鰻屋の面影が残る店構え。夏はかき氷、冬はおしるこ
「畑屋」の始まりは明治時代。かつて割烹料理店として親しまれたこのお店は、現店主の父親の代には鰻専門店となり、2022年まで営業していました。
店内に足を踏み入れると、落ち着いた風格と歴史を感じさせつつもどこか温かみのある雰囲気が漂っています。
「2022年に父親が亡くなってからは店を閉めていたんです。私はこの店を継がなかったので、調理経験もなく、会社員として働いていました。でも、ずっと閉めっぱなしにしておくのもな、と思いまして。週末だけでもお店を開きたいと思い、自分にできることを考えて、かき氷にたどり着きました」
そう話すのは、現店主の横川一郎さんです。横川さんはそれまで飲食業の経験がなかったため、2年前に飲食店に転職。並行していろいろなお店のかき氷を食べ歩き、かき氷づくりの研究を重ねました。そんな横川さんの尽力によって、2024年4月にかき氷屋として再オープンした「畑屋」。横川さんのお母さまである美智子さんとともに、5月から9月の間はかき氷、10月から4月の間はおしるこをメインに提供しています。
秩父の氷×狭山茶のシロップを楽しむ
かき氷に使用しているのは秩父産の氷。奥秩父連峰の雪解け水を源とする天然水を使用し、伝統的な製氷技術で作られた純氷を、ふわふわに削っています。
狭山茶を使った5種類のメニューの中から、まずは「たてる抹茶の氷」(1,600円)を注文。最初に運ばれてきたのは、抹茶とお茶碗、そして茶せんです。
こちらのメニューは抹茶を自分で点てて、かき氷にかけていただくのだそう。今回は特別に、美智子さんに点てていただきました。
たっぷりの粒あんと白玉、柚子皮がトッピングされたかき氷に、先ほど点てた抹茶をかけていくと、色鮮やかなグリーンに。濃厚でコクのある狭山茶の香りを存分に楽しめる、抹茶好きにはたまらない一品です。
続いていただくのは「白いかき氷」(1,300円)。名前の通り真っ白なかき氷に、煎茶、ほうじ茶、紅茶の3種類の狭山茶シロップがセットになっています。
ちなみに、かき氷を注文すると小皿に盛られたお新香が付いてきます。どうしてお新香が? と思っていると、「鰻屋のときから作っていたぬか漬けなんです」と美智子さん。かき氷の器にも割烹料理店時代の盃が使われているなど、「畑屋」の歴史を随所に感じられました。
かき氷の上に盛り付けられているのはヨーグルトのエスプーマ。埼玉県入間郡毛呂山町産の柚子が爽やかに香ります。
さっぱりとしたエスプーマとふわふわの氷は、狭山茶の風味豊かなシロップと相性抜群。氷の中央部分には豆かんと粒あん、黒みつ、ミルクシロップが入っているので、食べ進めるのが楽しくなります。
「夏前のこの時期は、山帰りの方やご家族連れの方、お友達同士で来られる方が多いです。店内でひと休みしたりおしゃべりをしたりして、楽しく過ごされているのを見ると嬉しいですね」と美智子さん。
最後に、横川さんに今後の展望を伺いました。
「飯能エリアの飲食店がそれぞれのかき氷を提供して、飯能=かき氷のまちにできたら面白いですね。あとは、大正時代に増築したお座敷が奥にあるのですが、ここ20年くらい使っていなくて。設備を整えて、お座敷にもお客さまを通せるときが来たらいいなと思っています」
長年親しまれてきた「畑屋」の歴史に、新たな挑戦が加わったかき氷店。これからますます注目を集めていきそうです。暑い季節にはおいしいかき氷を食べに、寒い冬には体が温まるおしるこを食べに、飯能を訪れてみてください。
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