こちらは「インフレーター」と呼ばれる大きな扇風機。これで風を送り、気球を膨らませます。
インフレーターを作動すると、球皮に風が送り込まれます。みるみる膨らんでいく様子は、まるで巨大生物のよう。
ちなみにこれは気球の天井部分。実は球皮の上部分には穴が空いているんです。これじゃ、気球が落っこちそう!?
実は、球皮の上には「パラシュートリップパネル」と呼ばれる「ふた」のようなものがきちんとあり、着脱可能になっています。下降する時にはこの部分を開き熱気を逃がすことで着陸できる仕組みなのだとか。
いよいよ気球に搭乗!
ある程度球皮が膨らんだところでガスバーナーを使用し、熱気を入れていきます。熱気で膨らみながら徐々に空に向かって気球全体が立ち上がっていく様子を見た観客からは、「おぉ~!!」という歓声が上がりました。
球皮部分がまっすぐになり、いよいよ搭乗します。
フワッと浮いたと思ったら、あっと言う間に15メートルほどの高さになっていました。風によって浮遊していることもあれば、風がなく安定してる時は空中でピッタリと止まっていることもあり、不思議な感覚。
ゴンドラ内はバーナーの炎が近くてあたたかいですが、そんなことも忘れてしまうくらいの景色が体験できました。
所沢航空記念公園では3月~12月までの間、月に1回、熱気球係留体験搭乗会を開催しています。独特の浮遊感と、上空360度のパノラマの風景を、ちょっと早起きして、家族一緒に特別な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
※本記事は、2016年5月8日(日)と2016年6月12日(日)の両日を取材した内容をまとめております。