小平名物として知られる「糧うどん」

「糧(かて)」とは茹で野菜のことで、この野菜を添えた「糧うどん」は小平で昔から食べられてきた郷土食。小平は水に乏しく稲作に適した土地ではなかったため、小麦などの穀類の栽培がさかんだった。

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「うどん弥 根古坂」の裏手には畑が広がっている。
このお店では、できるだけ地元で採れたキャベツとニンジンを糧にしている。そのほかに小鉢として、取材当日はきんぴらごぼう、ほうれん草のおひたしがついてきた。糧はつゆのなかに入れて食べるのだそうだ。

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糧うどん(600円)。上にのっているうどんの「みみ」は手打ちの証拠。

キャベツの甘みがつゆの辛味を和らげ、ニンジンのシャキシャキ感がアクセントになり、やわらかいうどんと合わせて食べると食感が楽しい。もちろん、食べ方が決まっているわけではないので、箸休めとして食べてもいい。

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つゆに糧を入れて食べる。普通盛は300グラム、小盛200グラム(100円引き)、大盛500グラム(200円増し)。

うどんをよく見るとほんのり色がついているのは、小麦粉のほかにふすま(小麦表皮と胚芽部分)も使っているため。小麦の風味が強く、タンパク質が多く含まれている。小平産の地粉を使用し、手打ち麺に甘めの濃いつゆがよくからむ。

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肉汁糧うどんを頼めば、つゆのなかに豚肉やネギも入るので、栄養バランスもばっちり。

カリカリ香ばしい「たらしもち」は必食!

うどんと一緒に頼む人が多いという「たらしもち」(300円)をいただいた。小平産の地粉とふすまを水でといたものを焼いただけというシンプルな一品。ふすまが入っているため、小麦の香ばしい風味も感じる。外側はパリっと、中はふんわり。上には砂糖醤油がかかっており、甘辛いたれが食欲をそそる。うどんの小盛と一緒に注文する人が多いのだそう。

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店主の小野さんによれば、「たらしもち」または「やきもち」と呼ばれ、昔からおやつとして小平で親しまれてきたものだそう。山梨では「うすやき」と呼ばれ、小麦の栽培がさかんな地域では昔から食べられていたという。

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「そば粉を使えばガレット、うどん粉を使えばたらしもち。昔から地元では食べられてきたものだけど、今つくる人はなかなかいないね。つくり方はすごく簡単だから、こどもでもホットプレートを使って焼けるし、具を入ればお好み焼きになる。カレー粉をちょっと入れて焼くのもおすすめだよ」と小野さん。

小平では、うどんはごちそうだった

小野さんは、栄養専門学校や専修学校高等過程の副校長を務め、定年退職。うどん打ちが趣味だったが、今から6年前、自宅の和室を改装してうどん屋を開いた。そのため、厨房の窓からは自宅の庭がよく見える。庭は一般客にも解放しており、BBQも可。待ち時間にはこどもの遊び場になっている。

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年に数回、定休日の木曜日を使って近所の小学校へ出向き、うどん打ちを教えているという小野さん。こどもたちだけでなく保護者にもうどん打ちを教えて、昔のように家でうどんをつくれるようにしたいと考えている。

「いずれは、小平のすべての小学校で教えたいね。もともと、この地域では、うどんは家でつくるのが当たり前だったし、うどんの味は家の数だけあるもの。小麦粉と塩と水。それだけでうどんができるんだから。おつゆもつくれたらいいけれど、まずは市販のものでも十分。いずれは、おつゆも教えてあげたいね」

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小平では人が集まると、宴会の〆には必ずうどんを食べるという。昔から変わらない食文化がこの地には根づいている。
「みんなが集まった時は決まってうどん。昔からそう。僕はね、糧うどんしか知らないんですよ。それを食べて育ってきたもんだから。昔から、うどんはごちそう。糧うどんをみんなにも食べてもらいたいね」

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地域の人たちに昔から愛されてきた糧うどん。ぜひ小平でたらしもちとともに味わってみてほしい。

※価格はすべて税込
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※写真、記事内容は取材時(2017年3月24日)のものです。
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