マニアックなインド野菜やハーブも農園から直送!
インド国旗が飾られた入口から店内へ入ろうとして、ふと横を見ると大きなヘチマのような野菜が目に入る。「これは......?」と思って見ていると、店主のチャミさんが「これはインドのカボチャ」と教えてくれた。日本のカボチャほど甘くないけれど、お芋のようにホクホクしていてカレーによく合うのだとか。
さらにドアの脇には1メートルはあろうかという細長いウリがぶら下がっている。チャミさんいわく、これも南インドのケララ地方ではよく食べられる野菜で、ヘビウリと言うそう。
日本では入手困難なインド野菜に迎えられ、なんだかインド気分が高まってきたところで店内へ。
煌びやかな装飾が施された店内は、窓から入る自然光で明るいせいもあるが、色彩がとにかくカラフル。カウンターに鎮座するガネーシャ神をはじめとして、いたるところに国旗や仏像やお花や野菜がぶら下がっていて、料理を待つ間に眺めながらワクワクしてしまう。
よく見ると、店の奥にある棚にはさまざまな種類の豆やスパイスなどが詰め込まれている。聞くと、インドや日本各地からわざわざ取り寄せている食材も多いのだとか。
店先に置かれていたインドカボチャやヘビウリなど、日本ではあまり見かけないインド野菜たちは、自家栽培しているものや、契約している農園から直接運ばれてくるもの。季節によって内容は違うが、多いときは1日に20kgも入荷するそうだ。なかには「ドラムスティック」といった極めてめずらしい野菜などもあり、このお店でしか味わえないメニューが多いのにもうなずける。
南インドの定食「ミールス」とこだわりの「ビリヤーニ」を
おすすめは南インドのケララ地方を代表する味を一皿に詰め込んだ「ミールス」。
マメ科の植物タマリンドとトマトで酸味をつけたサッパリスープの「ラッサム」、お豆でとろみをつけたポタージュ状の「サンバル」など、4種類のカレーがセットになった定食のようなもので、ヨーグルトやココナツのデザートも付いてくる。
取材日は、「ラッサム」と「サンバル」、青バナナとヨーグルト、生ココナッツを炒め煮にした「アヴィヤル」、みどり豆と野菜の「ポリヤル」の4種の野菜カレーに、アチャールと呼ばれる漬物のようなものが2種類付いた「ケララ ミールス ベジ」(1,700円)をオーダー。
お米は南インドのソナマスリライスで、一粒一粒がパラパラとしながら、ふんわりとエアリーに炊き上がっている。あっさりとしたご飯の上へパパダムという豆の粉で作ったおせんべいをパリパリと砕いて振りかけたら、お好みの配合でカレーを混ぜていただく。
すっぱ辛いラッサム、すっぱくてコクのあるサンバル、ココナッツ風味の青バナナのカレーなどをご飯に混ぜながら口に運ぶたびに、新たな味や食感がどんどん現れる。黒砂糖が入った甘いアチャール「インジプリ」や自家製ヨーグルトを混ぜると、甘みやスッキリした酸味がプラスされて、さらに変化が生まれる。野菜たっぷりでヘルシーかつボリューム満点の人気メニューだ。
もうひとつおすすめなのが、インド風の炊き込みご飯「ビリヤーニ」だ。
ビリヤーニと言うとマトンが定番だが、こちらではエビやカニを盛り込んだ、写真の「シーフード ビリヤーニ」(1,600円)が人気。海に面したケララ州では魚のビリヤーニもよく食べるそうで、「フィッシュ ビリヤーニ」(1,500円)には気仙沼から生のサメを仕入れて使っているとか。
炊きあがった米をスパイスと炒める炒飯風のものが多い中、ケララバワンのビリヤーニはきちんと炊き込んでいるのが特徴。香りや味が濃く、パラパラとした食感のバスマティ米をスパイスで炊き込む、手の込んだ逸品だ。
ガネーシャ神の隣には週替わりのスペシャルメニューが。
体に優しいカレーを練馬の住宅街で
南インドのケララ州出身のチャミさんがこの地に「ケララバワン」を開店したのは、今から14年前。来日以来、25年間ずっと練馬区民だというチャミさんは「自宅から近いから」という理由でこちらに店を開いたそう。練馬区役所にも近いこの場所は、周辺にお勤めの方や近所にお住まいの方も多く、11時の開店前から行列ができる日もあるほどの人気店となった。
見事なエアブレンドで熱々のチャイをサーブしてくれる、店主のチャミさん。
実はチャミさん、こちらにお店を開く前にも都心でインド料理店を営んでいたことがある。当時、日本におけるインド料理と言えば、バターチキンやキーマなどのこってりとした北インド系カレーとナンの組み合わせが一般的。南インド料理が食べられるお店は少なく、パラパラのご飯と一緒にいただく豆や野菜のさっぱりとしたカレーは、それほどメジャーではなかった。都心のお店は閉めてしまったが、故郷ケララ州の味を日本で提供したいという熱い想いは冷めなかったそう。
南インドは日本と同じくお米が主食。乳製品や油脂を多用せずさっぱりしているし、お野菜がたっぷり入っている。毎日食べても食べ飽きない、胃にやさしいカレーが多い。「これなら日本人の口にも合うはず」と地元・練馬の地に「ケララバワン」をオープンし、再スタートを切ったのだ。
ケララ州でよく食べられているインド野菜やカレーリーフなどを試行錯誤して日本で栽培したり、ケララ赤米などを現地から取り寄せたり。南インド料理のおいしさや魅力を伝えようと努力を重ねた結果、お客さまが集まるようになったのだとか。
現在でもナンやこってりしたカレーもメニューには載せているが、半分以上のお客さまは南インド料理を注文するそう。
「こってりした味の濃いカレーはおいしいけど、もたれちゃって毎日は食べられないでしょ。このカレーなら、毎日食べても大丈夫!」とチャミさんが太鼓判を押す「ケララバワン」のヘルシーなカレー。
練馬周辺にお住まいの方はもちろん、カレー好きなら遠方からでもわざわざ食べに訪れる価値ありのお店だ。
※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2018年9月28日)のものです。