イーストを一切使わず、天然酵母のみで作るパン
お店の名前の通り、この店のこだわりは天然酵母。イーストは一切使用しない。
「生地だけでもおいしいパンをめざしました」。そう言って、イーストや天然酵母のこと、使っている材料のこと、パンや食に対する考え方などを熱く語ってくれたのは、店主の大波宏安さん。
「天然酵母がおいしいのは、発酵してアミノ酸を生成するからなんですよ。そこから『では、人間の舌がアミノ酸をおいしいと感じるのはなんでだろう?』と考えていったら、解剖学まで突き詰めることになってしまうんですよね。パン作りは科学なんですよ」。
ふわふわの食感を出すための添加物は使わない。砂糖や油は必要な分だけを使う。仕込みに使うのは、放射性物質を除去できるという浄水器を使った超軟水。イーストのようには膨らまないため、形を一定にするのは難しい。それでも、きれいに作るより、おいしくするために技と力を注ぐ。オオナミのパンは、どこまでも実直なパンだ。
分かる人には分かる「違い」。食べて納得してもらいたい
大波さんが食や生活にこだわるようになったのは、自身の健康上の理由から。睡眠時間をちゃんと確保して、体にいいものをしっかり食べる。そういった日々の生活を大切にすることの大事さを知った。お店に来るお客さまとも、食のこと、人生のことを、カウンター越しによく話すのだとか。ただパンが好きだからというだけではなく、健全な暮らしを求めている人にオオナミのパンを届けたいという。
取材中、3歳くらいのお子さま連れのお客さまが来店した。その子がベビーカーに乗っているころから通ってくれているそう。
「うちのパンを食べてると、他の店のパンは食べなくなっちゃうそうなんです。お子さんは味覚が敏感だから」。
パンの入った袋を手に提げて、スキップしながら店を出ていく男の子を見送りながら、大波さんも嬉しそうだ。
日々研究し、日々進化するパン作り
毎日気温や湿度との戦いで、毎日が研究の繰り返しだという。「パンはもっともっとおいしくなると思っています。そのためには一日一日、続けていくほかに近道はありません」。パンについて話し始めると止まらない大波さんだが、お客さまには余計なことを説明するよりも、食べて納得してもらいたいという気持ちが強い。「私が伝えたい食の大事さを、すべての人に理解してもらうのは難しいかもしれない。それでも、安易なやり方でごまかさずに、自分なりに王道を進みたいと思うんです」。
オオナミの天然酵母パンは、そんな人柄を表しているかのように、じわじわ、味わい深い。
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