バンコクの屋台からヒントを得た「タイ串焼き」の専門店
一見するとエスニック系の雑貨屋のような外観。店に足を踏み入れた途端にツンと鼻孔をつく香辛料の香りが、ミニマムな店の造りと相まって本場タイの屋台に訪れたかのような感覚に浸ることができる。
11年前にオープンしたという「タイ風立呑 福道」は、その名の通り本場のタイ料理を提供する立ち飲みスタイルの居酒屋だ。おいしい料理とお酒が低価格で味わえると好評で、この練馬店の他に桜台、江古田、大山にも店舗展開している。
タイの風土にすっかり魅了されて年に何度も訪れているという店主の岡沼誠さんは、2018年のタイ訪問でヒントを得て、2019年11月に練馬店を大きくリニューアルした。これまでは、ほかのタイ料理店と同様にガパオライスやトムヤンクン、パッタイなどを提供していたが、思い切って"タイ串焼き"専門店としてメニューを一新したそうだ。店のメニューを総入れ替えするとなると少なからずリスクを伴うが、そこに迷いは一切なかったという。「バンコクのサイアム・スクエアという繁華街に100軒くらいの屋台が連なる通称"屋台通り"があるんです。そこではどの店も串焼きを提供していて、それを見て"これだ!"と確信したんですよ」。串刺しにされた食材をその場で焼いてもらい、食べ歩きするスタイルがタイでは定着している。その様子を見て、立ち飲みという店のスタイルにマッチするのでは、と考えた。「それから毎日屋台に通って、使っている香辛料やタレの作り方など、1から教えてもらいました。日本に同じものはないという自信があります」と、満足げに語ってくれた。実際にリニューアル以降、口コミで評判が広がり新規客が増えているそうだ。
6種類のオリジナルソースで作りだす本場の味
串焼きに使われるタレは6種類で、具材によって味付けが変えられている。「それぞれの具材に合った味付けにしています。タイの香辛料専門店で教えてもらったレシピで、スーパーには置いていないような珍しい香辛料を使っているので、日本でほかにこの味を出している店はないんじゃないかな。正真正銘、本場の味です」と、岡沼さん。
実際に食べてみると、確かに日本人好みにアレンジされたタイ料理とはまったく違った味わいだ。串1本の単価が安いわりに、お腹にたまるのも嬉しい。また、客が自ら冷蔵庫から具材を取り出してキッチンで焼いてもらうという形にしたことで、店の回転が速くなり、効率化という面でも功を奏する結果となったそうだ。
タクシー運転手から一念発起、タイ風居酒屋の経営へ
今から10年以上前、岡沼さんはタクシー運転手だった。「たまたまこの付近でお客さんを降ろしたことがあって、その時にこの場所を見つけたんです。改修中でブルーシートが掛かっていたんですけど、インスピレーションで "ここで店がやりたい"と思ったんですよね」。すぐに管理業者に連絡したところ空きテナントだということが分かり、そのまま店の改装に着手、開業へと踏み切った。偶然が重なって導かれるように店を始めたというのだから、不思議な話だ。
「昔から暖かい国が好きで、アジア圏はほとんど旅行しました。タイにもよく行っていて、それでタイ風居酒屋が良いかな、と。周りにタイ人の友人が多かったので料理の面ではまったく困らなかったですね」と岡沼さん。直感を信じて"これだ!"と思ったら迷わず舵を切る。そんな行動派の店主から人生を学ぶ週末の夜も良いかもしれない。
※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※新型コロナウイルス感染防止対策により、営業時間が変更になる場合があります。