先代から受け継ぐ、低温長時間発酵で旨味たっぷりの食事パン
もともとは別のパン屋で働いていた富山さん。先代が開業した数年後に「モルゲンベカライ」の話題を聞きつけ、弟子入りを志願した。実際に海を渡り、現地・スイスで学んだ先代は、スイスの伝統的なパン製法を用いて店を開いた先駆け的存在だったそう。
店の看板メニューである食パンは3種類。生地に生クリームが練り込まれた「プルマンソフト」(1斤310円)、低温長時間発酵により旨味を高めた角食パン「プルマンハード」(1斤310円)、山型の「イギリスパン」(1斤310円)がある。
毎日80種類ほどのパンが並ぶ店内。新作も随時考案中!
低温で長時間発酵させるといっても、どれくらいの時間発酵させるのだろう。
「パンの種類によって異なります。24時間で完了するものもあれば、72時間かかるパンもあります」と富山さん。
種類豊富な食事パンには、「サンドイッチ向き」、「レバーペーストがよく合う」など、ポップで特徴が紹介されている。食事パンの文化を伝えていくことも、お店の目標なのだろう。なかには曜日・時間限定で味わえるパンも。取材に訪れた金曜日の午後には、「パン ド ロデブ」(440円、ハーフサイズ220円)が焼きあがっていた。
水分が多いため、もちもちした食感が特徴だ。トレイに入れると三分の二ほどを占拠してしまうほどの存在感! ハーフサイズもあるが、買った後にレジでスライスしてもらうことも可能だ。
また、牛乳・卵・バターがたっぷり入ったソフトパン「ツオップ」もスイスの代表的なパン。やはりサイズは大きめだ。
「大きいパンは、大きいまま焼かなければいけません。小さく作ると柔らかさがなくなり、食感が変わってしまいます。内側と外側の兼ね合いが大切です」と富山店長。 「ツオップ(大)」(270円)など、少しアレンジを加えて販売されている商品もあるので、同一の生地で食感がどれほど変わるのか、食べ比べてみるのも良いだろう。
店に並ぶのはスイスのパンだけでない。定番のパンのほか、店長の創意工夫が凝らされた新作も含めると、1日につくられるパンは約80種類にもなる。
店に訪れた日にも、新作メニューが2種類登場していた。「オメガ参」は、美容と健康に効果があるとされるオメガ3が豊富に含まれるアマニやカシューナッツ、くるみを生地に練り込んだパン。食べるだけで健康になれそうだ。フランスパンの一種である「リュスティック」も、チーズ入りで香ばしい。
根菜がたっぷり入っていておかずにもなりそうな「ゴボウと蓮根のキッシュ」は、秋・冬の限定商品。同じく季節限定の「黒ゴマとサツマイモのベーグル」には、中身だけでなく生地自体にもサツマイモのペーストが練り込まれていて、ダブルで甘みが堪能できる。
メニューの豊富さはもちろん、手ごろな価格もお店の特徴。富山店長は言う。
「値段はあまり高くしたくないですね。お子さまも買っていかれるので、みんなに食べてもらいたいです」
取材中、店に訪れた親子が、「まだ残ってた。よかったね!」と嬉しそうに「動物パン」を買っていったのが印象的だった。 富山店長が先代から技術を受け継いだように、毎日訪れるお客さんの間でも、親から子へと「モルゲンベカライ」への愛着がおいしい記憶とともに受け継がれていくのだろう。
※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2016年11月11日)のものです。