独学で始めたパン作り

店主の市川忍さんは名古屋出身。大学進学にあわせて上京し、さまざまな飲食関係の仕事で経験を重ねてきた。
「食にはずっと関心を持ち続けていて、食べ物に関わる仕事をしたいと思っていました」
そこで市川さんはおやつにも食事にもなり、日常的に食べるパンを作ろうと思ったという。飲食業の仕事は長かったものの、パン作りの経験は一切なし。市川さんはそこから独学でパン作りをはじめたそうだ。「イチから作りたかったという気持ちが強かったですね」というが、酵母も種を起こすところから始めたというから驚きだ。

df528ca691c129bc6d547e170978cf10.jpg

食べておいしいこと、カラダが喜ぶパンであること

「カラダ よろこぶ たべもの つくる」
このキーワードを大切に市川さんはパン作りを続けている。そのために、素材も厳選したもののみを使用。小麦粉は北海道産を中心とした国内産で、牛乳は兵庫県氷上産の低温殺菌牛乳、砂糖は北海道産のてんさい糖などを使っている。野菜は地元・所沢を中心に収穫したてのものを仕入れているという。

0dd3468831fba110deef9cba409c7e36.jpg

店名のとおり、すべてのパンが100%自家製酵母で作られている。発酵の時間はかかるが、それだけ生地の旨味も増すのだという。現在は自家製の甘酒をベースに、埼玉県内の酒造場採取の酵母を自家培養して使っているそうだ。

そして、この店に欠かせないもののひとつが、店名にもある"あんこ"だ。
「パン屋にあんぱんは欠かせないですよね」という市川さん。名古屋出身だからだろうか、あんこ愛を人一倍感じた。

bfbcc3e36fcbd766d75e41c4ccf04ac9.jpg

あんぱんは「つぶあんぱん」(140円)、「こしあんぱん」(150円)、黒ごま、季節のものなど4種ほどがそろう。どのあんぱんにも固定のファンがいるそうだ。

使用するのは北海道産の小豆。お店で炊いたあんこはふっくら柔らかく、上品な甘さが舌に残る。少し加えているという天日塩がアクセントになり、味に奥行きを出しているのだろう。
パン屋は数あるけれど、小豆を店舗で炊いているのはごくわずかだ。ひとつひとつのパンを丁寧に作っていることがよく伝わってくる。

5a6352647a387b0eab941ce45e44ba4f.jpg

よつ葉のクリームチーズと合わせた「あんことクリームチーズ」(210円)。ほかにもバターと合わせた「あんバター」も人気だ。

また行きたい、と思ってもらえるように

店舗をまだ構えていなかったとき、リアカーにパンを乗せて、移動しながらパンを販売していたという市川さん。

9688e21bf5c7d08aaacd24df0f75f678.jpg

現在の店内にはカフェも併設されており、ゆっくり焼き立てパンを味わうこともできる。ランチタイムは平日でもすぐに満席。そしてどの席にも笑顔が溢れていた。まるでここに来たくて仕方がなかった、というような。

これからのお店については、「素材があるからパンが作れる。素材の作り手さんに感謝しながら、食べ手であるお客さまとつなぐ店でありたい」と話してくれた。
オープンして約3年半。「いちあん」はすでに所沢の人たちにとってなくてはならない存在なのだろう。そしてこれからもそうあり続けてほしいと思った。

939f3e1d27ce717d74ea682c16f50b74.jpg

あんこが生地にぐるりと巻かれた「あんこ巻食ぱん」(200円)や「山食ぱん」など食パンも4~5種類が並ぶ。

※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。詳しくは、ホームページをご確認ください。
※写真は取材時(2018年6月19日)に撮影したものです。