小手指の街で感じるフランスの空気

小手指といえば、所沢市の中でも近年とくに都心のベッドタウンとして注目されている地域。都心へのアクセスが良く、若いファミリー層に人気で、自然も多く子育てにちょうど良い環境だ。そんな住宅街の中に、ひときわ目をひく店がある。遠くからでも目に留まるほどの鮮やかな黄色は、付近を通ったことがある人なら記憶に残っているのではないだろうか。

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2011年10月にオープンしたという「パティスリー デコレ」は、上質なフランス菓子を扱う洋菓子店。店外だけではなく、店内もまるでフランスの個人商店に訪れたかのようなお洒落な雰囲気が漂う。
生まれも育ちも所沢というシェフパティシエの粕谷武彦さんいわく、コンセプトは「フランス好きがやっている街のケーキ屋さん」。フランス菓子専門店のような堅苦しさは排除し、あくまでフランスに憧れる地元のお店、といった空間にしたかったそうだ。

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11月から店内はクリスマス仕様に。イートインスペースではおいしいコーヒーとケーキを味わえる。

本場のケーキの味が低価格で味わえる

店内に並ぶケーキはどれも見た目から食欲をそそられるものばかりだが、その中にショートケーキが見当たらない。シェフパティシエの粕谷さんに訊いてみると、日本発祥であるショートケーキは敢えて置かず、代わりにイチゴとカスタードクレームのフレジェというケーキをおすすめしているそう。店のコンセプトの通り、本場フランスを意識したケーキを提供したいという粕谷さんのこだわりだ。

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気さくでお話好きな、シェフパティシエの粕谷武彦さん。

生地やクリームには香料を一切使わず、素材の味を活かす研究を重ねている。 大きさも、デザートを食事の一環と捉えるフランスならではのやや大きめサイズで統一。 もちろんコストは掛かってしまうが、それでも一般的な価格帯である税込400円台~500円で抑えられるように努力しているそうだ。

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モンブラン(500円)。フランス産の栗を使用したマロンクリームと、その下には砂糖ひかえめのシャンティという生クリームを泡立てたものがふんだんに詰まっている。土台にはカラメル風味の焼いたメレンゲが敷かれていて、全体的に甘さ控えめの大人っぽい味。

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フロマージュフランボア(470円)。三層構造のトップはラズベリーのムースで、真ん中がフロマージュ・ブランというちょっと濃いめのヨーグルトのようなチーズ、一番下はアーモンドの生地。フランス菓子の定番を詰め込んだ甘酸っぱいケーキ。

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左:レアチーズ(420円)。なめらかなレアチーズクリームの中央にはフルーツが入っていて、パッションフルーツやレモンクリームなど、季節ごとに変わっていく。取材時は洋ナシ。また、クリームには天然のバニラビーンズを使用している。

右:カシスヨーグルト(420円)。酸味のあるケーキ。秋らしい紫はショーケースを華やか見せてくれる。

洋食から洋菓子まで網羅したシェフだからこそ生み出せる発想

シェフパティシエの粕谷さんは面白い経歴の持ち主だ。最初は洋食のコックとして都内近郊のホテルで働き、その後洋菓子部門へ異動。数年修行した後、洋食と洋菓子の技術と知識を活かすべくデザイン会社のフード部門へ転職、大手ブランドのレセプションパーティーなどのケータリングを担当していたそうだ。

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ケータリングの仕事では、フィンガーフードと呼ばれる一口サイズのオードブルなども手掛けていたそうで、そういった経験から培われたデザイン性や甘味と塩味のバランスなどが今の洋菓子作りに活かされているという。

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焼き菓子コーナーには、クッキーやマドレーヌと並んでアンチョビとハーブの入った塩味のサブレが置かれている。サブレ アンショワ(520円)という塩味のサブレは、アンチョビとハーブの豊かな香りが贅沢な人気商品。ほかには、キノコを使った焼き菓子が並ぶことも。手土産用のセットにする際、こういった塩味のものがひとつ入っていると喜ばれるそう。このお菓子だけを買いに来るリピーターも多いのだとか。

地元の人たちにフランス菓子の魅力を知ってほしい

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売り上げNo.1のフルーツタルト(470円)。タルト生地には香料を一切使用していないピスタチオとアーモンドが練りこまれ、さらにフレッシュフルーツが乗ってこの価格はかなりお得。

銀座や表参道の洋菓子店は敷居が高く、なんとなく店に入りづらい、手に取りづらい空気がするもの。 それが、自分が住んでいる近所にある店だったらどうだろうか。素材もしっかり厳選されているのでこどもが食べるものとしても安心だ。そんなふうに地域に寄り添った店であることで、より多くの人にフランス菓子のおいしさを知ってほしい。それが「パティスリー デコレ」の意義であり、粕谷さんの願いでもある。
本場フランスの風を感じられる地域密着型の洋菓子店。前から気になっていた人も、今まで知らなかったという人もぜひ一度訪れてみてはいかがだろうか。

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左:ピスタチオ ルージュ(15cm 4,000円)右:ブッシュドノエル ショコラ アールグレイ(12cm 3,000円、18cm 4,000円) そのほか、苺のクリスマスケーキ、マロン ショコラ キャラメル、シュトーレン、プティガトー等。クリスマスケーキにはお酒を使用していないので、こどもがいる家庭でも安心。クリスマスケーキの予約は、お店にお問い合わせください。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2019年11月3日)のものです。