シンプルな材料で、毎朝足ふみで作るうどん

とにかく人気店で、オープンの11時と同時にお客さまがやってくる。男性のひとり客が多いが、休日には家族連れも多い。提供メニューはうどんのみで、季節のメニューもいっさいなし。うどんが売り切れ次第お店は閉まり、平日は13時ごろ、休日は13時半ごろには閉店することが多いという。うどんはお持ち帰りも可能。取材時には、ちょうどお昼前ということもあり、近所の方が6人分のお持ち帰りを購入していった。

20170918_110326-e1506690144960.jpg

20170918_110342-e1507080008676.jpg

一番人気のつけ麺うどん「肉汁天付3L」(750円)。うどんのつけ合わせは、ネギ、おろしショウガ、ワサビ。ほんのりと色のついたうどんは、口に含むと小麦と塩の味がしっかりと広がる。歯ごたえ十分で、噛むのが楽しくなるほどだ。豚肉の旨みがしみ込んだ温かいつけ汁とカリカリの大きなかき揚げ天ぷらで、つるっと食べられるのに十分満腹になる。

うどんは毎朝、足ふみでつくり上げる昔ながらの製法で、オープン当初から変わらない。材料も小麦粉と塩と水だけとシンプルだ。うどんのサイズは「L(3玉)」~「5L(7玉)」から選べる。男性客だと「4L(6玉)」を注文していく人が多く、また1玉90円で替え玉の追加も可能だ。

お母さんたちが切り盛りする、昔ながらのホッとする店内

20170914_083708-e1506688713539.jpg

店主は、73歳になる五十嵐菊江さん。一緒に働く4人の女性たちは昔から一緒に働く仲間だ。テキパキと息の合った役割分担で、注文が入ってから食事が提供されるまでの流れが鮮やかだ。店内をぐるっと見回すと、旅行先で買ったという徳川家康の「人生訓」ポスターが壁に貼られていると思えば、招き猫や信楽焼のたぬきの置物など縁起物もたくさん飾られている。まるで田舎の親戚の家に遊びに来たかのような、居心地の良い空間が広がっている。

20170914_084036-e1506689805205.jpg

お店を始めて43年。最初は五十嵐さんがお母さんと2人で始めたのだという。今ではふたりの息子さんもうどん屋を営み、長男が所沢駅で「涼太郎」、次男が東村山駅で「きくや 諏訪町店」を営んでいる。ネットや雑誌での取材も多く、名古屋など遠方からわざわざ来る人もいるという。

20170914_083849-e1506689916477.jpg

質問に答えながらも、テキパキと働く五十嵐さんの背中が頼もしい。
「今のところね、体が壊れない限り、働き続けようと思ってます」という五十嵐さん。 特別な日に食べるものではなく、毎日当たり前に食べられてきたうどん。東村山のうどん文化を支える「きくや」。これからも、変わらずにそこにあり続けてほしい店だ。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2017年9月14日)のものです。