広々とした店内に並ぶバラエティ豊かなパンの数々

個人経営のベーカリーとしてはかなり広い店内。白い壁からところどころレンガが見え隠れする、どこか懐かしさを感じるような内装が印象的だ。バリアフリーで陳列棚やテーブルはゆったりと配置されているので、ベビーカーや小さなお子さん連れでも安心。ゆっくりとパン選びができるのが嬉しい。

棚にはバゲットや食パン、惣菜系にスイーツ系がバランス良く並び、それぞれのPOPには手描きの商品説明が添えられている。どの商品も大きめでボリューム満点。特に惣菜系は食べ応えがあってコストパフォーマンスも抜群だ。「最近は少し傾向が変わってきたんですが、以前は男性のお客さまがとても多くて」という店主・荒川さんの言葉にも納得してしまう。

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一番人気はシンプルなフランスパン

ジャンルのバランスがとても良い印象だが、お店としてはどのジャンルが得意なのだろうか。尋ねてみると一番のオススメは「熟成フランスパン」。少量のイーストを使って低温度でゆっくりと発酵。仕込みから焼き上がりまでおよそ18時間かけて、小麦の香りと旨みをしっかりと引き出した自慢の一品なのだそう。以前は3種類のフランスパンを作っていたそうだが、この熟成フランスパンの人気が高かったため、今ではこの1本に絞って販売するようになったんだとか。そんなエピソードからも、ファンからの支持の高さがうかがい知れる。

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もう一品はネーミングがなんともロマンチックな「万華鏡ブレッド」。こちらは数種類のドライフルーツが散りばめられた食パン。彩り豊かな切り口が確かに万華鏡を思わせる。複数のドライフルーツを使ったパンというと、どちらかというと酵母の酸味が効いたハード系のイメージがあるが、こちらはしっとりと柔らかい食パンベース。ちょっと珍しい気がすると伝えると「ほかの人と同じことをするのが嫌いなんですよ」と応えてくれた。

荒川さんがこの店を立ち上げたのは10年ほど前。自分の店を持つまでに、リゾート系ホテルでフランスパンや食パンなどの製造をしながら、パン作りの基礎を一から学んだ。その経験が今に活かされ、フランスパンなどのシンプルなパンの人気が生まれたのだろう。

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こだわり過ぎないことがこだわり。その心は?

シンプルなパンこそ、小麦粉の持つ風味や香りを感じられる。フランスパンやブレッドがオススメの人気商品と聞けば、さぞや良い粉を使っているのかと思いきや「小麦粉は特別なものを使ってはいないんです」という意外な言葉。
粉のブランドにこだわらず一般的な小麦粉を使い、いかに小麦の魅力を最大限に引き出すか。それがarcのこだわりだ。
「あくまでもお客さまに食べてもらうことが大切。こだわり過ぎて自分を出し過ぎることのないよう心がけています」と荒川さん。店内に並ぶパンのバランスの良さは、そんな荒川さんのスタイルから生まれていたようだ。

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驚いたことに実は荒川さん自身は小麦粉アレルギーなのだとか。毎月新作を3〜4種類開発しているものの、自分自身での試食はどうしても限られてしまう。そのため、パートさんや常連のお客さまに試作を食べてもらって感想を聞き、改良を加えることも多いという。パン職人という職業柄、小麦粉アレルギーは辛く、大変なことも多いことは想像に難くない。だからこそ、お客さまからの視点を意識し、自然と意見に耳を傾ける。arcの目線は常にお客さまに向いていく。本来ならハンデになってしまいかねないことが、この店の最大の魅力にもなっているのはなんとも不思議な気がしてならない。

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ディズニーランドのようなワクワクするパン屋を目指して

荒川さんは自身で店を立ち上げる時、ディズニーランドのようなワクワク感を提供できるパン屋さんを目指したそうだ。その想いは言葉だけではない。店内の内装は実は実際にディズニーランドの施工に携わった職人さんの手によるもの。ネットで調べ、依頼したのだというから、想いは本物だ。「職人さんの自由な発想で」とオーダーした壁には隠しアイテムがあったり、じっと見ていると動物に見えるところがあったり。荒川さんの狙い通り、遊び心あふれる内装となった。

レジの横に目を向けると「ロシアンルーレットパン」という気になる写真が目に入る。一口大のパンの中にクリームやあんこ、カレーなどが入っている。その中にひとつわさびなどの激辛パンを入れてパーティで楽しむことができるという荒川さんが考案したユニークな商品だ。もちろん、こども会などでは激辛パンではなくひとつだけチョコにしてもOK。中身は自由に変えられる(要予約)。

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小平の保育園にもパンを納入しているarc。動物やキャラクターを模したパンをオーダーされることもあるという。「動物など顔を象ったり、描いたりするパンは通常のパンより工程が増えるんです。150個の顔を描きながら、最後の方にはもう手が震えてしまうほどで大変!」そういいながらもどこかうれしそう。「だけど全部焼き上げて棚に並べた時には壮観で。森かなんかに紛れ込んじゃったみたいな感じでしたよ」。
パンを通してワクワクする気持ちを届けたい。開店当初から変わらない想いがarcのこれまでの10年を支え、この先のさらなる10年も支えてゆくのだろう。

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