暮らしの息遣いを宿した空間が作り出す心地よさ

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「Ke-yaki Kitchen(ケーヤキキッチン)」は、住宅地にすうっと馴染む佇まいの一軒家カフェ。ハンドメイドの看板が愛らしい。玄関を開けると広い土間があり、その先に目をやると、かつてそこで暮らしていた人の息遣いさえ感じられそうな空間だ。

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築90〜100年ほどという古民家は初めて訪れるのにどこか懐かしく、独特な居心地のよさが漂う。渋みのあるケヤキ材の梁や天井も、古民家ならではの雰囲気を醸している。

暮らしを支え続けた「家」が受けた新しい使命

オーナーは、狭山市に工房「ケー焼陶芸」を構える作家ケーネン・ジェームスさんと、その奥さまの美穂さん。ジェームスさんはドイツ系アメリカ人で、父と祖父はデリカテッセンを経営していたこともあり、料理はお手のものだ。工房では料理をふるまうイベントも行われ、3年前からは地元で週1カフェも運営。「料理をふるまい、パンを焼き、作品にも触れてもらえる」総合的なスペースを求め、出会ったのがこの古民家だったという。 この家が持つ雰囲気はもちろん、入間市駅周辺に漂う穏やかな空気感も気に入って、2017年5月にカフェをオープンした。

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「古民家カフェというと素敵な内装にリノベーションしているお店が多いけれど、うちは全然手を入れていなくて。ちょっと恥ずかしいくらい」とはにかむように笑う美穂さん。 しかしコンセプチュアルに作り込まれていないからこそ、自然体で居心地の良い「家」を感じる。そう感想を伝えると、
「それを感じてもらえたら嬉しいです。夫もいつも"ファミリー"を意識していて、ホームパーティなどにも使っていただいているんですよ」。

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店内にはジェームスさんの作品が置かれ、作家さんのためのスペースも。また、店奥にはピアノが鎮座し、コンサートも開かれる。アートや音楽を好む人たちが集うサロンのような雰囲気。住まいとしての役目を終えた古民家は、人々が集まる素敵な空間に生まれ変わったようだ。

芸術家だからこそのこだわりメニュー

自家製ケーキは、アメリカンスイーツのイメージよりも甘さ控えめでナチュラルな味わいだ。合わせるのはジェームスさんこだわりの、コクがある深煎りコーヒー。
「芸術家気質のせいか、食に対しても本当にこだわりが強くて。これと決めたらぶれない、ずれない。良くも悪くも、なんですけどね(笑)」と美穂さん。

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本日のケーキとドリンクのスイーツセット(800円)。手にフィットするカップと素朴な角皿はジェームスさんの作品だ。

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天然酵母を使って焼き上げるパンも販売している。メニューには自家製パンのサンドイッチも。

作品を身近に感じるギャラリーとして

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店内のあちこちにさりげなく置かれたジェームスさんの作品はどれも素朴で温かい。「飾るだけではなく、使ってもらうのが一番の喜び」という思いは、手にした時のフィット感が物語っている。

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また、「作家さんを応援したい」と設けられたレンタルスペースは一週間単位でレンタル可能だ。

カフェとして、コンサートやギャラリー、ワークショップの場として、きっとこれからも多くの人々がこの"家"に集うことだろう。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2018年4月26日)のものです。