独学でラーメン店を開業し14年。飲食一筋、愛嬌たっぷりの店主

uma_02.jpg

静かに流れる玉川上水沿いに店を構える「UMA TSUKEMEN」は、トレーラーハウスを改装した高床式の店舗です。店内は厨房と対面するカウンター席のみというコンパクトな造り。床から天井まで伸びた大きな窓があるおかげで、窮屈さを感じさせません。

uma_03.jpg

uma_04.jpg

店を切り盛りするのは茨城県出身の皆川富士雄さん。パン工場を経営する親のもとに生まれ、自身は高校卒業と同時に調理師専門学校へと進学。その後はホテルやレストラン、うどん店など数々の飲食業界を渡り歩き、2009年にラーメン店を開業しました。

それまで縁のなかったラーメンで独立した理由を皆川さんはこう語ります。「ホテル時代によくラーメンを一緒に食べ歩いてた先輩が『スープが1種類あれば、タレやトッピングで味のバリエーションを無限に作れちゃうのがラーメンの良いところ。いくつもスープを用意しなきゃいけない洋食とは違った良さがある』と言っていたんです」。食品ロス問題の観点から見ても、個人でやるなら洋食店よりもロスが少ないラーメン店の方が賢明。そんな発想からラーメン店の開業を決めたそう。

uma_05.jpg

店名の「UMA」は、未確認生物の"UMA"と「うまい」のダブルミーニング。「うちの極UMAつけめんはよそにないスタイルでしょう? ラーメン業界で未確認生物的な存在って意味を持たせたかったんだよね」。ちなみに店名の「UMA」は「ユーエムエー」と読み、メニュー名では「ウマ」と読みます。

海老つけめんはポットパイ型のつけ汁が話題。店主自慢の味がそろい踏み!

uma_07.jpg

皆川さんと楽しく話しているうちに生地が焼き上がり、「極UMA 海老つけめん」(1,150円)が完成。薄く伸ばした生地を器にかぶせ、小エビとチーズを乗せてオーブンで焼き上げる独特なポットパイ型のつけ汁が最大の特徴です。
丸々と膨らんだつけ汁に艶のある太麺、トッピングは別皿。見ただけでワクワクしてくるビジュアルです。箸でパイ生地に穴を開けようとしているこちらを見て、「割ったら生地をつけ汁に入れないでね~」と皆川さん。

uma_09+.jpg

カウンターの上にある食べ方POPにも「生地はスープの中に入れない」の一文が。「生地がスープを吸っちゃったらつけ麺が食べられなくなっちゃうから、初めてのお客さまには説明するようにしているんです」。

uma_08.jpg

茶褐色のつけ汁を麺に絡め、まずはひと口。トロミの効いた豚骨スープにはやや甘味があり、麺をすすった直後からエビの上品な香りが広がります。スープ素材に使用する大山どりのガラと国産豚のゲンコツは念入りに下処理をして、臭みのないまろやかな味わいに仕上げています。

uma_10.jpg

「これも私の自信作。よかったら食べて」と続いて登場したのは「鯛らぁめん」(900円)。鯛のアラをじっくり煮込み、旨味と香りを閉じ込めた淡麗スープ仕立てです。つるんとすすり心地の良いストレート麺や柚子を聞かせた自家製の鯛ワンタンなど、ひとつひとつの具材にも手間暇かけているのがうかがえます。

uma_11.jpg

「牛乳みそ らぁめん」(880円)は生乳廃棄問題を解決したいとの思いから生まれたメニュー。「試しに作ってみたら牛乳と味噌が思いのほか相性良くてね」と、牛乳に合わせ味噌を溶かしたシンプルなスープに、つけ麺用の太麺を組み合わせています。牛脂で炒めた野菜に加え、バター、肉味噌といった味変トッピングが添えられています。1杯に牛乳が300ccほど使われていて、とてもクリーミーで濃厚な口当たりの一杯です。

仕込みはすべて自分でやる。おいしさのために手間を惜しまない

店で使う麺はすべて自家製にこだわる皆川さん。3種の小麦をブレンドし、さらに全粒粉を混ぜ込んだ生地でつけ麺用の太麺を打っています。「全粒粉を12%ほど配合しています。麺の表面がゴツゴツ荒くなるので、そこにつけ汁がうまく乗ってくれるんです」。鯛らぁめんに用いるストレート麺はしなやかな麺肌と、もっちり豊かな食感が特徴。

uma_12.jpg

製麺やスープの仕込みはすべて皆川さんの仕事です。63歳になった現在でも、夜の閉店後から翌日分の仕込みに取り掛かり、ときには3時、4時までかかることもあるとか。

uma_13.jpg

「毎日同じリズムで動いてきたからでしょうね。ちょっと腰が痛いなっていう日でも、動いているうちに調子良くなってくるんです(笑)」。新しいメニューが増えれば仕事量も増えることになりますが、本人はケロッとした顔でこう答えます。

長年、飲食業界に身を置いてきた皆川さんのモットーは、"おいしい料理を提供するためならどれだけ手間をかけたって惜しくはない"。「店をやれるのもあと10年くらいかなぁ。大変なことも多いけど、やっぱりお客さまに『うまい!』って言ってもらえるものを作りたいよね」。妥協のない手仕事から生まれる一杯を目当てに、今日もファンたちがこのトレーラーハウスにやって来ます。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格などが変更になる場合がございます。