幼い頃からの夢と「好き」を形に

営業中に前を通りかかれば、たい焼きとコーヒーの香ばしさがあたりを支配する。その香りに誘われて、ついついドアを開ける人も少なくないだろう。

オーナーの古谷さんは小さい頃から外食産業に興味を持ち、学生時代には、当時流行ったドラマに影響を受けてレストランでアルバイト。帝国ホテルに当時あったカフェで働いていたこともあり、働きながら自分だったらこんな店にしたいとイメージを膨らませていったという

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幼いころからの夢へ一直線かと思いきや、ここから古谷さんの人生は全く別の方向へ。友人のアドバイスもあって短期間で開業資金を稼げるからと就職したのは大手運送会社。3年でお金を貯めて店を出そうと思っていたが、やってみたら面白くなって16年も続けてしまったんだとか。

そして、満を持して2017年3月にオープンしたのが「OHANA COFFEE(オハナコーヒー)」。OHANAとはハワイ語で家族や仲間を意味する言葉だ。

開業前「たい焼き店は路面で焼いているところが見えないと成功しない」と言われたが、「こうじゃないとダメだ」と言っていたらいつまでたっても同じような業態しかできてこない。そう感じて店内で焼き上げるスタイルで店を立ち上げたという。

ユニークな組み合わせのその訳は?

それにしても「たい焼き」と「コーヒー」と「ハワイ」。その組み合わせはすぐにはピンとこないほどユニークだ。

「シェフを雇って人に任せるより、自分でできることをやりたくて。単純に好きなものを集めたらこうなったんです」と笑う古谷さん。

古谷さんは趣味でたい焼きを食べ歩き「調べて分かる範囲ではほとんど食べ尽くしたんじゃないかな」というほどの"たい焼きマニア"。そしてコーヒーも好きでカフェを飲み歩き、朝は目覚めのコーヒーが欠かせない。そしてサーフィンが好きでハワイも大好きなのだとか。

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古谷さん曰く、たい焼きにはたくさんの魅力が詰まっているという。

「まずは『めでたい』食べ物だというのが面白い。それに顔や形、厚みも店によって全く違う。もちろん、あんこの味も店によって違うし、ひとつとして同じものがないんです。マニア心をくすぐりますよね」。

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実はマニアの中にはたい焼きの「魚拓」を取る人がいるんだとか!楽しそうにその魅力を語る古谷さんの"たい焼き愛"に触れると、何気なく食べていた「たい焼き」が、がぜん魅力的な食べ物に変わってきた。

手間暇をたっぷりかけた香ばしいたい焼き

OHANAではあんこも自家製。北海道から直送される上質な小豆を使い、通常のあんこよりもやや塩が多めで、さっぱりとした味わいに仕上げている。古谷家では、こどものころからお母さんがあんこを手作りしていたそうで、レシピや塩加減などを習い、その味を再現しているという。

お母さんが作るあんこは昔ながらの味わいで、古谷さんが初めて麻布十番の浪花家総本家(日本三大たい焼きの一つ)のたい焼きを食べた時「あれ?うちのあんこと一緒じゃん!」と感じたという。
「そのせいか、親世代の人たちから『そうそうこの味!』と懐かしんでもらえることが多いですね」。

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焼き方は一丁焼きと言われるスタイル。一枚の鉄板で一気に複数のたい焼きを焼くのを「養殖もの」と呼ぶのに対し、一本一本の型でひとつずつ焼き上げる一丁焼きは「天然もの」と呼ぶそうだ。

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香ばしく焼きあがったたい焼きを試食させていただいたが、確かに控えめな甘さの中にほんのりと塩気が効いて、キリッとシャープな味わいがした。たい焼きを一尾たいらげたあとに、もうひとつの看板メニュー「あんバタートースト」も試食。普通ならちょっと飽きてしまいそうだが、さっぱりとした甘みのせいか、一気に食べられてしまった。

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たい焼きのお供には自家焙煎コーヒーを

OHANAのもうひとつの大事な要素はコーヒー。豆はすべて店内で手回しの焙煎機で丁寧に焼き上げている。抽出ももちろんハンドドリップ。これだけ手をかけて、丁寧に1杯を淹れてもストレートコーヒーはレギュラーサイズ300円から、「本日のコーヒー」はレギュラーサイズ220円と、驚くほどに良心的な価格設定だ。

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人生を楽しむってこういうことだ!

自家製あんこに、自家焙煎コーヒー。夏にはかき氷の販売もあるがこれも手回し。

「気がついたら全部"面倒くさい"。とことん非効率なんですよ」と笑う古谷さんは実に楽しそう。
時代に逆行しているというが、丁寧に手をかけて作り出されるものの良さは、訪れる人々に確実に届いているはずだ。

友人たちに手伝ってもらって店の内装を作り上げるときから、楽しくて仕方がなく「今、人生を楽しんでるな。人生を楽しむってこういうことか!」と感じていたという。その気持ちは今も変わらず、自宅から店まで歩いて10分ほどの道のりさえ楽しくて「なんか楽しくて道端の花とか撮っちゃうんですよ、笑」。

「たい焼き」+「自家焙煎珈琲」+「ハワイ」...イコールHAPPY。

オーナー自らがその店を心から愛し、その場所で過ごすときを楽しんでいる。その気持ちは訪れる人をも間違いなく幸せにしてくれるだろう。

※価格はすべて税込
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