大正3年創業。製造所を兼ねた川沿いの店舗

街路樹が立ち並ぶ神田川沿いに店を構える「寒天工房 讃岐屋」。白い壁と白いのれん、そして明るい木目調の壁というシンプルな外装は、洗練されたイメージとともに、新宿区内のお店とは思えないのどかな佇まいです。

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遊歩道に面して設けられた縁側では、神田川を眺めながらテイクアウトメニューをいただくことができます。天気の良い日や桜が咲く時期はとくに人気なのだそう。
「川沿いに縁側があって、そこであんみつを食べられたらいいね、という話になり、今の店構えになりました」と教えてくれたのは、スタッフの田中孝明さんです。

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店内に入ると、お持ち帰り用のあんみつやところてん、わらび餅などが並ぶショーケースが。右手奥には喫茶室もあります。

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「かつては、寒天の製造と卸しが中心の製造所だったんですよ」と田中さん。卸し専門だった他の寒天屋さんが一般向けに販売を始めたことから、時代の流れに合わせて一般向けの商品販売や喫茶室を始めたそう。今もお店の奥は製造所になっています。
店名の「讃岐」は、先々代の店主が香川県出身であることが由来。創業は大正3年。100年以上、こだわりの寒天を一途につくり続けています。

歯ごたえのある寒天を、シンプルなあんみつで味わう

「寒天工房 讃岐屋」の寒天は、熟練職人が自社工場内で手作りしています。歯ごたえのある食感と、寒天の素となる天草(テングサ)という海藻の香りの強さが特徴です。
「通常、寒天は天草を高熱で煮出して作りますが、うちでは圧力釜で煮出します。圧力をかけて火を通すと、特にできたてはコリコリとした歯ごたえのある食感になるんです」と田中さん。できたての寒天をいただけるのは、製造所が併設されているこのお店ならではです。「ちなみに、1日おくとムチっとした食感に変化します」とのこと。

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そんな寒天のおいしさを味わってもらうため、あんみつ(650円)のつくりはとてもシンプル。寒天、求肥餅、赤えんどう豆、餡、黒蜜が基本で、追加でトッピングをすることも可能です。

「はじめはぜひ、黒蜜をかけずに寒天だけを食べてみてください」と教えていただき、そのまま寒天を口に入れると、天草本来のよい香りが鼻に抜けます。
「天草には風味が強いものや凝固しやすいものなど、さまざま種類があるんです。香りが残るように、5種類くらいを混ぜ合わせた"讃岐屋ブレンド"を仕入れています」と田中さん。

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このあんみつに欠かせないのが、赤えんどう豆です。ほくほくとした食感で塩気がきいており、甘い黒蜜と合わせて食べると良いアクセントになります。

また、あんみつにはさくらんぼやミカンなどのフルーツが乗っているイメージがありますが、「讃岐屋」ではあえてフルーツを乗せないのがこだわりです。「フレッシュな酸味の強いフルーツは寒天に合わない」からだそう。そのため、フルーツで唯一トッピングが可能なあんずは、シロップ漬けで甘くしているとのこと。

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季節ごとに餡の味を変えた期間限定のあんみつも人気です。取材に伺った11月には「焼栗餡あんみつ」(730円)が販売されていました。「焼栗」という名の通り、栗の香ばしい香りとまろやかな甘みのある餡で、黒蜜や寒天とよく合います。「冬になるとリンゴ、春になるといちご、そしてあんずや抹茶など、だいたい3カ月ごとに餡の味を変えています」とのこと。

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写真の左に映るのは、工場長さんです。工場長さん含め中で製造しているスタッフの方々も、「ゆっくりしていってください」と私たち取材班に和やかに声をかけてくださいました。お店全体に温かいおもてなしの雰囲気があります。

シンプルな素材でごまかしがきかない味を100年以上も守り、現代に伝える「寒天工房 讃岐屋」。下落合を訪れた際や神田川沿いをお散歩する際には、ぜひ歴史ある寒天を味わいに立ち寄ってみてください。

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