シンプルで奥深い"タルト"を極めたくて

店内に入ると、ショーケースには小ぶりで可愛らしいタルトが並ぶ。「川越タルト」のオープンは2014年。川越市出身のオーナー・稲垣庸平さんが「川越の手みやげの定番になる洋菓子店をつくりたい」と独学で立ち上げた。

では、なぜタルトの専門店を?「一番魅力を感じたのは、シンプルでごまかしが効かないところです。商品をタルトに集中して、とことん極めたいと思いました」と稲垣さん。

もうひとつの理由は、「同じ形でシンプルだからこそ、中身のバリエーションは無限大なところ」だと言う。「巷で売られているパイ生地タルトといえば、シンプルなエッグタルトが基本ですよね。でも、もっといろいろな味があるといいなって。王道を追求しながら、意外性をもったタルトを生み出す楽しみもあるなって」。

そうしてレシピ開発に取り組んだ稲垣さん。看板のエッグタルトに使うパイ生地は、粉やバターを数グラム単位で作り比べ、一度に何種類も食べ比べた。「川越名物の食材といえばサツマイモ。よし、とびきりうまいサツマイモタルトもつくるぞ」。新しいタルトの考案も試行錯誤を重ねた。

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王道のエッグタルトや、川越ならではのさつまいもタルト

「川越タルト」のラインナップは定番4種類、季節限定1種類、そして「素材と製法、すべてにこだわり抜いた看板商品」と胸を張る「プレミアムエッグタルト」(270円)。プレミアムに使用する卵は川越産の高級卵、井上養鶏場の「スーパーエッグ」。その卵黄のみと生クリームでつくる。味わいはリッチで濃厚なのに、口どけは軽やか。サクサクの自家製パイ生地とのバランスも絶妙だ。

稲垣さんは言う。「エッグタルトの味はね、やはり卵です」。このスーパーエッグは生で食べても臭みがないので、よけいな香料がいらない。卵黄そのものの美味しさが口中に広がり、豊かなコクの余韻が残る。こりゃすごい。さらにもう一個!と手が伸びてしまう。

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定番4種類の中で1、2の人気を誇る「さつまいもタルト」(230円)。川越ならではのサツマイモスイーツとして観光客に人気だが、地元のお客さまにもファンが多い。ピューレ状にしたサツマイモと生クリームでつくるフィリングは、さしずめ上等なスイートポテトのよう。中にあんこが忍ばせてあり、和洋それぞれの味わいが調和している。

どのタルトも味の狙いどころは"冷やしたときに一番おいしい"こと。甘さのバランスや口どけ感も、ひんやり状態でベストになるように計算されている。持ち歩き時間は常温で9時間OKなので、お土産として気軽に買って帰れるのもありがたい。

タルトを通して、川越の魅力を発信したい

「川越タルト」に訪れたら、ぜひコーヒーにも注目してほしい。こだわったのはタルトとコーヒーのペアリング。たとえばエッグタルトには、苦味がほのかに香るマイルド系のコーヒーを、酸味のあるチーズタルトには、すだちのように爽やかな酸味の効いたコーヒーを......と、それぞれのタルトに合わせてブレンドしたコーヒーを紹介している。一緒にいただけば、おいしさも楽しみも倍増しそうだ。

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オープンから5年。「川越で洋菓子といえばココ!」と言われるほど「川越タルト」の人気と知名度は定着した。当然出店依頼も多く、ユネスコ無形文化遺産に登録された「川越まつり」には毎年出店。地方の催事やお祭りなどにも、川越銘菓の店として積極的に参加している

「うちのタルトを通して、川越をPRしていけたらうれしい」と稲垣さん。川越の観光客数は年々増え続けており、年間700万人を超える。古き良き小江戸文化と、「川越タルト」のような新しい風。川越を愛する人たちによって、街の魅力も訪れるたびに増していく。

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