小さな店内は、まるでパンの宝石箱

打ちっぱなしのコンクリートがスタイリッシュな外観に、明るい光が差し込む南西向きの入口。パン屋さんを目指して歩いていても、地図で確認しながらでないと、見落としそうな店構えだ。

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店の中は大人2、3人が横並びで立つといっぱいになってしまう小さな空間。だがそこに並んだカラフルで個性的なパンの数々と香りに気持ちが高まり、さっそく目移りしてしまう。日に50種類も並ぶという。

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食パンなどの食事パンのほか、「ウインナーパン(190円)」などの惣菜パン、「ブルーベリーデニッシュ(230円)」や「こしあんぱん(180円)」などスイーツ系パンも充実している。

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なかでも「ランチサービス」は、名前のとおりランチタイムの大人気商品。ボリューム感たっぷりで目、舌、胃袋、ぜんぶを満たしてくれる欲張りな一品だ。

基本に忠実に、パンの味わいを大切に

寡黙なオーナー・杉山さんは、あまりご自身のことについて語りたがらない。「街のパン屋なので、あまり押しつけがましくない感じでやっている」。パンについても同様。こだわりは何かと問えば、こんな回答が。

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「こだわり、って言葉を使っちゃうと......。材料の小麦粉や塩などは、変わってしまうこともある。作り方も至ってふつうです。主婦が使うような手に入りやすい材料で、余計なものはいれずにつくっています」。

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「ふつう」という言葉を使う杉山さんだが、メディアでも取り上げられ、評判を聞きつけてわざわざ遠方からくるお客さまも多い。家庭でつくるパンと材料が同じなら、どこで差が出るのだろうか。杉山さんは続ける。

「きちんとやるということですね。きっちり発酵時間を守って、基本通りにつくる。それでぜんぜん、味も変わってきます」。

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天然酵母のパンは、発酵に12時間。夕方に仕込んで、オーバーナイトで翌朝3時には製造に取りかかれるようにする。どのパン屋でもやっていることを、当たり前に。しかしその当たり前ができるからこそ、味わいが生まれる。創業の2010年から数え、11年目に突入した店のオーナーとして、大きな説得力のある言葉だ。

7種類の食パンと、プレゼントにしたい箱型のクリームパン

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人気の食パンは、ゴマ入り、生クリーム入りなど、ぜんぶで7種類もある。常連のお客さまのなかには、買うパンの種類や、何枚切りかまで決まっている人も多いそう。特に「はちみつ食パン」は、初めてくるお客さんにもたびたび注目される商品。生地の中にはちみつが練り込まれているので、焼いた後にジャムなど何もつけなくても、ほんのり甘い。

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また、冷製パンコーナーの「くりーむぱん」が目を引く。取材に訪れた日は、定番のカスタードが入った「くりーむぱん(170円)」が並んでいた。食パンと同じように型に入れてキューブ状に焼き上げたあと、中をくりぬいて具を詰めたもの。カットした耳をフタとしてかぶせ、リボンで結んでいる。

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こうした商品を喜ぶこどもを連れたお客さまが多い上、また近所には病院があり、お年寄りの方も多いそう。

「今後は、健康にいいパンも作りたいですね。弱っている人でも食べられて、ちゃんとおいしいもの。塩分を減らしたり、材料を抜くとどうしても味わいが変わってしまうので、試行錯誤中です」。

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自分から多くを語らなくても、店に並ぶパンを口にすれば、お客さまが自然と語りたくなる。それこそが「街のパン屋」の本当の魅力なのかもしれない。この店の近所に暮らす人々が、なんだかとてもうらやましい。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2017年1月10日)になります。