料理店で修業した多彩な店主が目指したパンの道
「今日はお休みなの?」「あれ、久しぶりですね。元気にしていましたか?」
出窓からお客さまの顔を覗いては声をかける、「Be Pan」の店主・阿部知夫さんと奥さまの晶子さん。2013年12月のオープン当初は誰も知り合いがいなかったが、今では阿部夫妻に話しにくる人が後を絶たない。しかもみんな笑顔だ。
「僕たち、ふたりとも話をするのが大好きなんです」と笑顔で話すのは店主の阿部知夫さんだ。
フランス料理店や大手ベーカリーなどを経て、都内のイタリア料理店で修業を重ねていたという阿部さん。大好きだったイタリア人シェフからイタリアのパンの作り方を学び、パンを作る楽しさにはまっていったという。
その後、代官山「シェ・リュイ」や「サンジェルマン」、「ドゥ マゴ パリ」で腕をさらに磨いた後、縁があり奄美大島へ。新しくオープンするペンションで島の食材を使い、宿泊者へ食事を作っていたという。手作りパンも焼いて一緒に出していた。
「ここで店づくりのノウハウを得ることができました」と阿部さん。
お客さまと直接話をしながら売りたい
奄美大島から東京に戻り、さっそく物件を探した。このころにはパン屋をやりたいという気持ちは定まっていたという。友人から声をかけてもらい、今の場所に出会った。
店の坪数はわずか3坪。6畳ほどの小さなスペースだ。
店内には小さな作業台とパンを焼くオーブンが一台のみ。朝早くから阿部さんひとりで生地を練り、オープン時間を目指しフル回転で焼き続ける。販売は奥さまの晶子さんが担当。白い出窓に立ち、お客さまと話しながら対面販売を行う。
「今の時代は人と人とのつながりが薄くなっている。だから作り手である僕が、買ってくださるお客さまと直接話をしながら売りたいんです」と阿部さん。過去に勤めたベーカリーでは厨房に入ったままで、お客さまと話すことはなかった。
「この店を始めて、お客さまから『おいしかったよ!』と直接言ってもらえるのが嬉しくて。一番の原動力になるんです」と話してくれた。
安心、安全なパンであることが大切
「Be Pan」のパン生地は無精製の塩や砂糖を使用。ショートニングを使わずバターを100%使用し、無添加を心がけている。「お客さまに安心しておいしいものを食べてもらいたい」という阿部さんの気持ちがパンにも表れているのだ。
左上から時計回りに、ピーナッツクリームをサンドした「サンドP」(180円)、「かぼちゃあんぱん」(190円)、バターロール生地に蒸したじゃがいもを入れた「じゃがバター」(190円)、ベーコンとマヨネーズを入れて卵をのせた「ベーコンエッグ」(190円)、「トマト&ベーコン」(240円)、近所のお肉屋さん「近江屋精肉店」の揚げたてコロッケを挟んだ「コロッケパン」(220円) 、煮リンゴとバター、そしてシナモンシュガーをブリオッシュにのせた「オガサワラ」(230円)。
お店一番人気の「サンドP」(180円)はローストした粗挽きのピーナッツとピーナッツバターを甘みを抑えた生地でサンドしたもの。食感とピーナッツクリームの濃厚な味わいがクセになる。
「メロンパン」(190円)はクッキー生地にバニラビーンズを贅沢に入れて香りよく焼き上げている。
「もう少しお店を大きくすることができたら、カウンターを作ってその場で食べられるイートインスペースを設けたいですね」(阿部さん)。
奥さまの晶子さんは東京製菓学校出身。今は手狭だからできないが、広くなったら晶子さんの作ったケーキやデニッシュも並べたいという。
店はわずか3坪だが、この場所には笑顔が満ちている。これから先もずっと笑顔が絶えない場所でありますように。
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